野鳥の記事を書くためには,どうしても野鳥の写真が必要である。しかし,他人からもらった写真を使うのは,あまりにもトラブルが多い。出版社のようにお金を払って版権を入手すれば問題はないのだろうが,多様性プロジェクトは支払うお金がない(年間予算はゼロ円)。
図1.大型の淡水魚を左足につかみ,枯れ枝にとまるミサゴ。淡水魚の体長は,25cmぐらい。平成27年11月3日岡山にて。撮影場所は,百間川で間違いないと思う。撮影:近澤峰男。
となると,どなたかのご厚意におすがりするしかないが,世の中そう甘くない。過去に嫌なトラブルがたくさん起きた。そこに近澤峰男さんが降ってわいたように登場し,私たちが大変困っている状況を一気に打開してくださった。ご自分が撮影された数多くの野鳥の写真を,自由に使え!そして私たちの研究・教育活動を存分に展開してみよ!との神(ツルではないかも・・・)の一言で,多くの困難な問題が一気に解決に向かった。権利帰属を付して画像(写真)を自由に使用できることは,野生動物の研究・教育に大きなメリットがある。
さて,最初はミサゴ。左足でエサ(淡水魚)を捕まえている。ヒトで言う大腿部(ふともも)は翼に隠れて見えていない。白く見えるのは,下腿部(ふくらはぎ)と足の部分だろう。下腿部と足,どちらにしても‘ごっつい’感じである(図1)。
図2.エサをつかんでいるミサゴの拡大画像。左手に捕まえているのは大型のアユだろう。これ以上拡大すると,アユの画像はさすがにボケてくる。この程度が限界である。
ミサゴに捕まっている淡水魚は大型で,体長は25cmぐらいあるだろう。カワムツはこんなに大きくなる個体(オス)はいないだろう。オイカワも,こんなに大きい個体は見たことがない。しかも,カワムツだったら,繁殖期でなくとも体表や腹びれは,もう少しカラフルになるように思われる。なかなか該当する淡水魚に思い当たる種類がなかったが,けさ記事を書き始めてからアユのような気がしてきた。その気持ちは益々強くなっている(図2)。
撮影場所は,百間川で間違いないだろう。水産関係の部署にお勤めの方から,秋になって川を下り,海に出る前にミサゴに捕まることは十分にありうるとのご返事をいただいた。アユは最大で体長30cmに達する個体もいるらしい。余計なことだが,枯れ木はアカマツ,奥はアラカシである。枯れ木の先端近くには,アカゲラかオオアカゲラの古い巣が見える。
こんな情報が漁業協同組合に流れたら,カワウみたいに鉄砲で撃たれやしないかと心配して,同じく水産関係の部署に尋ねてみた。まずそんなことはないだろう,という御返事をいただいた。カワウやイノシシなど,いくら有害鳥や有害獣であっても,殺されるところを見るのはいい気持ちはしない。ミサゴの食べているエサを公開したのがもとで,ミサゴが県の有害鳥に指定されるようなことがあれば,鉄砲打ちが,人家の近くでやたらに大きな鳥を打ちまくる,という事態になる可能性がある。私は鉄砲打ちが大嫌いである。だからと言って,岡山県によって私も有害獣に指定され,駆除対象とされるのは御免である。
次は,ビンズイ(図3)。ミサゴよりも足の部分が相対的に長くなっている。足(ふしょ骨)の部分は細く,かつすごく長い。野鳥の足の部分は,ヒトで言えばかかとに対応するようである。一方,鳥がつかまっている枝はキリ。樹皮には小突起がたくさんあるが,棘はない。
図3.ビンズイ。平成24年(2012)11月11日。止まっている木はキリ。これはわかりやすい。葉っぱが残っていなければ,樹皮だけでは種類を同定するのは難しい。撮影場所不明。撮影者:近澤峰男。
Wikipediaによれば,ビンズイの学名はAnthus hodgsoni,スズメ目セキレイ科に分類される。キヒバリ(木雲雀)の和名も。英名はOlive-backed pipit。繁殖期は,昆虫類やクモ類を食べており,非繁殖期(多分秋から冬)は植物の種子などを食べる。摂食は地上で行われる。
次はメボソムシクイ(図4)。ウグイスにちょっと感じの似た野鳥である。ムシクイと言うからには,普段昆虫を食べているのだろう。つかまっている木の枝は,落葉樹であることは間違いないが,枝の感じは何度も見ていると思うが,どうしても思い出せない。写真の上部にある1枚の葉っぱがこちらを向いていれば,ある程度分かるかと思う。
図4.メボソムシクイ。ちくさ高原キャンプ場。平成26年(2014)11月4日。撮影:近澤峰男。
間違えたら申し訳ないが,ビンズイにしてもメボソムシクイにしても,大腿部(ふともも)は翼に隠れて見えないだけでなく,下腿部(ふくらはぎ)も腹部の羽毛から末端が少々見えるだけかもしれない。となると,写真に見えている部分は,ヒトでいう‘かかと’から足指に対応するように思える。つまり,哺乳類の足で言えば,土踏まずの部分には踵骨(しゅこつ)と足根骨(‘あしねこつ’と読むのか不明)がある。鳥類では,どちらかが伸長し,足根中足骨(跗蹠骨(ふしゃくこつと読む?))に変化しているのかもしれない。
ほ乳類では,足根骨と呼ばれる骨があり,鳥では足根中足骨と呼ぶ骨がある。両者はよく似た呼び名である。とすると,鳥でよく目立つ足根中足骨(図3と図4)は,哺乳類における足根骨と相同かもしれない。私は脊椎動物の体の構造について勉強してこなかった。脊椎動物の形態学に関する専門家のご意見をお聞きしながら,近いうちにこの問題を解決したい。
脊椎動物の足を構成するそれぞれの骨は,哺乳類と鳥類で相同である。つまり,ほとんど(全部?)の骨は対応がつく。しかし,哺乳類の後ろ足の構造(大腿部,下腿部,足)と鳥類の足の構造は,特にそれぞれの骨の長さや太さの比率(ratio)が大きく違っているようである。ヒトと鳥の共通の祖先(ハ虫類で間違いないと思う)が中生代のジュラ紀に分かれてから2億年ぐらいは経っているだろう。相同器官(homological organ)とはいえ,それだけ年数が経過すれば,形態は互いに大きく異なるのだろう。しかし,形態の変化,機能の進化についてはダーウィンの自然選択説だけでは説明がつかないように思われる。
図5.ハナニガナの茎にとまるベニマシコ。腹部の羽毛や翼の色が,背景の秋の色とよくマッチして,晩秋の雰囲気を醸し出している。平成24年(2012)11月21日,兵庫県立フラワー公園にて。撮影者:近澤峰男。
あまり長い記事と多くの写真を入れると,ファイルサイズが大きくなりすぎて(10メガバイト)送れないところが出てくる。今回は小さめのサイズに抑えて,残りは次の回にまわそう。それでは,今回はこの辺で。
<参考文献>
- コルバート,E.H. 1978 (田隅本生 訳)脊椎動物の進化(下巻),築地書館.