令和3年(2021)8月27日(金)
美誠ちゃん, いま渡りの最中と思う。
総合情報センター速報No. 48で,中山良二さん宅で保護していたブッポウソウの幼鳥(美誠ちゃん)が,脱走したことを報告した。中山さんは早速,あれは逃げたのではなく,自分が放鳥したのだと負け惜しみを言っていた。
美誠ちゃんは,しばらく中山さんの家の周囲にいたが,裏山の方に逃げたという。8月20日現在では,まだ中山さん宅の裏山の方で何匹か鳴き声がするとのことで,美誠ちゃんは,そのグループの中にいるだろうと,中山さんは話していた。
今日(8月26日)中山さんに電話をして様子を伺ったところ,もう鳴き声は全くしていないとのことだった。渡りのグループに入れてもらえたのだと思う。美誠ちゃんひとりでは,越冬地まで渡りをすることは無理である。渡りを経験した個体(必ずしも両親とは限らない)の先導が必要だ。中山さんの家の周囲では,いくつか渡りのグループができるだろうから,美誠ちゃんはそれらのどれかに入れてもらえた可能性が高いと思う。
7月中旬になると,時々「飛べないブッポウソウの幼鳥がいる。」との連絡を受ける。多くの個体は,ケガはしていない。その場で木の枝につかまらせ放鳥するのが,一番生存する可能性が高いと思う。繁殖地から遠く離れた保護施設に持って行って治療を受けても,放鳥された幼鳥が渡りのグループを見つけることはまず不可能だろう。
野鳥の会岡山県支部も,飛べない幼鳥がいるという連絡を受けた場合には,そのままにしておくのが良いと指導している。これは野鳥の会の先代の体験から生まれた,科学的根拠に基づく優れた行動指針である。ただ,野鳥の会の場合には,世代交代が進んだために,先代が獲得した知恵(行動指針)がうまく継承されていないように思われる。手を加えずにその場に放置しろと言うだけでは,何ともいい加減な団体ではないか,と勘ぐる人がいるだろう。
一方,美誠ちゃんのように傷病個体はそうはいかない。正常個体との見分けはなかなか難しいが,傷病が疑われたら,中山良二さんに電話して引き取りに来てもらうのはどうだろうか。中山さんのところで保護されていれば,美誠ちゃんのように,飛べるようになったときに,隙を見て簡単に脱走できる。中山さんは,ブッポウソウを犬や猫と同じような感覚で見ているので,逃げ出すのは容易である。(ただ,猫には注意。)
中山良二さんの家は,ブッポウソウの幼鳥にとっては,保護施設ではなく,巣箱そのものである。しかも,保護されている間はおいしい餌がたくさんもらえる。
あれ,中山さん捕獲許可は受けてるの?・・・ご心配なく。各方面のご協力により,私が捕獲許可を受けている。僭越な言い方にはなるが,私の(いわゆる専門家の)指導の下に中山さんの家で保護することは可能である。(こう書かないと,行政が大変心配する。)研究や教育の現場にいるとよくわかるが,「責任者の指導の下で」ということで許可が下りることは多い。その代わり何か問題が起きた場合には,責任者もその責任を負うことになる。
さて,中山さん宅を脱走した幼鳥は,猫に気を付けて.あとは家と近くの山を往復しながら,渡りを先導してくれる親を見つければよい。本当の親でなくてもいいのではないか。
<残る心配>
中山さんの直感によれば,美誠ちゃんはメスではなくオスらしいとのこと。私の勘では,2年後には,お嫁さんを連れて,中山さんの家のすぐ近くの電線と止まって「ケッ・ケッ」と短く鳴くと思う。こういう鳴き方は,自分はここにいるよという「いるぞコール」である。「ここにいるよ」コール,イコール「早く巣箱を用意してくれ」ということ。中山さんと奥さんは「いるぞコール」に敏感に反応することを,私はよく知っている。成熟して帰ってきた美誠ちゃんであることは,すぐに気が付くと思う。
中山さんご夫妻の住んでいる下土井には,中山さんのつけた巣箱がいくつかあり,毎年使われている。また,野鳥の会の巣箱も多く,ここもほとんど使われている。下土井から細田にかけては,巣箱確保の激戦区である。新規のペアが,空いている巣箱を見つけるのは相当難しい。
家の前の電線にとまって「いるぞコール」を発し続けても,無視しておけば,何日かすればいなくなる。しかし,美誠ちゃんと気づいた中山さんが,そのまま放っておくことは絶対にないと思う。頼まれれば絶対に嫌とは言わ(え)ないじいさんである。
さて中山さんどうするか,創意と工夫でこの難局を乗り切っていただきたい。
美誠ちゃんや,負けるな良二ここにあり
・・・なんて句を,スペースが余ったので入れてみた。ポジティブな目標は,どんなに年とっても持ち続けると,人生を楽しく過ごすことができる。