ブッポウソウ総合情報センター・ニュース 四季折々の自然の風景と野鳥 No. 5:野鳥の足

 Google Earthの利用規定によれば,画像(主に写真)は権利帰属を表示すれば,商業目的でなければ,自由に利用してよいとある。Google EarthやGoogle Mapで見られる航空写真は,多様性プロジェクトの研究と教育の実践に大きなメリットがある。ただ,「自由に」という点については,人によって考え方が異なる可能性が高い。少しずつジャブを出しながら,どの程度自由に利用できるか,世間の反応を見たい。

図1.木の枝(樹種不明)にとまるヒガラ。兵庫県立フラワーセンターにて。平成24年(2012)11月6日。撮影:近澤峰男。「足」と記した部分は,図2の「足根中足骨」(そっこん・ちゅうそっこつ)と「足指」に対応する。大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)に対応する部分は,羽毛に隠れて見えていない。

 図1には,近澤峰男さんが兵庫県立フラワーセンターで撮影したヒガラの写真を示した。近澤さんは,フラワーセンターで野鳥の観察の指導とか,野鳥の彫刻の展示などをしていた。非常勤研究員のような立場だったかもしれない。

 図1で注目すべきところは,「足」と示した部分である。私は今まで枝をつかんでいる足指のある所だけが,「足」だと思っていた。図1を見るとわかるように,私が「足」だと思っていた部分は,ヒトの「手のひら」によく似ている。ヒトの親指に対応する足指は,他の3つの足指と対になっている。つまり,反対方向を向いている。しかし,もっとよく見ると,ヒトの手のひらの部分はない感じがする。あるいは,ほとんど発達していないように見える。

図2.ドバトの左側の後ろ足の構造。足根中足骨(ふしゃくこつ)は,ヒトで言うカカトから足指までの部分に対応する。「日本動物解剖図説・ドバト」から描き直す。


<余談> 写真(図1)の上に記号や文字を入れることは,私には全く抵抗がない。むしろ,そういう落書きがある方が,写真を楽しくみることができる。権利帰属が明記されてもなお,転載されることに我慢ならない方は,例えば図1や図2のように,パワーポイントを使って単語や記号を入れ,図としてワード文書に貼り付けたらどうだろうか。転載する人の数は確実に減ること間違いなしである。野生動物の写真や風景の写真は,基本的には人に見てほしくて公開するのだと思う。しかし,公開すれば,当然盗まれるリスクは大きくなる。絵画や彫刻と違って,写真や図は自由に記号や文字を入れることができる。いたずら書きをしたからと言って,目的が明確ならば,ヒガラの美しさが損なわれる訳ではないだろう。


 さて,前回(No. 4)の記事には,ミサゴがアユをつかんで立ち枯れにとまる写真を掲載した。ミサゴの足は太い。最初に見たときに,野鳥の足はどんな構造になっているか気になった。一番の関心事は,ヒトで言う太もものの部分がどこにあるか,そして「足」はヒトの下腿部(ふくらはぎ)に対応しているか,という点であった。後ろ足の構造を説明する際に「ヒトのかかとの部分に対応する」と述べたが,不安になってもう一度文献を調べ直した。     

 図2に示すように,野鳥の足は,腹部に近い方から,「大腿部」(ふともも),「下腿部」(ふくらはぎ)と「足」の3つの要素で構成されている。ヒガラ(図1)の足と記した部分は,図2の足根中足骨(そっこんちゅうそっこつ)に対応する。つまり,野鳥の「足」の細長い骨は,ヒトの手で言えば,掌(てのひら)(足の方は,何というか知らない。「足のひら」とは言いそうにない。「土踏まず」でいいのか?)を構成するたくさんの小さな骨がなくなり,中央の骨が一本だけ大きく伸長して,脛骨と指骨をつないでいると考えることができる。

図3.シロネズミの左の後ろ足を構成する骨。「日本動物解剖図説・シロネズミ」から描き直す。

 図3には,ホ乳類であるシロネズミの後ろ足(左側)の構造を示している。ホ乳類では,足根骨と中足骨があり,踵骨(しゅこつ)を介して脛骨(ふくらはぎの骨)に接続している。なお,「踵」は訓読みではきびす。踵を返すとは,かかとを反対に向けること,つまり引き返すという意味になる。野鳥には踵骨はないと思う。

図4.イモリの右の後ろ足の構造。「日本動物解剖図説・イモリ」から描き直す。

 図4は,イモリの後ろ足(右側)の構造を示している。イモリの足は,8コから9コの足根骨と5コの中足骨,それに5本の足指骨で構成されている。後ろ足の骨構造は,四つ足動物の原型(オステオレピスのような魚類の「腹びれ」と共通点が多いこと)に近い感じがする。最初に陸上に出現した両生類はイクチオステガと言われているが,後ろ足の骨構造は,イモリのそれ(図4)に近いものだったかもしれない。ヒキガエルの足も調べてみたが,足根骨と中足骨が相当圧縮されて,ホ乳類(図3)とは大きく異なっている。ハ虫類が進化したのは,カエルの仲間からではないようだ。

 四足動物(両生類,ハ虫類,ホ乳類)は,足を地面につけて移動する。足には,動物の全体重がかかる。特にハ虫類やホ乳類では体が大きくなり,重たい体を陸上で支えなければならない。足の構造は,重たい体を支えられる構造になっている(図3)。一方,鳥類(Class Aves)は,空中を飛ぶために体を軽くしている。体の軽量化にともなって,足の骨(図2)も華奢(きゃしゃ)な構造に進化したのだと思われる。

<参考文献> 

  • 池田嘉平・稲葉明彦. 1971. 日本動物解剖図説,森北出版
  • Ferl, R.J., and R.A. Wallace. 1996. Biology: The Realm of Life. Harper Collins College Publishers.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です