ブッポウソウ総合情報センター速報(No. 48)

令和3年(2021)8月8日(日)

美誠ちゃん逃亡

中山良二さんがまたやってくれました。

7月28日(水)に吉備中央町「北」(地名)で保護されたブッポウソウの幼鳥が保護された。この幼鳥は,巣立ち後に何かにぶつかって落鳥したと思われる。翼に傷があり,足もかなり歪んでいた。結構車の通る路上で保護されたとのことで,私の想像では,車にはねられたのではないかと思われる。翼の傷が浅くて命拾いをしたと思う。親なら死んでいた。

幼鳥は傷病個体とみなされ,関連の各機関のご協力で捕獲許可をいただき,総合情報センターでずっと預かることにした。預かった幼鳥の名前は,美誠ちゃん。飼養の担当者は,中山良二さん。

美誠ちゃんは,順調に回復し,翼の傷も癒えて飛ぶことが可能になった。足の方も,最初は反対を向いていたのが,ちゃんと前を向いて,ちょっと危なっかしいものの止まり木につかまれるようになった。中山さんは大変喜んで,毎日昆虫を捕まえてきては鶏肉といっしょに美誠ちゃんに与えていた。

中山さんは,毎日外に出しては止まり木につかまらせようとしていたため,一度逃げたら2度とつかまらないよと,私は何度も申し上げた。

もう予想がつくだろう。不用意に飼育室のドアを開けたか,あるいは捕まえてエサをやろうとした隙に,美誠ちゃん,飛んで逃げました。エサを置いても,戻ってこなかったとメールに書いてありましたが,犬や猫とは違って,ブッポウソウはエサでつられることはなく,犬や猫の感覚でブッポウソウを飼育すると,元気になったらすぐに逃げてしまう。

これから美誠ちゃんがどうなるのかわからないが,いま巣立ったヒナを連れて親が渡り(migration)の準備に入ろうとしているところなので,巣立った場所(北)を覚えていれば,そっちに飛んで親に出会える可能性はあると思う。もし親に出会えなかったとしても,この時期ならば渡りの集団に入れてもらえる可能性は高いのではないだろうか。

いずれにしても,美誠ちゃんが中山さんのところに戻る可能性はゼロ。ただ,美誠ちゃんがオスだった場合には,2年後の初夏にメスといっしょに中山さんちに来て(インターフォンのボタンを押すかは知らないが)早く巣箱を準備しろとゲーゲー鳴く可能性は少しあるかもしれない。そのうちにお礼として,中山さんが天国に行ける翼を2つ持ってくるかもしれない。

実は,美誠ちゃんの逃亡は,私の方では十分予想していた。中山さんは,こうだと思うとそればかりに目が向いてしまう。「ぴよ吉」の時だって,巣箱の巣材はワラとかおがくずのように柔らかいものがいいと何度も言った。しかし,どこから聞きつけてきたのか,軽石がいいなどと言いだして,反対するのも聞かず,巣箱に入れてしまった。そのために,せっかく親が産んだ卵が,温め中に親の重みて割れてしまった。すぐにおがくずに変えて,残った一匹がぴよ吉である。

私は,美誠ちゃんは逃亡して大変良かったと思う。幼鳥の時は,親と比べて傷の修復能力は高そうだ。回復している最中に,隙を見て逃げ出せば,今の時期までだったら渡りに間に合う可能性がある。あと2週間あとだったら,来年の夏まで室内飼育が必要である。昆虫の捕り方も教えてやる必要がある。そういう個体は絶対に逃がすことはできない。(死んでも生きても,どこかで地元の人が見つけて連絡が入る。)

ブッポウソウ総合情報センターとしては,とにかくセンターに傷病個体をためないことである。野鳥の場合,親が傷ついた場合には回復が難しいことが多いが,幼鳥は回復しやすい。飛べるようになったら中山さんの目を盗んで逃亡,と言うことになれば,総合情報センターが面倒を見るブッポウソウは毎年ゼロという結果になる。安楽死なども考える必要はないだろう。理由は後に詳しく述べたい。

今年は,総合情報センターが確認した傷病個体はかなりあったが,親の場合には傷の修復能力が低く(免疫機能が弱いことではなさそう),治療の甲斐もなく皆死亡した。一方,ヒナの方は,傷の修復能力が高い。今年は保護したのは美誠ちゃん一匹のみ。美誠ちゃんが飛べるようになって中山邸から逃亡したため,今年(2021)の収容数はゼロとなった。私にとっては,実にハッピーな結果である。

きっと来年(2022)も同じことが起きるだろう。幼鳥であれば,私が飼育許可を受けて中山良二さんが飼育すればよい。元気になったら,隙を見てさっさと逃亡するに違いない。(ブッポウソウの方が中山さんより確実に1枚上手なので,こうなることは目に見えている。)中山さんは,幼鳥に逃げられたことをじいさん仲間に大いに自慢すればよい。地元の人たちも参加して失敗談に大いに盛り上がる。そんな自然保護もあってよいのではなかろうか。

人里に下りてきて,人懐っこさを存分に発揮し,人,特に前期高齢者や後期高齢者をうまく利用しているブッポウソウという野鳥は,幸せなのではないだろうか。先々のことをあまり心配したとしても,その通りになることは多くない。

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