ブッポウソウ総合情報センター速報(No. 47)

令和3年(2021)8月7日(土)

令和3年最後の一匹

8月6日(金)もよく晴れて,気温は最高レベルに達していた。8月上旬は,大気中に塵が少なく,空が澄んでいて美しい。カンカンに晴れて,ガンガンに暑い毎日でも,熱中症にかかる可能性がある反面,酷暑日がないと体の調子も悪くなる(図1)。ドイツにいたときには,いつ夏が来るだろうと思っているうちに,いつの間にか秋になってしまった。

8月6日は,H-39(豊野),E-17(大和),F-15(大和)そしてP-06(藤田)を見て回った。

・H-39 の巣箱は空。巣立ち完了。
・何とE-17も最後の助一が巣だって,巣箱は空になっていた。子育ての途中でヒナにエサをやっても,親が巣箱を放棄することはないだろう。ただし,甘やかしすぎるのは危険。
・F-05では,近くで鶏の鳴き声がしたので,それをまねて「コケコッコー」と大声を出しながら巣箱に近づいた。カメラのスイッチを入れて上を振り向くと,4~5mのところを幼鳥が飛んでいた。近くの土手に着陸。巣立ち終了。私の巣立ちコールに驚いて,慌てて巣箱を飛び出したのだろう。すぐに親が飛んできて激しい威かく攻撃を受けた。
・最後にP-06。ここは親が電柱の上にとまってあたりを警戒していた。兄弟3匹のうちすでに2匹は巣立っている。残るは一匹だけ。親は近くにいて巣立ちコールを発している。

図1.ガンガンに暑い里山の夏。8月に入って
少しずつ雲が増えてきている。8月6日豊野。
図2.小型カメラ(CASIO Exilim)で見ただけでは,生きているか死んでいるかよくわからない個体。しかも動きがない。実際の映像は,もっとずっと暗いが,明るさを調節したこの画像でも,生きているのか,死んだのか判別するのは難しい。8月5日藤田(P-06)。

前日の8月5日(木)にP-06の巣箱をのぞくと,何やら黒い物体が下の方にある。動きもなく,死んでいるようにも見えた(図2)。まあ,下から見ていてもこれ以上わかることはない。ガンガンの暑さの中,電柱に登り巣箱のふたを開けてみた。

図3.巣箱の中にいるブッポウソウのヒナ。立とうとせず,
ぼてっと居座った感じがする。
図4.巣箱の外に出された幼鳥。大きな口を開けているが,声は出していなかったように思う。突然つかまれ,外に出されてびっくりしているのだろう。右に見える針金は,巣箱のふたを開けるときにぶら下がった。
図5.体にどこも異常はなさそうである。むしろ,私の手(親指)のしわの方が気になる。最近ソフトボールを握った写真を撮ったときに,えっ,俺の手はこんなにしわだらけかと,あらためてびっくりさせられたことがある。とにかく,とにかく,ブッサン元気だ,ホイ。

巣箱の中には,何となく体が弱々しく,まだ巣立っていないブッポウソウのヒナがいた(図3)。体のどこかに異常があるのかと思い,巣箱の外に出して調べてみたが,特にこれと言った異常は見られなかった(図4と図5)。弱々しく見えた(図3)のは,思い過ごしであった。

図6.巣箱に返されたヒナ。万が一を考えて,鶏肉を口の中に突っ込んでおいた。巣箱の中に霧吹きをしたので,羽の表面に水滴がついている。

近くには巣立ちコールを発している親がいるので,ヒナをつかんで巣箱の外に出したときに(図4と図5)ポイっと手放せば,巣立は成功するだろう。

しかし,ヒナはもう一度巣箱に戻された(図6))。

私が手を貸してしまうと,ヒナはだんだんそれに慣れて,親が巣立ちコールを出しても,なかなか外に出ようとしなくなることが予想される。そんな野鳥だと自然の中で生きて行かなくなってしまうだろう。巣箱の中でふ化する3~5匹のヒナのうち,いつも最後の一匹が弱々しいこととは別な次元の話である。

本来は山にいるブッポウソウが,巣箱の中では安全で楽に子育てができることを知ってしまってから,10年もしないうちに,個体群の中に巣箱を利用して子育てをする性質が定着してしまった。巣箱がなければ,多大な犠牲を払って,また山に戻ってゆくのだろうが(巣箱の生活が定着したから,ブッポウソウはもう山に戻れないと言うのは,人間の勝手な思い込み),人間の方がそうさせまいと里山に巣箱をたくさん掛け始めた。
巣箱の方がずっと楽ができるのだから,ブッポウソウがその好意に甘えない訳がない。里山に巣箱がないとブッポウソウは来てくれない。自然保護という名目で巣箱を掛けるのは譲るとしても,人間の手が入りすぎて自堕落なブッポウソウを作りたくはない。いい場所が提供されている訳だから,あとは自分たちの力で子育てをやり遂げてほしい。人間の方だって体力に限界がありますぜ。

図6.次の日(8月6日)も元気がなさそうに見えるヒナ(P-06)。どうもこの感じに騙されてしまう。いくら弱々しく見えても,実際はすごく元気のことが多い。

ブッポウソウの依頼心は強く(だから,人間から見てかわいいこところがたくさんある。)ちょっと苦しそうだからといって手を貸してやると,すぐそれに慣れてくる。結果として,自分でやろうとしなくなる。だから,巣箱から出ない,あるいは出ようとしないブッポウソウを作ることは容易である。これは冗談ではなく,本当の話である。

しかし,そうやって人に頼りきってしまうブッポウソウは,悪く言えば,一種の寄生生物(parasite)になる。ブッポウソウは野生生物だから,自分たちの力で自然の中で生き抜いてゆかねばならない。私は,このところは譲れない。自分で頑張って外に出て,自分の力で生きて行け!・・・と言いたい。楽な方に流れてゆくと,新しいものを作ろうとするエネルギーが体の中からだんだん失せてゆく。苦しい道を大事にしたい。

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