令和3年(2021)6月23日
数ある巣箱の中で2つだけシジュウカラが子育てをしているところがある。
4月上旬から,雨の日を除きほぼ毎日ブッポウソウの巣箱を見て回る日が続いている。
4月は,巣箱の掃除が中心となる。巣箱の中は,すでにシジュウカラが巣作りをしていることが多く,場所によってはすでにヒナがふ化しているところがあった。5月になるとブッポウソウが巣箱に現れ,シジュウカラの巣は無残にもブッポウソウに踏み荒らされてゆく。
ブッポウソウが巣箱に入り込んでくると,シジュウカラはすぐ追い出される。巣材(コケと綿)は,踏み荒らされてバラバラになっているので,ブッポウソウが侵入したかすぐわかる。そういう巣箱には,巣箱の近くにはシジュウカラの姿は見当たらない。
シジュウカラが産卵していた場合には,ブッポウソウは容赦なく,シジュウカラの卵を割ったり,口にくわえて巣箱の外に捨てる。
では,シジュウカラのヒナがふ化していた場合はどうか?ブッポウソウはヒナをつついて殺し,外に捨てるか巣内に放置する。巣箱の掃除をしていた時にブッポウソウに襲撃された直後のシジュウカラの巣に遭遇したことがある。巣箱には5匹ほどのヒナが残っていて,そのうち3匹はブッポウソウにつつかれた後の傷があり,すでに死亡していた。残る2匹は,傷もなく生きていたので保護した。おそらくこの巣箱(B-09)では,襲撃の最中に,私が電柱を登り始めて,ブッポウソウが逃げたのであろう。
2匹のシジュウカラのヒナは,懸命に延命を試みたが,数日後には2匹とも死亡した。ふ化してから間もないヒナは,親の世話がないと生きるのは難しいようである。
今年(2021年)は,数ある多様性プロジェクトの巣箱のうち,たった2つだけでシジュウカラの子育てが進んでいる。ひとつは,吉備中央町大和にあるG-10の巣箱,もうひとつは高梁市巨瀬町(詳しい地名までは知らない)にあるN-05の巣箱である。
シジュカラの産卵と子育てが成功する巣箱には,明確な特徴がみられる(図1)。卵やヒナがいるときにはメス親が巣箱の中に陣取り,卵やヒナの上に覆いかぶさっている。周期的に(数秒間隔)しっぽの羽を広げて,侵入者を威かくしている。耳を澄まして聞くと,パシュー・パシューという羽音がずっと続いている。恐怖に対峙して,親が身をもって子供を守れば,子供が生き残る可能性が高まる。逆に,自身が弱いことを理由に,怖いものからすぐ逃げていては,子供は育てられない。
図2は,吉備中央町大和にあるG-10の巣箱の中を示している。6月21日に見たときには巣立ち寸前の状態だったので,今日(6月23日)の調査では,すでに巣立った後になっていると思われる。
図3は,6月22日に見たときのN-05の中の様子を示している。N-05は,少し前に見たときには,近くにブッポウソウがいて長いこと「(私はここに)いるぞコール」を発していた。この時には確かシジュウカラの卵もなかったように記憶している。ただシジュウカラの親(ペア)はすぐ近くにいて写真も撮ってある。
もしここ(N-05)でシジュウカラが産卵したとしても,早晩ブッポウソウに捨てられると思っていたが,産卵が行われ,ヒナは順調に育っているのが確認された(図3)。
一方で,「いるぞコール」を発していたブッポウソウがどうも気になったこともよく覚えている。ここ(図3)はブッポウソウが一匹しかいなかったか,あるいはペアの片方がブッポウソウ同士の争いで落鳥した後だったのかもしれない。