2026年8月31日(月)
NPO法人の主導する自然保護の推進
環境省や岡山県は,自然保護を実施する場所を決めて,地域の事情に合わせた内規のもとで管理している。鳥取県の大山であれば,環境省は「大山隠岐国立公園・隠岐管理官事務所」を設けて公園の管理を行っている。「岡山県自然保護センター」は,どこをどう管理しているのか知らないが,職員の人数は多そうである。
地域の自然は,環境省や各県の自然保護関連部署だけでは守り切れる状況にはない。だからこそ「カブトガニを守る会」・「海の生物を守る会」・「野鳥の会」など,NPO法人や任意団体の支援が必要である。しかし,環境省や県とNPO法人や任意団体は地主と小作人の関係になっている。主従関係の強い日本の社会では,どうしてもそんな関係になりがちである。大学の中ですらひどいものがある。なぜあんなに官に媚び諂うのか,私は理解できない。
異なる組織の間に,地主と小作人が生じる原因は明らかである。環境省,岡山県,各地の市町村に対して,客観的な証拠をもとに意見する人がいないのである。・・・と言うか,そういう環境が醸成されていないのだと思う。団体の方だけでなく,環境省や岡山県の方にも問題があるのだろう。以前の文部省などもひどい状態だった。昔からの悪習慣は改善されつつあるようだが,大企業では依然として
色濃く残っている。厳しくしなければ風紀が乱れるということなのだろう。
生物多様性研究・教育プロジェクトは,「内分泌かく乱物質の干潟の生物に与える影響」や「サンゴ礁生態系の成り立ちを通じて,正常な干潟・正常なサンゴ礁原とは何かを追求してきた。実践の過程で,現在の分類学,生態学,環境保全学のように演繹的手法に頼る生物学では,自然保護の「思想」は生まれるが,結局は絵に描いた餅ができる。例えば,今西錦司氏の提唱した「棲み分け理論」を基礎にして自然保護をやろうとすると,結局は激しい環境破壊が起きるだろう。効果的な自然保護を進めるためには,現代生物学(系統進化学,形態形成学,発生生物学など)や古生物学を含む現代地球科学の基礎的研究が必要である。
さらに,環境省や各県の制定する自然保護は,法律的な側面が強い。地球の環境が,法律だけでは守れないことは世界中で起きている環境問題を見ればよくわかるだろう。個別の事案に関しては,NPO法人を作って対応する必要がある。任意団体として活動することもできるが,公的機関に意見を言うためには法人格がある方がよい。原著論文も法人としてパブリッシュできる。

図1.ブッポウソウの水浴びがみられる上田西の池。生物多様性研究・教育プロジェクトは,写真家のためにブッポウソウを増やしている訳ではない。研究・教育活動という明確な目的がある。多くの困難を乗り越えた末に,ここまでたどり着いた。ブッポウソウの水浴びも,池の周辺にいくつかの巣箱を設置した結果,この池の周辺が渡り前の集合場所になっていることに気付いた。この池周辺のブッポウソウは多様性プロジェクトによって管理されていることをお忘れなく。私が100m以上離れたところにいても,私を知らないブッポウソウは水浴びをやめて林に隠れてしまう。私はいままで自然に生きる生物を利用して生物学の研究を行ってきた。長年の研究において,写真家の考え方をよく知っている。いまこの事案を放置すれば,多様性プロジェクトの研究・教育活動に重大な支障が出るのは間違いない。

図2.黒尾山の頂上に立つ近澤峰男さん。黒尾山は,兵庫県宍粟(しそう)市にある。近澤さんは小さいころから小鳥が好きで,行動観察を続けてきた。小西正一氏も同じで,日本では研究ができずアメリカに渡った。NewtonもWilliamsも同じタイプの人物だろう。そういう人たちなら私は喜んで池の周囲での撮影を許可する。しかし,カメラマンは誰も私とコミュニケーションを取ろうとせずに,中山良治氏の自宅(吉備中央町)を頻繁に訪れては,こそこそと逃げ回るように行動している。日本の社会には,大学人を含めてコミュニケーションの苦手な人たちが多い。過去の苦い経験から,私はそういういう人たちに過度の配慮はしないようにしている。
ブッポウソウの野外飼育と繁殖の概年時計(circannual clock)の研究
野生動物,とくにホ乳類(mammals)や鳥類(Aves)はよく人になつく。ブッポウソウ(Dollarbirds)は人里で子育てを行うこともあり,観察者には良くなつくと思う。観察者がブッポウソウを見てやれば,ブッポウソウも観察者をよく見るようになる。そこに野鳥の研究の楽しさがあり,生態学や進化生物学の研究することの大義も生まれる。
世間には,頭からイノシシやカラスを有害鳥獣と決めつけ,手当たり次第に殺しまくるがいる。こういう連中には共通した性格がある。多様な側面から客観的にものを考えることができない,という致命的欠陥である。日本の組織の中では,まだ上意下達(top-down communication)が意思疎通の重要な手段になっているので組織内では問題が起きないが,社会の中で個人対個人,あるいは組織対組織の案件になると,当事者同士では解決できない事例が増加する。面白いことに,コミュニケーションが苦手な人たちは,集団になると自治・自治と騒いでは,自分たちのわがままを社会に押し付けようとする。教室内では意見もろくに言えない状況を作り出しておいて,よくも「自治を守れ」などと社会に向かって主張できるのか,と思う。そういう連中の主張する「自治」は,戦前・戦中の軍隊組織を教室や学部に残せということなのだろう。しかも,何で「自治」の対極に「トップダウン」があるのか,それもよく理解できない。
さて,ブッポウソウを初めとして渡りをする野鳥は多い。ブッポウソウが繁殖地(巣箱)にやってくる時期は毎年決まっている。早く来すぎると餌(昆虫)が飛んでいない。逆に遅く飛んでくると子育てに使える巣箱は,
仲間に奪われてしまう。だから特に春の渡り(spring migration)は,正確にならざるを得ない。
もっとも,遅れて来たペアも黙っている訳ではない。自分たちの巣箱を確保するために,すでにoccupyされている巣箱のペアに向かって攻撃を仕掛ける。ブッポウソウのケンカは,しばしば殺し合いに発展する。先住者を追い出して巣箱を乗っ取る(usurp)ことができる場合もあるが,逆に返り討ちにあって激しい闘い(fighting)の結果,先客のオスにつつき殺されることもある。
生態学者は観察された客観的な事実をセンチメンタルな「思想」によって捻じ曲げてしまうので,自然界の本当の姿がさっぱりわからなくなる。棲み分け,里山,警戒(告)色,r-K淘汰が真実だと言って得意になっているが,内実は思弁の暴走に過ぎない。大学紛争時に全共闘のめざしたアマチュア学問や大学解体の思想が,そのまま生態学に引き継がれている。
概年時計は,繁殖活動を1年のうちの最も適した季節に同期させるために多くの動物や植物に備わっている。熱帯の森林で毎年同じ時期に開花する樹木が多いことも,セミの羽化が毎年同じ時期に起きることも,同じ原理に基づいている。
ブッポウソウの研究のジャンルは生態学(ecology)に入る。しかし,私は上記の生態学者から離れ,ブッポウソウの「概年リズム」の発現機構の研究を進めようと思う。概年時計が,野外でどのように使われているかに焦点を絞って研究を行いたい。
ブッポウソウが水浴びする池周辺には,写真撮影を目的としたカメラマンの立ち入りを禁止
野鳥の世界にはいわゆるアマチュアが大勢いる。アマチュアの多くは,「撮り鉄」と同じ「写真家」(カメラマン)である。近澤峰男さんのような方もいるが,大多数は自分の都合しか考えていない人々である。多くの写真家の主張は「ブッポウソウは誰のものでもなく自然のものである。だから,管理者に対する迷惑など全く配慮する必要はない。ブッポウソウは好きに撮影できる」ということだろう。撮り鉄や昆虫採集マニアも同じ考えである。
ブッポウソウの撮影のようなケースは,全国津々浦々で起きている。トラブルが起きる一番大きな原因は,ブッポウソウ撮影のルールが制定されていないことだろう。管理者の設けたルールが撮影者に伝わっていなければ,撮影者は自分たちに都合の良いルールを想像して行動するようになる。尋ねても氏名も住所も名乗らない。管理者の方はとんでもない奴らだという感情が芽生え,双方が折れなければ大きなトラブル(警察沙汰)に発展する。できるだけ感情的なトラブルが起きないよう,ブッポウソウの観察に関して,以下に生物多様性研究・教育プロジェクトが設けた内規(ガイドライン)を公開しておきたい。
写真家やバンダーに関しては,生物多様性研究・教育プロジェクトが設置した巣箱のある周辺で,ブッポウソウの写真撮影ならびに,足輪付けをすることは認めない。たとえ捕獲許可を取っていても認めない。これらの規制は,日本野鳥の会岡山県支部や吉備中央町ブッポウソウ会の設けているガイドラインと大きく異なるので注意してほしい。
図1の池周辺に写真撮影に来た場合には,この場所を訪れた経緯について本人に問い合わせる。氏名を名乗
ることができない場合には,トラブルになる前にお引き取りいただく。お引き取りいただけない場合には,すぐに吉備中央町ブッポウソウ会の会長に連絡を取り,会長に説得してもらうことにしたい。
撮影者に声をかける範囲は,吉備中央町の和中から上田西で,多様性プロジェクトの設置した巣箱がある地域。
何度も同じことしつこく書いて申し訳ないが,生物多様性研究・教育プロジェクトはブッポウソウの案内所ではない。だから私はガイドみたいなことはやらない。案内を期待するのであれば,吉備中央町ブッポウソウ会の中山良二さんか吉備中央町の協働推進課に連絡すればよい。吉備中央町ブッポウソウ会が設置した撮影場所があるので,そちらを利用されたい。
撮影場所にブッポウソウがいなくなったのでこちらに来た,などと言う人たちに対しては即座にお引き取りいただく。
日本の社会の危機管理教育は大幅に改善する余地があると思う。特に初等・中等教育の現場では,うまく機能していない。年功序列を重んじ(失敗を嫌うのだろう),トラブルにすぐに蓋をしようとする教育委員会の構成に大きな問題があるのではないか?
こんなことを言うと,人の悪口を言うなという者(管理者)が必ず現れる。直接自分では言わず,下っ端に言わせているところが面白い。東京大学がけん引した官僚制度におぼれた人たちは,市民の行動に足かせをはめ,社会の発展を妨げてきた。

図3.ブッポウソウの巣箱(WA-03)。この場所は,宇甘川の対岸にある。橋の上には柵がある(しかも2つ)。立ち入り禁止ということなのだろう。私は和中の人たちの了解を得ているので,自由に出入りしているが,知らない人がいると住人は何か悪いことをしているのではないか,と疑うだろう。どういう人かを尋ねても返事もなければ,以降の会話は感情的になる。また,こういう場所に入っても,ブッポウソウはすぐに逃げていい写真は撮れない。写真撮影や巣箱の設置に関しては,日本野鳥の会・岡山県支部の作成したガイドラインがある。野鳥の会のガイドラインは,うまくできていると思う。撮影者は,野鳥の会の作成したガイドラインに従っていただきたい。多様性プロジェクトのガイドラインは,研究や教育の推進のために作成されており,一般の方々には「禁止」という側面が強くならざるを得ない。

図4.自立柱のてっぺんにとまり,幼鳥の巣立ちを促すブッポウソウのメス。
この巣箱の奥にも,もうひとつ巣箱が見えている。
川を挟んで,この巣箱(WA-03)の反対側には,野鳥の会の巣箱(95番)がある。95番はもう20年前から設置されており,今和中で増えているブッポウソウは,95番で生まれた個体が増えたものだろう。繁殖が始まる直前までは,一族は大変仲良くやっているのだが,巣箱をoccupyした途端に殺し合いを始めるのは困ったものだ。自分たちで巣を作らなくなると,結局は残酷な結末が待っている。
私の役割は,私見を交えずに,社会に対してブッポウソウの本当の姿を伝えることである。生態学者は脚色したストーリー(小説)を書くことに腐心し,写真家はきれいな写真が撮れればそれでよしとする。私はもうそんなことに協力はしたくない。
この巣箱(WA-03)は,3年ほど前に設置された。設置してから2年間はスズメが子育てをしていた。奥の方に2つの巣箱は互いに50mも離れていない。今までこの巣箱(今年(2026)は巣箱の向きを180°変えてみた。
和中は小さい谷である。谷の出口には,20年以上前に野鳥の会が設置した巣箱があり,毎年4~5匹の幼鳥が巣立っている。野鳥のガイドラインに従えば,和中の谷には新しく設置できる巣箱はない。にもかかわらず,多様性プロジェクトは和中の谷に多くの巣箱を設置してきた。シジュウカラ用の巣箱を含めると,9コも増設した。野鳥の会の設置した巣箱における子育が影響を受けるのか?シジュウカラとうまく巣箱を分け合えるか?巣箱間の距離が50m以内と短い場合には,どちらかの巣箱にしか入らないのか?ブッポウソウの生態について多くのことが知りたかった。
結果としては,2026年は多様性プロジェクトの巣箱(9コ)のうち,5コで産卵があり,子育てを行った。ただ,50m以内という距離では,他の巣箱への強い干渉が起きる。昨年までは,野鳥の会の巣箱にいたペアが絶大な権力(?)を持っており,WA-02やWA-03に来るペアを追い出していた。今年(2026)は95番で世代交代が起きたのかもしれない。
いずれにしても,観察者(私)が頻繁に見ているとブッポウソウの行動は変わる。巣箱の近くを同じ人間がうろうろしていると,ブッポウソウの方も安心するのだろう。人に慣れてくるのがよくわかる。子育てが終わって熱帯の島々(スンダ列島)に戻るときに,私に挨拶して別れる(本当の話)。逆に,知らない人間や大きなレンズを持って近づいてくる人間がいると,ブッポウソウは警戒してすぐに遠くに逃げてしまう。
巣箱の設置に加えて,野鳥の観察や写真撮影の場合には,日本野鳥の会・岡山県支部が提示しているガイドラインに従うべきである。

図5.WA-03の巣箱。餌(アブラゼミ?)を運んできたのがオス。オスのすぐ後ろに飛んでいるのはナツアカネか?ヒナは巣箱の中に引っ込んでいる。電柱の上にいるのがメス。このメスは私がすぐ近く(20 m)にカメラ(EOS 7D)を持って立っているのに逃げようとしない。このペアは,今年(2026)は和中のWA-01にいたと思うが,いつの間にか川(宇甘川)の向こうにあるWA-03で子育てをした。メスは,5~6年前にWA-01で生まれたと思う。巣立ちした後もWA-01のすぐ近くにいて,呼べば私のすぐ近くまで出てきた。親も仕方なくついてきた。このブッポウソウがWA-01に戻ってきた年(2021)には,この巣箱の50m奥に新しい巣箱(H-21?)を設置した。それまでWA-01で子育てをしていたペアは,そちらの巣箱に移った。すぐ数が増えるので,自然の中でブッポウソウを管理する(世話をする)のは大変である。

図6.和中にあるWA-02の巣箱。町道の脇にあって,直線距離にしてWA-01から100m,95番から50mしか離れていない。毎年ペアが訪れるが,近くの巣箱のブッポウソウからの干渉が強く,産卵せずにどこかに逃げていった。今年(2026)は産卵し,子育てをした。


図7.和中にあるWA-02の巣箱。ペアはどこから来たのか不明だが,上田西のA-06の巣箱を取り除いたので,A-06のペアが 上田西から谷沿いに降りてこの巣箱(WA-02)を見つけたのかもしれない。
メスは早いうちに5コ卵を生んだと思う。ペアは巣箱をうまく守れず,卵はすべて近くの巣箱のブッポウソウに持ち出されて外に捨てられた。
それでもまた4つ生んで,ヒナは全部ふ化した。この巣箱にブッポウソウが定着するにはどうしたらよいか,難しい問題がある。

図8.WA-02の巣箱に残るブッポウソウのヒナ。WA-02では今年(2026)初めて幼鳥が巣立った。最初の3匹は順調に巣だったが,1匹のヒナが巣箱に残ってしまった。3匹が巣立った後,3日ほど間が開いた。親は最初のうちは巣立ち(を促す)コールをしていたが,全く聞こえなくなった。多くの巣箱を観察していると,最後の一匹が(怖くて?)巣箱から出られず,親に見捨てられて巣箱の中で死ぬケースが時々ある。このまま置くと巣箱の中で死ぬ可能性が高いと判断した。しかし,飼うのはぴよ吉一匹で十分である。電柱に登って巣箱を開けたらヒナは勢いよく,巣箱の外に出て行った。すぐに親の声がして,そちらに飛んで行った。

図9.和中にあるブッポウソウ研究の基地。野生動物と共存できる環境づくりをめざす。数々の失敗を経てわかってきたことは,フィールドを草茫々にしては野生動物も攻撃的になること。しばしば草刈りをしてきれいにしておくと,マダニやヘビは一気に減少する。敷地の周囲も林の中が見えるように草を刈り,木の枝を払っておけばイノシシは近づいてこない。里山に住む人たちの中には,少しでも自分の土地の木を切ったり,草を刈ったりするとものすごく怒る者がいる。日名義人さん曰く「昔から太刀の悪い人がいて,そういう者が激高する」とのこと。私はそういう者に対し,絶対に謝らない。(法律に触れるようなことはしていない。)ありったけの汚い言葉を大声で発してトンズラを決め込む。そうすると後で電話がかかってきたり,大学に垂れ込まれたりと,激しい嫌がらせがある。とにかく,悪いこともしていないのに謝ることだけは避けたい。大企業とのトラブルも同様な嫌がらせをされる。日本の社会は,危機管理の感覚がおかしい。大学や大企業の言うコンプライアンスを真に受けて生きると卑屈な人間になる。身に降りかかるトラブルは,努力して自分の力で振り払えるよう,精神力を高める必要がある。人格者に頼るとみじめな解決になる。


図10.「ブッポウソウ谷」にある巣箱U-02(左)とR-04(右)。研究基地から上田西の方に町道を200mほど行くと,道路わきにある。U-02は3年前に設置し,その年にoccupyされ,その後毎年子育てが行われている。たまに巣箱の中をのぞいて子育て状況を確認した。
右のR-04 は高さ2m。さすがにこの高さだとブッポウソウは入らない。昨年(2025)は,オオスズメバチが巣を作ったので,子バチが羽化する前に殺虫剤を噴霧して駆除した。羽化の最中は親バチが興奮し,近くを通っただけでも刺されることがある。子バチが羽化する前ならば,駆除は容易である。業者を頼まず,自分で駆除できる。ブッポウソウの巣箱は,秋になるとスズメバチの巣作りに利用される。すごいのになると,巣箱全体がスズメバチの巣で覆われる。そんな巣箱がこのところ急に増加している。子バチが羽化するまで放置すると大変なことになるので,それまでに駆除しなければならない。
ブッポウソウの管理は,里山全体を管理するのと同じことだ。人間関係も含めて大変な苦労が必要である。写真家にはメンテの苦労を少しでも理解してほしい。

図11.道端を歩くアナグマ(上田東で撮影)。
アナグマはアライグマと違って穏やかなホ乳類だと思う。数が増えても生態系には大きな被害をもたらすことはないだろう。里山が荒廃すると,ヒゼンダニが大量に発生し,アナグマも大きな被害を受ける。
ヒゼンダニ(マダニよりもずっと小さい)は,本州だと10年おきぐらいに大発生するようだ。ブッポウソウにくっつくヒゼンダニは,人もさすがアレルギー性の皮膚炎は1週間もすれば治る。一方,ホ乳類にくっつくヒゼンダニは本当に恐ろしい。タヌキは体中の毛が抜け落ちる。人もヒゼンダニに刺されるとひどい症状(激しいかゆみを伴う)に何か月も悩まされる。皮膚はケロイドになる。

図12.松田さんの家の前に設置された巣箱(R-20)。子育て中は竹藪の中にあるアカマツの立ち枯れの枝にとまっている。今はどこかに行っている。

図13.アカマツの枯れ枝にとまって巣箱(R-20)を監視しているブッポウソウ。近くを昆虫(甲虫,トンボ,ガ,直翅類)が飛ぶと捕まえて巣箱に持ってゆく。

図14.松田さん宅の裏にある池で水浴びを始めたブッポウソウ(オス)。知らない人が来るとすぐに水浴びをやめてしまう。これはどこの巣箱のオスか不明。

図15.水面に激突するブッポウソウ(オス)。この池では,3種類のツバメが来て水浴びをしている。おそらくブッポウソウは,ツバメの水浴びをまねたのであろう。オスは水面に急降下爆撃機(艦爆)のように突っ込む個体が多いが,メスは水面近くを飛んで艦上攻撃機(艦攻)みたいな格好で水浴びをすることが多い。

図16.水面に勢いよく突っ込んでから,再び飛び出すブッポウソウのオス。水面を離れると,近くの木の枝にとまって少し休憩をとる。しばらくするとまた飛んできて水面に突入を繰り返す。8月に入ると家族単位でやってきては,水浴びをして別の場所に移動する。この池には,3つ4つのグループが交代で訪れる。

図17.オスの水浴び。池で待っていると,家族で水浴びに来るのがよくわかる。木陰に隠れて待っていると,松田さんの家の方からブッポウソウの鳴き交わす声が近づいてくる。ブッポウソウが真上に来てしばらくすると水浴びが始まる。この池で「ブッポウソウの水浴び」が毎年見られるような環境設計をしたい。

図18.水面の1m上空を飛ぶブッポウソウのオス。飛んでいるときには頻繁に私の方を見る。私を見ているかは,EOS 7Dで十分確認できる。

図19.水浴びを楽しむブッポウソウ。飛びながら私の方を見ていることがよくわかる。私が近くにいても逃げないので,松田さんの家の巣箱で子育てを行ったブッポウソウだろう。図1の右上の巣箱(R-02)のブッポウソウは池の上の電線によくとまっている。こちらは警戒心が強く,遠くから見ていても水浴びを中止する。

図20.水面から10cm上を飛ぶメスのブッポウソウ。この池には親だけでなく,幼鳥も一緒に来ていると思う。親が水浴びをすれば,子供もそれをまねすると思う。「水浴び文化」が定着するまでは,写真家にはフィールドを荒らされたくない。もちろん,定着しても荒らされたくない。

図21.多い時には5~6匹のブッポウソウ(一家)が遊びに来る。池の周囲の林は,ブッポウソウが南に帰る前に集合する場所でもある。ブッポウソウが渡りに入る前は,林の中で盛んに鳴き交わす。その期間はせいぜい数日で,ある日突然に家族単位ぐらいで飛び立つ。ブッポウソウの場合には大集団にはならない。

図22.近澤峰男さんにCanon EOS 7D Mark Ⅱと600mmレンズを借りているので,もっときれいな写真が撮れるが,私はこれ(EOS 7D)で十分である。EOS 7D Mark Ⅱの中古は5万円近くするが,EOS 7Dの中古だと1.5万円で買える。使い勝手もよい。しかし写真だけあっても文章がなければ,鳥の本当の姿は理解できない。

図23.アカメガシワの枝にとまるイソヒヨドリのオス(近澤峰男さんが撮影)。和歌山県の古座川で撮影。自分の作品を通じて社会とコミュニケーションが取れることは大変素晴らしいことではないだろうか?写真家は盗まれることばかり気にしている。いつも自分の都合ばかり考えているので,周りの者はみんな自分の作ったものを黙って持ってゆく悪者だと思っている。大学の教員の中にもそんな奴らが本当に多かった。自分たちの利権を守るために,コンプライアンスを声高に叫びながら,やることは同僚に対する(意図的な)嫌がらせである。大学を完全に私物化していた。こういう連中は,自分が気に入らないことを言われると,すぐにパワハラをされたと訴える。お気の毒な奴らである。被害妄想は抑えて,少しは社会を楽しませたらどうかと思う。社会が楽しめれば,資料を提供した自分も嬉しくなるだろう。
終わりに
個人や組織が作成した写真や資料に関しては,著作権(copyright)がある。多様性プロジェクトがパブリッシュする写真や資料等に関しても,もちろん著作権はあるだろう。だが,著作権にはいくつかの大きな問題があるのではないだろうか?
まずは,野鳥の写真について。図21にあるイソヒヨドリは,かつては磯や港など海岸の近くで繁殖していたが,最近は日本列島の内陸部でも見られる。イソヒヨドリは自然の中で繁殖しており,有害鳥獣に指定されている訳でもない。だから写真家は,日本野鳥の会の作ったガイドラインに従って観察し,自由に写真を撮ることができる。写真の著作権は写真家に付与される。
一方,ブッポウソウの場合はどうか?ブッポウソウは,自然林の中にある大木の「うろ」で繁殖する例はごく少ない。大概はどこかの団体が巣箱を設置しており,そこで子育てをしている。つまり,ブッポウソウには管理者がいる。管理者の育てた鳥を,管理者に断りもなく写真を撮り,著作権は写真家にあると主張するのは,泥棒と同じだろう。
だから,生物多様性プロジェクトでは,許可を得ないブッポウソウの撮影は禁止する。自分勝手な写真家にフィールドを荒らされたくないし,感情的な問題(ブッポウソウは誰のものでもないとうそぶき,好き放題にフィールドを荒らされると,私は怒る)がこじれて大トラブルが起きることは避けたい。
次に,写真や資料等の転載について。多様性プロジェクトは,ブッポウソウに限らず,生物多様性とその成り立ちに関する多く
の写真や学術資料を毎年公開している。この記事(article)も同様に公開される。多様性プロジェクトの写真を使う場合には,事務方にひと言メールで声をかけていただきたい。
他の団体や大学・研究所・企業が公開した写真や資料は,全く転載はできないかを言うと,そうでもない。描き直し(rewrite)という方法がある。これは出所を明記して,その図や表を描き直したと記入しておけば,原作者の著作権は守られる。描き直しを禁じる法律はない。要するに自分の使っている図や写真は,贋作(がんさく)であることが表示されればよい。
私の経験から言えば,写真家や生物採集家の作った写真については,一切触らない方がよい。所有用が異常に高く,他人に貸し出すとかいうことは一切やらない。ああいう人らの撮影した写真は,要するに美術品のひとつで,学術的な利用価値はない。
著作権の取り扱いに関して,多くの書籍には「無断引用を禁止」と書かれている。いくつか学術書の出版社に問い合わせてみてわかったことは,著者に連絡がつかないということだった。たとえそのような写真や図であっても,自分の主張したいことをより分かりやすくするために,出所を明記してこの図や写真を転載したという形にすれば,問題にはなりにくいとのことだった。
「初めての西表島旅行」のシリーズでは,沖縄公文書館に所蔵されている写真(モノクロが多い)をたくさん使っている。好意的な機関を頼りながら記事を書くようになって,嫌な連中とは縁を切ることができ,事がすごくスムーズに運ぶようになった。
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<執筆>
三枝誠行(NPO法人,生物多様性研究・教育プロジェクト; プロジェクト長。理学博士)
