生物多様性研究・教育プロジェクト(四季折々の自然の風景と野鳥) No 34: 尿酸はストレス耐性物質のひとつではないか?

2023年10月22日(日)

1.Introduction
 インターネットのどの解説を見ても,尿酸(uric acid)は痛風(gout)の原因化合物と書いてある。尿酸値の正常値は,男女共に 7.0mg/dLより低ければ正常であり,それ以上になると高尿酸血症(Hyperuricemia)と書かれている。尿酸は,人体の恒常性の維持にとって有害な化合物であり,たくさん水を飲んで(しかし,尿酸はほとんど水に溶けない)できるだけ早く体外に排泄しなければならない,というのが多くの医者の共通認識ではないだろうか?権威ある辞典とか解説書も,大方そんな記述になっていると思われる。

 自分は,この7月に右足(第1波),9月に左足(第2波),そして10月下旬から第3波の痛風に襲われている。痛風であることは間違いないが,この4か月間に尿酸の機能に関する昔の常識では説明できない体験をした。

 痛風(gout)の発作第2陣は,9月19日にピークを迎えた。こちらは,左足の足指骨(親指)に始まり,5本の足指骨に広がった。尿酸の結晶化は,足指骨の関節にとどまらず,中足骨(くるぶし)の関節にもおよび,左足の甲は晴れ上がり,足の見た目は板カマボコ状態になった。数日後には結晶化は膝関節にもおよび,ほぼ完全に歩けない状態になった。歩けないから当然病院(整形外科)にも行かず,足の痛みは増すばかりであった。しかし,どれぐらいの痛みまで耐えられるか興味があったので,自宅で様子を見守った。

 9月19日(火)からはビールは一口も飲まず,またプリン体を多く含む肉類を食べるのは控えた。(というか,飲みたくもなければ,食欲もなくなった。)ここまでは,どこの病院(整形外科)に行っても同じことを言われるだろう。次の日(9月20日)から徐々に足の痛みは引いていったが,ここで面白いことに気づいた。9月19日から頻繁に眠気に襲われるようになったことだ。ただ,少しばかり倦怠感はともなった。

 さすがに,痛風の最盛期だと足の激痛にすぐ目が覚めてしまったが,9月21日(木)ごろからは,よく寝るようになった。朝起きて朝食を食べひと寝入り。昼には何か少し食べてから(足を引きずって)吉備中央町に行き,華(猫)にエサをやってから家に戻り,また寝る。夕方は夕食をとるとまた寝るという具合である。

 ・・・で,毎回の寝起きの気分はどうかというと,すごく爽快なのである。(ビールは飲まないで)昼寝をすると,起きた時にそう快感をともなうことがある。それと同じ爽快感が寝るたびに得られ,すでに三途の川を渡っているのかと思ったりもした。

 そんなこんなで,痛風は(見かけ上)9月末には終結した。龍ノ口山も,最初は息が切れて立ち止ったが,9月末には割と普通に登り下りできる状態になた。そして,10月10日(火)に岡山済生会予防医学健診センターで日帰りドックAコース(38,500円)を受けた。

 尿酸値は6.6 mg/dLと基準値以下になったが,低いほどよいという証拠はない。さらに問題なのは,血圧と体重である。血圧は2021年に測定したときより25 mmHgも下がってしまった。また,2022年はなぜか異常に高く,その時に比べると40 mmHgも低下した。アルコールを摂取しなければ,すぐに血圧が低下するというのは,体の中では動脈硬化が進行していないことを示すのだろう。体重も5 kg減少して50 kg台に入った。週2回の龍ノ口山のエクササイズも以前と同じようにできた。・・・これでやっと痛風とはお別れかと楽観した。

 詳細はお話ししたくないが,10月15日(日曜日)に激しいストレスで朝から14時過ぎまで,半日外に出られない事態が生じた。食べる量が急に減少したのが原因だったような気がする。やっとクリアして15;30から華にエサをやりに行った。

 次の日(10月16日)になって,また痛風が再発するかと,ちょっとばかり疑念が生じた。案の定,数日してから左足の痛風が再発した。痛風が発症すると,やっぱり眠くなるが,寝ると目覚めはすごく良い。左足は9月ほどひどくはないが,引きずって歩く状態になった。痛風になると,足の痛みと寝ることの快感が同時に襲ってくる中で,尿酸の役割について思い当たる節があった。

 尿酸の役割については,昔から負の側面(痛風の原因物質)ばかり強調されてきた。痛風についてインターネットで調べてみると,尿酸は体に毒になる化合物という記述が目立つ。確かに尿酸は,基準値(7.0 mg/dL)を越えると結晶化する割合が増加し,痛風の原因になる。一方,痛風を起こす原因物質の尿酸は,野鳥のように腎臓の糸球体を通過する間に排泄されるのかと思っていた。しかし,ヒトの場合には,90%以上が再吸収されているようだ。体に不要とされる物質が,こんなに高い割合で再吸収されるというのは,尿酸が体内の恒常性の維持に関して何か重要な役割を果たしているに違いない。

 年齢のこともあるが,体に強い負荷(ストレス)が加わると,痛風が発症する。ストレスによってプリン体から尿酸の合成が促進されたのだろう。尿酸が血液中に一定量蓄積されると,眠気を引き起こすと考えられる。寝た後に爽快感がともなうことは,尿酸がストレス耐性物質であることのエビデンス(新しい知見)になりうると思う。そして尿酸自体には,毒性がある訳ではない。

 結局,日常生活においては,アルコールは飲まないこと(快眠を妨げる)に加え,快眠と痛風のバランスをうまくとればよいという結論になる。しかし,うまくバランスをとることができる人は,実際には多くない。大げさな例で言えば,太平洋戦争中に使われた99艦爆(急降下爆撃機)の操縦で,急降下してから機首を上げるタイミングの厳しい訓練がしかり。97艦攻(魚雷を投下する)の操縦で,敵艦に向かって魚雷を発射するタイミングの厳しい訓練がしかりである。そういう人たちならば,私の行った方法をお勧めできるだろう。ちなみに,私の研究の主要なテーマは,物事の起きるタイミング(timing)の解析である。

 だが,チコちゃんには無理だ。私のやり方は,真似できない。私には,チコちゃん自身は何も考えていないように思える。その証拠に,わからないことがあれば,まず自分の頭で考えることをしない。真直ぐにいわゆる専門家に尋ねてあらかじめ正解を知る。そして,番組では知らない者(出演者)に対し,ボーッと生きてんじゃねえよ,と大きな顔で人を大層馬鹿にする。一番ボーッと生きているのはNHK。いえいえ失礼,チコちゃん,・・・あなたです。

 尿酸はアンモニアと同様に毒性の強い化合物である。だから陸上生活をするホ乳類では,尿酸を腎臓で尿素に変換してから体外に排泄する。・・・というインチキ仮説を最初に打ち出したのは,一体誰なのだろうか?こういう議論は,結局互いに非難の応酬になるだけである。10歩先に進んで,一番大事なことについて議論したい。

 大事なことは,体外に尿として排泄される化合物(窒素代謝物)は系統(phylogeny)を反映するか,という疑問である。多くの魚類では,毒性の強いアンモニアで排泄される。しかし,良く調べるとハイギョのように,尿素を排出する魚類(硬骨魚)もいる。すでにこの段階で窒素代謝産物は系統よりも,生息環境(environment)を強く反映していることが示唆される。両生類になると尿酸と尿素,爬虫類と鳥類は尿酸,哺乳類は両生類と同じく尿酸と尿素と言われている。尿酸をアンモニアと同じように毒性の強い代謝物とみなしていれば,いつまでたっても古い仮説が幅を利かすことになる。

 長らく魚類の窒素代謝物の研究をされてきた岩田勝哉氏(故人)は,果たして尿酸には毒性があると認識していたのだろうか?

2.撮影と執筆の基本情報
<撮影者> 近澤峰男(兵庫県明石市,故人)。<記事の執筆> 三枝誠行(生物多様性研究・教育プロジェクト常任理事)
<撮影機材> CANON EOS 7D(Mark Ⅱ)に CANON 600mm レンズを装着。<Key words> 尿酸,毒性,ストレス,再吸収,系統,生息環境。

3.参考文献
・安西尚彦(2010)腎臓尿酸輸送の分子機序:新規創薬標的としての尿酸トランスポーター。日薬理誌 136: 316‒320。
・岩田勝哉(1998)魚類の窒素代謝。比較生理生化学 15 (3): 184‒192(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/hikakuseiriseika/15/3/_contents/-char/ja)

図 1.カンムリカイツブリ。野鳥は尿酸を固形物として総排泄口から捨てる。尿酸は腎臓で再吸収されないと思う。2015 年 11 月 17 日,天満大池にて。

図 2.カンムリカイツブリ。野鳥はなぜペアで一生を過ごす種類が多いのか,ぜひ研究を進めてみたい。私が思うに,野鳥では知能が発達し,生活に心理という側面が加わったのだろう。ただ,人間とは知能の発達程度は同じではないから,同列に論ずべきではない。2015 年 11 月 17 日,天満大池にて。

図 3.エサ(フナ)を捕まえたダイサギ。2015 年 11 月 17 日,天満大池にて。写真で見ると白鳥に劣らず美しい鳥ではないか?

図 4.ミヤマホオジロ。深まる秋のイメージにぴったりの野鳥。2014 年 11 月 21 日,フラワーセンター(兵庫県)。今年(2023 年)は,吉備中央町の和中にはカキの実がほとんどならなかった。カキの熟した実を食べに来る多くの野鳥は撮影できないが,ミヤマホオジロは撮影できるだろう。

図 5.ノスリ(?)。子の野鳥の種名はノスリでよかったのだろうか? 何か捕まえている。2015 年 11 月 15 日,天満大池(兵庫県加古郡稲美町)の近く。

図 6.天満大池。2015 年 11 月 15 日。近澤さんは,静かなところでずっと自然を眺めるのが好きだったと思う。一人きりで,いつまでも・・・。

図 7.アオサギ。天満大池公園(兵庫県加古郡稲美町)。2015 年 11 月 9 日。撮影場所は,兵庫県明石市と思う。サギ類は,魚雷攻撃は上手そうだ。

図 8.ノスリ。2015 年 11 月 3 日岡山。近澤さんはこの日,旭川か百間川に行ったのではなかろうか?11 月初めだと獲物は落ちアユで間違いないと思う。でっかい個体だ。スーパーでは一匹 300 円以上の値段がついているかも。痛風になると,ご飯と漬物が大変おいしいと感じる。アユの塩焼きなんかも絶品である。痛風の原因がわかってきたので,アルコールはやめたが,食事の方は以前と変わらず,魚や肉をいっぱい食べている。

図 9.ビンズイ。2014 年 11 月 5 日。撮影場所の記載はないが,ちくさ高原キャンプ場と思う。清楚な感じの小鳥である。

図 10.メボソムシクイ。2014 年 11 月 4 日,ちくさ高原キャンプ場。とまっている木はアカメガシワ。私はウグイスと間違えると思う。

図 11.ちくさ高原キャンプ場。標高はビレッジのあたりで 850m なので,ミズナラを主体としてブナが少し見られるあたりになる。森林区分でいえば落葉広葉樹林帯だが,後山(うしろやま)の周辺は大規模な植林が行われてきただろう。ちくさ高原キャンプ場でも,形が長く伸びた二等辺三角形の樹木(針葉樹)があれば,それは昔に植林されたスギの木である。近年スギ林は伐採される傾向にある。伐採後は広葉樹(ミズナラとかブナ)の苗木を植えるところもあるだろうから,(岡山)県北の山々も落葉広葉樹林の割合が増加してゆくことが予想される。日本の社会にとって,あれだけ心血を注いで作られたスギ林も,儲けにはつながらなかったようだ。しかし,いつまでも外材が安く手に入る時代は過ぎつつある。現在残っている杉林の利用を視野に入れておいてもいいのではないか? ちくさ高原キャンプ場は,明石市からだと割と近い感じがするが,岡山市内からだと相当時間がかかる。

図 12.望遠レンズ(カメラ)を構える近澤さん。2014 年 11 月 4 日,ちくさ高原キャンプ場。近澤さんは撮影する際に三脚はお使いにならなかった。

図 13.エナガ。2014 年 11 月 26 日,場所不明。ちくさ高原キャンプ場だと格好がつくが,違う場所(例えば天満大池公園)だろう。

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