令和5年(2023)7月5日(水)
1.Introduction
7月3日に続いて7月4日のブッポウソウ子育て状況も記事にしておきたい。7月8日(土)の教育教材展示会を過ぎれば,続々と巣立ち(fledging)の見られる巣箱が現れる。そのときにこの記事をパブリッシュしても,時期遅れの感は否めない。
実は7月3日(月)には,有漢町(上有漢)の巣箱を見た後に,中井町と北房町にある巣箱を見に行く予定にしていた。有漢町を出て,313号の多和山トンネルを出たところで,ガソリンが残り少ないことに気づいた。手持ちのお金も600円しかなかった。600円分のガソリン(4リットル)を補充して北房町まで往復できるか思案した結果,引き返すことに決めた。基地のある和中(吉備中央町)に戻り,時間が余ったので,基地の中で首の高さほど伸び放題になっている草を刈った。大きくなりつつあるアシナガバチの巣も取り除いた。
なお,7月1日(土)に,和中に行く県道31号で,和中のすぐ近くでがけ崩れがあり,迂回を余儀なくされている。普通は,429号と31号の分岐点から5分で和中に到着する。31号を迂回すると,山を越えることになるので,30分ぐらい余計に時間がかかる。
7月4日も通行止めは解除されておらず,31号を大きく迂回して和中に入った。すぐに軽トラに乗り換えて,豊野のスタンドでガソリンを満タンに入れ,313号を通って北房町に行った。北房町からは,県道78号を通って中井町に入った。県道78号もK-06のすぐ近くで道路の法面が崩れ,6月中は交通止めだったが,7月1日に開通した。中井町からは169号を通って巨瀬町に入り,巨瀬町の巣箱を見て回った。
梅雨の時期は,あちこちでがけ崩れが起き,道路は通行止めになるところが多い。結局,7月4日は,家から和中までの往復(普通車で70 km)を含めて180 kmぐらい走った。
数多くの巣箱を見て回るのは,結構大変な作業になる。だが,次々と目に映る里山の景色を見ていると,ブッポウソウの研究が続けられて本当によかったと思う。ブッポウソウを軸に置くと,里山という環境(woodland)がよく理解できるから不思議である。自然環境の保全は,特定の種の生態に重点を置いて進めるのは,良い方法である。
2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト)
<撮影場所> 北房町(新見市),中井町・巨瀬町・川面町(高梁市)。<撮影日時> 令和5年(2023)7月3日(月)。
<Key words> ブッポウソウ,ヒナ(chick),ふ化(hatching),エサ運び,いるぞコール,警戒コール,警戒飛しょう。
<記録機材> Canon EOS 7D with TAMRON Zoom Lens (28-300 mm); CASIO Exilim。
<参考文献>
石井正二郎(1970)昆虫学への招待。岩波新書。
図1.オオムラサキとクワガタの木(アベマキ)。オオムラサキは,ここ数年で全く見かけない状態になった。いたのはカナブンのみ。北房町。
図2.E-01の巣箱(北房町)。ペアでヒナにエサやりを兼ねて,あたりを警戒している。E-01はフタ取れかけ巣箱で, 親の警戒も強い。
図3.フタ取れかけ巣箱(E-01)の上の電線にとまって周囲を警戒するペア。グーグルグル・コールはしていなかった。
図4.H-14の巣箱(川面町になると思う)。ここもエサ運びが始まっていた。車は通らないので,写真撮影には向いている場所である。
図5.巣箱(H-14)から50mの距離にあるヒノキの上で周囲を見張るブッポウソウ。ヒナになると,親が警戒するので,巣は荒らされない。
図6.巣箱(K-04)の近く(100m)にある電線の上にとまるブッポウソウ。おそらく飛んでいるエサを探しているのだろう。
図7.フライトに移るブッポウソウのオス。EOS 7DとTAMRONのレンズでも,十分に良い写真は撮れる。ただし,車の中から撮影のこと。
図8.現役時代とほぼ同じ状態で残るタバコの葉の乾燥小屋(K-04)。築70~80年ぐらいか?高梁市は,かつてはたばこの栽培が盛んだった。
図9.葉の色が白から緑に変わりつつあるマタタビ。もう実がついているだろう。マタタビの実は酒のつまみになるという話を聞いた。
図10.四角錐の墓(K-04)。お墓の数からみて,南方(ビルマ,フィリッピン,沖縄本島)に送られた若人はほとんど戦死しただろう。
図11.路上を歩いていたノコギリクワガタのメス。クワガタムシは本当に少なくなってしまっている。それでも灯火採集だと捕れるだろう。
図12.巣箱の中でエサを待つヒナ(5匹)。図12から図22までは,巣箱にCASIO Exilimを入れて撮影した。巣箱の番号は省略した。
図13.ふ化して間もないヒナ(5匹)。卵殻(egg shell)はそのまま残っているが,いずれなくなる。私はこの状態のヒナを「赤ヒナ」と呼ぶ。
図14.羽軸の生えかけたヒナ(1匹)。この巣箱では,卵は2つか生まれなかったか,いくつか持ち出された可能性がある。トラブルがあった。
図15.羽軸の生えかけたヒナ(3匹)。鳥類では,羽軸(shaft)の生える位置は決まっている。赤い部分には生えない。
図16.羽軸の生えそろったヒナ。ここは5匹いるだろう。3匹の口は上を向いているが,残り2匹は閉じて横を向いている。
図17.羽軸の形成が始まったヒナ(3匹)。卵が一つ残るが,これはもうふ化しない。
図18.巣箱の中に入った異物を見つけ,死んだふりをするヒナ(2匹)。死んだふりといっても,目はしっかりと開いている。このぐらい成長すると,周囲で起きることに敏感に反応するようになる。
図19.一匹だけ残った羽軸ヒナ。生まれた卵が一つだけというのはあり得ない。少なくとも4つは生まれただろう。卵が持ち出されたか,あるいはヒナになってからヘビ(アオダイショウ)に食われたか,いずれにしても大きなトラブルに見舞われただろう。これも巣立ちできるか不明。
図20.羽軸ヒナ(4匹)。この巣箱では順調に育っているようだ。全部巣立ちする(fledging)だろう。
図21.羽軸生えかけのヒナ。5匹いると思われる。数えてみていただきたい。眼はすべての個体で開いている。
図22.羽軸ヒナ。ここも5匹いるだろう。カタツムリの下に一匹潜っているように思われる。図12から図22を見ると,ヒナが5匹いる巣箱が多いように感じられる。大平山(697m)より南の地域(吉備中央町)では,5匹もヒナがいる巣箱の割合は,北側(北房町)や西側(巨瀬町,中井町)に比べて少ないように思われる。ただし,1匹や2匹の巣箱もそれなりにあって,平均値(mean value)で比較すると有意差が出ないかもしれない。こういうケースでは,平均値をとって有意差の検定をすることが,ベストではない気がする。また,仮に統計的に有意差が検出されたとしても,なぜ違いができるかの説明(explanation)は相当に難しいかもしれない。しかし,こういうやりかた(帰納的方法)の方が,理解する人は多いのではないかと思う。