生物多様性研究・教育プロジェクト(四季折々の自然の風景と野鳥) No 26: 私のいちばん好きな観察場所(7月17日)

1.Introduction
 7月に入ってブッポウソウの子育ては,終盤を迎えている。今年(2023)は,吉備中央町と有漢町の境にある大平山(697m)の北側と西側にある地域(有漢町,巨瀬町,中井町)と,東側にある江与味(美咲町)では,1つ2つを除き,すべての巣箱で産卵があった。巣箱占有率は100%に近く,これはすごいことだ・・・と思いきや,卵が持ち出され,巣箱の外に捨てられるケースが多発した。

 7月に入ると,繁殖地の上空を移動する集団(2匹から5匹の時が多い)が目立つようになる。子育てを終えた集団ではない。こういう集団が巣箱の上空を通過する際には,巣箱の占有者は激しいスクランブルをかけて,侵入者を追い払う。多くの巣箱では,侵入者をうまく追い払うことができている。

 しかし,一部の巣箱では,車や人の往来,工事,農作業のたびに遠くに逃げてしまうペアがいる。そういう巣箱では,親がいなくなった隙に通りがかったブッポウソウが,巣箱の中を覗き,産んである卵をすべて巣箱の外に持ち出して捨てるケースが多発した。

 巣箱が乗っ取られた場合,そこで新しいペアができて産卵することは,ほとんどないようである。巣箱はそのまま使われないままになってしまうケースが多いようだ。しばらくして古いペアが戻ってくれば,再び産卵が始まる。産卵が同調している(synchronizing)多くの個体に比べてかなり遅れ,また卵数は2コまたは3コになる。

 卵の持ち出しと廃棄が頻発しているために,ヒナのふ化率(hatching ratio)は有意に低下するだろう。また,産卵してから親が温めに入るまでの時間が長すぎて胚発生(embryonic development)が進まずに途中で死んだ卵も多い。これは例年と変わらない。ヘビ(アオダイショウ)による捕食は少ないように思う。

 結局,ヒナのふ化率は個体群全体で75%ほどになると予想している。また,持ち出されて捨てられるのは卵だけと思っていたが,どうもヒナも持ち出されて捨てられることもあるようだ。

 今年(2023)は,巣立ち(fledging)は7月11日から始まっている。7月25日までには,ほとんどの巣箱で巣立ちが終了する。

2.撮影に関する基本情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト)
<撮影場所> 巨瀬町(高梁市)M-03(地元の人たちとの関係もあり,正確な場所はお伝えできない。)
<Key words> ブッポウソウ,M-03, エサ運び,Vターン,主翼(航空機)のフラップ,観察場所,ヒナ顔出し,卵の持ち出しと廃棄。
<撮影機材> EOS 7D Mark II(Canon)with 600mm Lens (Canon)。

<参考文献>
Wikipedia ”着陸”(https://ja.wikipedia.org/wiki/着陸)。
Bailey, R., H.A. Faulkner-Grant, V.Y. Martin, T.B. Phillips, and D. N. Bonter (2020) Nest usurpation by non-native birds and the role of people in nest box management. Conservation Science and Practice. Vol. 2 (Issue 5). e185.

図1.ブッポウソウの繁殖スケジュール。今年(2023)は,7月11日から巣立ちが始まった。

図2.巣箱M-03のある観察場所(定員1名)。高梁市巨瀬町にあるが,私以外の撮影者が来ると,地元の人はいい顔をしない。

図3.ブッポウソウのペアが待機している林。巣箱から 100m 以上離れている。飛んでいるのはダイサギ。ブッポウソウは,サギは警戒していない。

図 4.エサ(おそらくコガネムシ)をくわえたまま,電線にとまるブッポウソウ。しばらくあたりをうかがってから滑空して巣箱に来る。

図 5.滑空(かっくう)して巣箱に近づいたオス。飛行機が着陸前に主翼後方のフラップを下に向けて出すが,それと非常によく似ている。尾(tail) も思い切り下に向けて飛しょう速度を落としているのがわかる。巣箱入り口の 1m 手前ぐらいだろう。

図 6.エサ(おそらくコガネムシ)をくわえて巣箱の入り口に来たオス。ヒナは引っ込んだまま。

図 7.入口まで 50cm の距離。もう一息で入口に足が届く。

図 8.入口まで 30cm の距離。オスはどこを見ているのだろうか? 写真家の欲しがる構図(composition)であるが,私は写真家の視点には関心がない。 動物行動学的に見て意味のある写真を載せてゆきたい。近澤峰男さんがたくさん撮影されているので,それらを紹介するのも私の義務である。

図 9.巣箱の入り口に足をかけて巣箱の中を覗く(のぞく)オス。色がきれいだ,保護云々・・・という前に,この個体が何をしているか考えてみたい。

図 10.V ターンするブッポウソウ。これは U ターンではなく,明らかに V ターンである。エサはくわえたままなので,中のヒナには与えていない。

図 11.V ターンして巣箱を離れるオス。今度はどこを見ているのだろうか?カメラを見ている感じがする。

図 12.カメラの目の前にある樹木の幹の上を歩いていたアマガエル。前肢の付き方はハ虫類に似ている。ブッポウソウばかりでは飽きてしまう。

図 13.水田の畔に降りたダイサギ。ブッポウソウは,サギやツバメが巣箱の近くを飛んでも全く反応しない。どうして反応しないのか?

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