生物多様性研究・教育プロジェクト 四季折々の自然の風景と野鳥 2023–No. 13: 近澤第一カメラで撮影できる限度

令和5年(2023)5月19日(金)

1.はじめに
今年はブッポウソウの出足が鈍かった。5月7日(日)には大雨が降り,風も強かった。悪天候が去ったあと,5月9日(火)と10日(水)に見たときには,どの地域もまだブッポウソウが来ている気配がなかった。5月1日とか2日にうちの巣箱に来たという話はよく聞いたが,来たのは一匹だけのところが多かったのではないだろうか?

 ブッポウソウのペアがいる巣箱は,有漢町や巨瀬町では5月15日(月)から,吉備中央町では5月17日(水)から目立つようになった。ペアが確認できた巣箱では,近づくとすぐに逃げてしまう個体がいたことや,巣箱を占有した(occupy)時に発する「ケッ・・・,ケッ・・・,ケッ・・・」という単発の音声は聞こえなかったことから,巣箱の近くにとまるペアは,巣箱に来たばかりと思われた。

 5月18日(木)に吉備中央町の上田西,上田東,細田,豊岡を回ったところ,多くの巣箱でペアがいることを確認した。しかし,巣箱を探し中のペアもいて,すでに占有されている巣箱に立ち寄っては,巣箱争奪合戦が繰り広げられていた。巣箱争奪合戦では,先に占拠しているペアの方が勝利する可能性が高いと(漠然と)予想した。

 ところで,産卵は例年だと,5月20日過ぎから始まる。最初の卵が生まれる期間は,例年は5月21日から6月4日の2週間がピークになる。今年(2023)は,5月17日から18日にかけて,やっと巣箱を確保したばかりのペアが多い気がする。今年(2023)は,産卵のピークが例年と比べて後ろにずれるか,非常に楽しみである。

 ブッポウソウついては,一目見たいという人たちが,都会から大勢訪れる。大勢の人たちは,ブッポウソウは簡単に撮影できると錯覚している。またそういう錯覚を誇大に宣伝する者もいる。ブッポウソウは,奈良公園のシカと違って,人里で子育てをするが,人には慣れていない。だから,撮影するには,まずブッポウソウについてカルト化していない知識を身に着けてほしい。そして,どうやったらブッポウソウの綺麗な写真が撮れるかを,ご自分の頭で考えていただきたい。

 どれだけきれいなブッポウソウが撮影できるかは,カメラの性能(performance)にかかっている。ここでは,近澤第一カメラで写るブッポウソウの姿を紹介したい。ここまでできたら80点をあげたい。

 今の時期は,ある一定の距離以内に近づくとすぐに逃げる。逃げると,当分戻ってこないことに十分に注意すること。地元の人たちの視線(ごく一部ではあるが・・・)があることも忘れてはいけない。

2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト常任理事)<撮影場所> 和中,上田西,上田東,細田。
<撮影日時> 令和5年(2023)5月18日。<Key words>徒歩の場合には50m以内はダメ。<記録機材> SONY RX10Ⅲ(近澤第1カメラ)。

図1.上田西にある小さな池。巣箱(R-05)は右の家のすぐ前にある。巣箱に出入りするブッポウソウは,近澤第一カメラでは黒い点にしか写らない。また電線にもよくとまるが,5月18日にはどこか別の場所にいた。電線までは50mあるが,ここは車の外に出ても逃げないことが多い。

図2.池の反対側の林にあるアカマツの枯れ木。ブッポウソウがよくとまっているが,ここにも見当たらない。後ろの巣箱はR-05。

図3.上田西で見かけたブッポウソウ。巣箱(σ-08 )までの距離は50m。被写体まで50mは限界の距離。一度逃げたら同じ場所には戻らない。

図4.魔の第一巣箱(H-30)のある林の中で,巣箱の争奪合戦があった。すでに占拠しているところに,新しいペアが通りがかり,発生した。

図5.巣箱争奪合戦で新しいペアを追い出し,電線にとまるブッポウソウ。近澤第一カメラは,被写体とその奥にある構造物までの距離がすごく近くなる。ブッポウソウから家屋までの距離は,実際には100mもある。Zeissのレンズの特性(property)なのかもしれない。

図6.追い出されたペアは,魔の第2巣箱(C-04)から10mの電線にとまっていた。被写体から50m以内では,ブッポウソウは車中からしか撮影できない。(すぐ逃げて戻らず。)逃げたペアは,魔の第3巣箱(A-07)の左向こうにある電線(60~70m)にとまった。これでは撮影は無理。

図7.魔の第2巣箱(C-04)から見た里山の景観。正面の奥には魔の第一巣箱(H-30)が見える。今年も首なし事件が起きるだろう。

図8.葉が白くなりだしたマタタビ。6月にかけてマタタビの葉が白くなる。花は,葉の根元につき,形態は茶の花に似ている。

図9.巣箱を確保したペアのブッポウソウ(他団体の巣箱)。巣箱の近くの電線にとまり,求愛給餌(courtship behavior)や交尾(copulation)を行う。車(軽トラ)の中から撮影(30m)。車の外に出ると,一瞬でどこかに逃げてしまう。近澤第一カメラ(SONY RX 10Ⅲ)で撮影できるのは,せいぜいこの大きさまでである。早い話,車の中からだと30m~40mの距離で撮影できるが,外に出たら即アウト。車の外に出る場合には50m以上離れる必要があるが,そうなると今度は,被写体(ブッポウソウ)は「黒い点」にしか写らない。この点をよく理解してほしい。

図10.和中の巣箱(WA-01)の近くにあるクリの立ち枯れ(40mの距離)。新しく来たメスは,私を見に来て自分の思い出の木にとまった。

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