ブッポウソウ総合情報センター・ニュース 四季折々の自然の風景と野鳥 No. 6:12月のエサ捕り風景

 令和3年12月14日(火)に,近澤峰男さんの奥様から電話をいただいた。この記事は,14日の週に書いて奥様にお知らせするつもりだった。しかし,原著論文の投稿が忙しくなって(rejectになったらすぐに次のジャーナルに投稿する作業が連続した。ちなみに,書いた論文が何度もrejectされることは,何ら恥じることではない。今はただ攻撃あるのみ。悪しからず・・・。)こうして記事の完成は10日間ほど伸びてしまった。

図1.須留ヶ峰(兵庫県養父市)の頂上(1,053m)に立つ近澤峰男さん。平成25年(2013)2月13日。(12月の写真は見つからなかった。)山頂付近はミズナラが優占種になっていると思われる。写真左側に見えるアカマツかクロマツの枝は,大雪か強風で折れて地上に落下したのだろう。撮影:近澤峰男。

 近澤峰男さんが撮影された写真の中で,ひときわ目を引くのは,野鳥の採餌風景である。図1の写真は,イソシギが川の浅瀬で何かエサをつついているところである。撮影場所は不明であるが,おそらく近澤さんのご自宅の近くの川で撮影されたのだろう。こんな浅瀬にいる生物は,カワムツの小さい個体かヨシノボリと見たが,真偽のほどは不明。

図1.川底をつつくイソシギ。平成27年(2015)12月31日撮影(近澤峰男)。場所は記載なし。近澤さんのご自宅の近くの川で撮影されたものだろう。

 12月だと相当気温が下がってくるだろうから,川でも海でも魚やカニの姿は少なくなると思う。川の浅瀬では,オイカワやカワムツの稚魚がいるかもしれないが,サワガニは川岸に穴を掘って冬眠しているはずである。水生昆虫はほぼ全部川底の石の下などで越冬しているだろう。フナやコイは冬でも活動するが,図1のような浅瀬には来ない。

 図1は,イソシギが川でエサを探しているか捕まえている風景であったが,図2は海岸でエサ捕りをしているカンムリカイツブリを示している。

図2.海の浅瀬で大きなハゼをゲットしたカンムリカイツブリ。平成27年(2015)12月13日。場所は不明だが,近澤さんのご自宅から近い明石市の海岸(瀬戸内海)であろう。1mもぐれば,良い餌にありつける。

図3.でっかいハゼを丸呑みにしたカンムリカイツブリ。エサの食べ方は,ヘビ類と全く同じように,バヒ・バヒ・・・とそのまま呑み込んでゆく。カニのハサミや体表にある鋭い棘で食道や嗉嚢(そのう)の壁が傷つき,出血することがあるだろうが,お構いなしに食べている。平成27年(2015)12月13日,海岸(恐らく明石市の海岸)で撮影(近澤峰男)。ブッポウソウのぴよ吉も,トンボはいいが,甲虫類を食べさせるとすぐに血便を出す。部屋の中をあちこち血便で汚されると嫌なので,ぴよ吉には完全に人間と同じものを食べさせている。サンドイッチの具となるハムや,ゆで卵のマヨネーズ和え,それに煮魚・焼き魚など,自分の食べた残り物を与えている。ぴよ吉の方は,今日も朝から頭の上を行ったり来たりして元気にしている。

図4.海岸で捕獲したカニをくわえるズグロカモメ。くわえているのは,モクズガニの小さな個体か?ズグロカモメという割には,頭部の羽毛は真っ白である。夏になると黒くなるのだろうか?平成27年(2015)12月7日(近澤峰男)。撮影場所不明。

 海岸の方は,干潟にいるハクセンシオマネキや砂ガニ類は,12月はすでに穴に入って稲門状態になる個体が多いだろう。ガザミやイシガニはおそらく水温の上下が少ない深いところに移動して越冬すると思われる。アカテガニ,ベンケイガニ,クロベンケイガニは,河口の土手に作られた穴に入って冬眠しているだろう。岩礁海岸の潮間帯にいるイソガニも,12月には大きな石の下に入って集団で越冬しているように思われる。

図5.川の浅瀬でカニをゲット。写真を拡大するとハサミの部分に毛(setaでいいのか?)の塊が見られるので,モクズガニで間違いないだろう。平成27年(2015)12月9日撮影(近澤峰男)。場所不明。

図6.捕まえたカニをくわえて海の上を飛ぶズグロカモメ。写真を拡大するとモクズガニではなく,ヤマトオサガニのようにも見えるが・・・(図7を参照)。平成27年12月13日(近澤峰男)。

 となると,潮間帯(intertidal zone)に残るカニ類は,ヒライソガニやモクズガニ,ヤマトホンヤドカリが有力な候補になる。まず図4で,ズグロカモメがくわえているのは,モクズガニではないだろうか。餌場は海岸である。図5は,川で撮影された写真である。ひっくり返しにくわえられているカニも,モクズガニと見た。図6は,カニをくわえて飛行中のズグロカモメであるが,くわえているのはモクズガニではなくヤマトオサガニのように見える。しかし,ヤマトオサガニは泥干潟に生息し,砂礫(されき)浜の海岸には分布しない。

図7.カニをくわえて飛行中のズグロカモメ(拡大写真)。捕まえたのはヤマトオサガニか?近くの泥干潟でとって,この浜に飛んできたかもしれない。鳥の翼は,胸部背面に近いところから出ている。セスナや水上飛行機と同じタイプである。小型の野鳥が低速で飛行するときには,胴体の腹側から翼が出ている戦闘機やジェット機に比べて,飛行のバランスがとりやすくなるだろう。飛行中は,多くの野鳥が足を腹部に密着させている。この個体は,足を立てているので着水間近と思われる。平成27年12月13日(近澤峰男)。

 結局,カニは専門のはずなのだが,捕獲されていると種類がよくわからない。この記事を読まれた方々には大変申し訳なく思う。なお,ヤドカリは,日本ではカニ類(Brachyura)とは別の十脚甲殻類とみなされているが,英語ではHermit crab, つまりカニの仲間(隠者ガニ)である。

 近澤峰男さんの写真を見ると,多くの野鳥は,種固有の行動や習性を駆使して懸命に生きていることがわかる。近澤さんの写真を見ていると,私には生きる力が湧いてくる。

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