令和5年(2023)6月23日(金)
1.はじめに(Introduction)
「ブッポウソウ・教育教材展示会」のテキスト作りのために,「四季折々の自然の風景と野鳥」の記事の配信が遅れている。ブッポウソウの記事は,できる限り,リアルタイムに近いタイミングで配信したい。
自然の風景は,時間とともに変わりゆく「今」を描写すれば,より現実感(実感)がわいてくるように思える。もちろん,過去のできごとであっても,過去の中の「今」や「変化」を描写することによって,現実感をつかむことができるだろう。
6月7日(水)は,和中を出てから湯山,納地を回り,賀陽に出た。スーパー(キョーエイ賀陽店)で昼食を買ったあと,県道78号を通って巨瀬町に入った。巨瀬町では,今やブッポウソウの個体群密度(population density)が増加し,今年(2023)には設置した巣箱すべてが使われている。地形の起伏が大きく,ブッポウソウの撮影には絶好の場所が多い。しかし,巨瀬町や有漢町には狭隘で急峻な山道が多く,四駆の軽自動車でないと通行できないところが多い。
巨瀬町と川面町の境にH-14の巣箱がある。もとは吉備中央町の天福寺の下の道の脇にあった巣箱であるが,オオアカゲラに側面に大穴をあけられてから,降ろして修理する過程でこの場所に移設された。
H-14がある場所は,車は軽トラぐらいしか通らないだろう。しかも,この道を通る軽トラは,1日にせいぜい1台か2台と思われる。私が小道を下りてきたときに,ブッポウソウの面白い求愛行動(courtship behavior)を観察した。
求愛行動と言えば,求愛給餌(courtship feeding)が定番だ。しかし,このペアは,離れたヒノキの上にとまり,それぞれ昆虫を捕ってはまた離れた木の上にとまり,自分で自分の捕ったエサを食べていた。野鳥の場合には,同じ目的でも,どんな行動様式で目的を達成するかに関して,想像以上に大きなバリエーションがあると思われる。
2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト)
<撮影場所> 巨瀬町(巣箱H-14)。<撮影日時> 令和5年(2023)6月7日(水)。
<Key words> ブッポウソウ,求愛行動(courtship behavior),「ホー,豆の木」と鳴くウグイス。
<記録機材> Canon EOS 7D Mark II with Canon 600 mm レンズ(近澤第2カメラ);SONY Video Camera (HER-CX680)
<参考文献>
Mayntz, M. (2022) The bird mating dance and other courtship behaviors. The Spruce. (https://www.thespruce.com/bird-courtship-behavior-386714)
図1.ブッポウソウの求愛行動を観察した場所。2時間近くいたが,車は全く通らなかった。ヒノキまで100mぐらい。アカシジミがいた。
図2.ヒノキの上にとまるブッポウソウ。この個体はメスだろう。近づくと逃げてしまうと思い,できる限り遠くから撮影した。
図3.ヒノキのてっぺんから飛び立つブッポウソウ。遠くからの撮影には,近澤第2カメラは有効である。しかし,ものすごく高価である。
図4.エサを捕り,くちばしにくわえて旋回しながらヒノキに戻ったブッポウソウ(メス)もう捕まえたエサは食べてしまったかもしれない。
図5.旋回してヒノキのてっぺんをめざすオス。とまるヒノキは決まっていなかった。
図6.とまっていたヒノキのてっぺんに戻るオス。このフライトでは,同じ木に戻った。昆虫をくわえているかは,この写真ではわからない。
図7.着地(着木)寸前のオス。飛行機で言えば,着陸前に車輪を出したところ。ブッポウソウの足は木につかまるために前に出ている。
図8.ヒノキのてっぺんにとまるオス。「おーとっとっとっ・・・」みたいな感じ。
図9.再び出撃したオス。昆虫の位置は両眼でとらえているのだろう。ブッポウソウは両眼視(binocular vision)もできる。
図10.ヒノキのてっぺんを離れるブッポウソウ。翼の白紋の幅から,メスではなかろうか?
図11.元の木に戻るブッポウソウ。雰囲気としてはメス。求愛行動の最中は,オス・メスともに鳴き声は出さなかった。
図12.待機するブッポ。写真は図1から図11までセットになって物語(作品)が生まれる。近澤峰男さんはただ一人の理解者であった。