令和5年(2023)6月5日(月)
1.はじめに
現在私が使っているカメラ(現役のもの)は,全部で10種類近くあるだろうか。これらのうち,近澤第一カメラ(SONY RX10Ⅲ)は,近澤さんがお亡くなりになる直前にご本人から直接お借りした。もうひとつの近澤第2カメラ(Canon EOS 7D Mark ⅡとCanon 600mm 短焦点レンズ)は,近澤さんがお亡くなりになった後に,奥様からお借りすることができた。私にはこんな高級なカメラを買えるだけの(金銭的)余裕がないので,この2台は私の研究・教育活動を進めるうえで重要な役割を演じる結果となった。
近澤さんに2台のカメラをお借りする前は,どうやったらあんなにきれいなブッポウソウの写真が撮れるのか,不思議でならなかった。きれいな写真を提供していただける人たちは少なく,トラブルも多い。しかも写真はただ「きれい」なだけで,いつ,どんな行動のシーンを撮影したのかわからず,研究や教育に役立たせることは難しかった。
このような事情もあって,写真家と称する人たちの集団には違和感を持つことになった。これは,写真家の世界だけではなく,私が関係する分類学,生態学,行動学などの研究分野でも同じであった。要するに,私はどこに行っても,大体「村八分」になる。そんな性格は持って生まれたものだから,特に悲観はしていない。被害妄想もない。
それでも,きれいな写真が手に入らない頃は,教育活動に支障をきたした。数年前に近澤さんからカメラを借りてから,好きな時間に(つまり動物の生活に合わせて)写真を撮ることが可能になった。近澤第1カメラと近澤第2カメラを使い,多くのブッポウソウの写真を撮ってきた。結果として分かったことは,写真は技術ではなく,カメラの種類とチャンスにかかっているというごく単純なことであった。
2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト)
<撮影場所> 湯山 D-11(吉備中央町)。
<撮影日時> 令和5年(2023)6月3日(土)。
<Key words> 写真家に対する違和感,近澤峰男さん,近澤第1カメラ,近澤第2カメラ,ブッポウソウ,求愛給餌(courtship behavior),
<記録機材> Canon EOS 7D with TAMRON Zoom Lens (28-300mm); 近澤第2カメラ(Canon EOS 7D Mark II with Canon 600 mm レンズ);
CASIO Exilim。なお,写真について一切編集(editing)は行っていない。また,記録機材や撮影日時の記述がない写真は研究に利用できない。
<参考文献> Newton, I. 1998. Population Limitation in Birds. Academic Press.
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図1.巣箱D-11と近くにいるブッポウソウのオス。大きな電柱の一番上の電線,電柱に向かって右側2mのところにとまっている。距離30m。
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図2.電線の上にとまるブッポウソウのオス。ES 7D with TAMRON Zoom Lens (28-300mm)で撮影。ズームは最大(300mm)。
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図3.D-11の巣箱の中。メスが産卵を始めている。6月3日に最初の卵が産まれるだろう。その後1日おきに全部で4つか5つの卵を産む。
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図4.ペアで電線にとまるブッポウソウ。メスは,巣箱から出るとすぐにオスのいる方向に飛んで行き,すぐ近くにとまった。
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図5.電線を飛び立つオス。オスの眼は飛んでいる昆虫を追っている。写真を拡大すると,何をしているのか全く分からなくなる。
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図6.エサ(飛んでいる昆虫)を捕獲するために電線を飛び立ったオス。やはり眼は飛んでいる昆虫を追っている。
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図7.昆虫を捕まえてメスのところに戻ってきたオス。メスはじっとオスの方を向いている。背景の「光」が丸くなるのが面白い。
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図8.求愛給餌(courtship behavior)。オス(右)がメス(左)に昆虫を口移しで与える。昆虫を受け取る時には頭を傾ける。声は全く発しない。
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図9.昆虫を捕まえて電線に戻ってきたオス。「よっこらしょ!」みたいな感じだ。こういうシーンはなかなか撮影できない。
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図10.昆虫を持って電線につかまろうとするオス。メスはどこを見ているか不明。拡大すると何が起きているのかわからなくなる。
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図11.オスの求愛給餌を拒否するメス。オスは積極的だが,メスの方は体が引いているのがよくわかる。求愛給餌は失敗。
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図12.メスの逃避。求愛給餌を拒否して電線を飛び立ち,50mぐらい離れたアカメガシワの枝にとまった。交尾の催促でもなさそうだ。