生物多様性研究・教育プロジェクト 四季折々の自然の風景と野鳥 2023–No. 8: シジュウカラは自分の巣を守れるか?

令和5年(2023)5月4日(木)

1.はじめに
 5月に入った途端に,里山ではブッポウソウの姿が急に増えてきた。5月3日(水)は,和中(吉備中央町)の多様性プロジェクトの基地内にある巣箱(ヤマガラが子育てをしている)を見た後に,奥吉備街道を通って高梁市有漢町に行った。有漢町では,ヤマガラやシジュウカラが子育てをしている巣箱を中心に見て回った。

 前日の5月2日(火)は,有漢町ではブッポウソウが鳴き始めた。シジュウカラやヤマガラが子育てをしている巣箱では,半数以上に巣箱では,ヒナはまだ元気に育っていた。親鳥も頻繁にエサ(鱗翅目の幼虫が多い)をやりに来ていた。一方,いくつかの巣箱では,卵やヒナが外に放り出されて,ブッポウソウの産卵床に変えられているところがあった。

 ブッポウソウが,いつからシジュウカラやヤマガラの巣を荒らし始めるかわからない。早く繁殖地に飛来する個体は,おそらく4月下旬から荒らしているのだろう。ただ,4月下旬は,巣箱の近くのアカマツの枯れ木(snag)やヒノキのてっぺんにはとまっていない。5月に入った途端に,姿を現し始める。

 すでに子育てをする巣箱を決めているペアがいるところは,巣箱に近づくと,「ケッ・・・,ケッ・・・,ケッ・・・」という警戒鳴きが聞こえてくる。攻撃的な感じのする音声ではない。5月上旬には,巣箱をめぐる激しい攻撃行動は発現していない。5月上旬までは,ブッポウソウの各個体は,まだお互いにfriendlyである。

 シジュウカラやヤマガラは,今ヒナがふ化し,エサやり真最中である。シジュウカラやヤマガラが,ブッポウソウの巣荒らしから,自分たちの巣を守れるか,1週間以内に結論が出るだろう。

2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究教育プロジェクト常任理事)
<撮影場所> 高梁市有漢町上有漢と「有漢どん詰まり」周辺。<撮影日時> 令和5年(2023)5月3日。
<Key words> シジュウカラ,ヒナ,ブッポウソウ,巣荒らし,5月3日。
<記録機材> SONY RX10Ⅲ(カメラ),SONY Handycam HDR-CX 680(ビデオカメラ),SONY リニアPCMLレコーダー
<参考文献>
真貝秀広(2014)インパール作戦従軍記。光人社NF文庫。
森田勇造(2018)チンドウィン川紀行:インパール作戦の残像。三和書籍。

図1.晴天の空にかかった虹(?)。太陽光が,異なった気流で屈折し,虹のようになったのだろうか?高梁市上有漢。

図2.ヒノキのてっぺんにとまるブッポウソウ。ペアの片方は,近くを飛んでいるか,近くの樹にとまっている。L-07を使う個体。

図3.アカマツの枯れ枝(snag)にとまるブッポウソウのペア。時々飛んでは戻ってくる。L-05かL-06を使うと思う。

図3.アカマツの枯れ枝にとまるブッポウソウ。L-03を使うだろう。ケッ・・・,ケッ・・・という警戒音を発している。

図4.シジュウカラの子育てと四角錐の墓。シジュウカラの観察頻度を上げると,ブッポウソウの産卵を遅くできないか,調査中。

図5.四角錐の墓。「昭和19年7月13日,ビルマにおいて戦死。陸軍兵長 大石正志。行年三十四才」とある。インパール作戦の引き上げの際に戦死された可能性が高い。10m左側にM-05の巣箱がある。ブッポウソウの姿はまだ見えない(5月3日)。

図6.シジュウカラのヒナ。M-05の巣箱。ヒナは8匹。シジュウカラのヒナの観察頻度を高めると,ブッポウソウの巣箱荒らしが抑制し,産卵の時期が1週間遅れることはないだろうか?あと3~4日で羽毛が生える。そしたらブッポウソウも遠慮するかもしれない。

図 7.M-08 の巣箱(有漢町)。

図 8.「有漢どん詰まり」にある美 3 の巣箱。美 3 は,G-10 が壊れたので,美原の巣箱を持ってきた。

図9.M-08の巣箱の内部。シジュウカラがコケを運んで作った産卵床は,ブッポウソウが入って荒らしてしまった。卵もなくなっている。

図10.美3の巣箱の内部。産卵床はブッポウソウに壊されている。中に卵が3つ残っているが,すぐになくなるだろう。親も近くにいない。

図 11.有漢町にある L-07 の巣箱。

図 12.L-07 の巣箱の内部。親が産卵床にいるが,左下にはブッポウソウに殺されたシジュウカラのヒナが見える。残酷なシーンではあるが,この写真(図 12)は,野鳥の習性に関する重要な情報を提供しているかもしれない。

図 13.B-12 の巣箱。シジュウカラのヒナ 4 匹は成長している(5 月 3 日)。ブッポウソウは 5 月 4 日に現れた。さて,ヒナはどうなるだろうか? 図 12 と違って,ヒナは羽毛が生えかけている。

図14.ヒナの防御行動(B-12)。ヒナの「エサくれコール」は,親の警戒コールで一斉に止む。「エサくれコール」が止まるのは,大きな意味があるか長い間わからなかった。親が「えさくれコール」を認識している(cognize)ということは,他の鳥(例えばブッポウソウ)やアオダイショウ(捕食者)もそれを「ヒナが発する鳴き声」として認識している可能性が高い。その証拠集めをしてゆく必要がある。

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