生物多様性研究・教育プロジェクト 四季折々の自然の風景と野鳥 2023–No. 7: 東の方向に飛んで行くブッポウソウのペアを確認

令和5年(2023)5月1日(月)

1.はじめに
 4月28日(金)は,吉備中央町の岨谷(すわたに)から大和と西を通り,県道78号をずっと進み,巨瀬町(こせちょう)に抜けた。多様性プロジェクトの巣箱は,巨瀬町一帯と川面町(かわもちょう)の一部にもたくさん掛けてある。

 巨瀬町には,風光明媚な田園風景が広がり,珍しい野鳥が昆虫類いる。美しい草花や樹木があり,それらを育む自然の風景と,その中で生きる人々の生活を見ることができる。私は,珍しい物(希少性の高い生物)それ自体には,大きな興味はない。自然環境という限られた空間(space)の中で,多くの種(species)がどのような生き方でそれぞれの道を歩んでいるのか,そこに大きな興味がある。時には,種内競争(intraspecific competition)であったり,時には種間競争(interspecific competition)であったり,時には協調(cooperation)であったりと・・・。それらの力(エネルギー)が創造する多様な自然環境に接することは,私の人生の中で最も楽しい夢を見る瞬間でもある。

 現実の世界に戻ろう。巨瀬町には美しい里山があるが,多くの観光客に訪れてほしくはない。なぜかというと,岡山自動車道の東側(吉備中央町)には各所に公共のトイレがあるが,東側の巨瀬町や中井町にはほとんどないから・・・。巨瀬町や中井町は,岡山市や倉敷市から1時間少々で行ける。一度にたくさん観光客が訪れたら,多くの里山はパニックに陥る。全国から訪れる多くの人たちは,ブッポウソウの観察には大きな問題(主にはトイレと駐車場の問題)があることをよく理解していない。

 ブッポウソウの分布拡大に関しては,私は2015年から研究を続けてきた。現在(2023年)では,吉備中央町だけでなく,高梁市巨瀬町や川面町,新見市北房町,美咲町江与味でも個体数は飛躍的に増加している。素晴らしい撮影場所もたくさんあるが,いまのところ,近澤峰男さんのような方でないと,巣箱の詳しい場所は教えることができない。それは上記の問題がまだ解決できていないからである。

2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行(生物多様性研究教育プロジェクト常任理事)
<撮影場所と撮影日時> 高梁市巨瀬町と川面町。令和5年(2023)4月28日(木)。
<撮影機材> SONY RX10Ⅲ。<key words> 4月28日,ブッポウソウ,高梁市巨瀬町と川面町,トイレ問題,ホウノキ,初夏の里山。
<参考文献>加瀬友喜(2010)熱帯西太平洋の新生代貝類の古生物研究:第2弾(ビカリアの多様性を探る)(https://www.kahaku.go.jp/research/researcher/my_research/geology/kase/index_vol2.html)

図1.高梁市川面町にある里山の田園風景。正面の電柱に巣箱(N-01)が掛けてある。この巣箱では2年連続で卵が6つも生まれている。

図2.ここで東の方向(吉備中央町がある)に飛んでゆくブッポウソウのペアを見た。うちの巣箱を使っているペアだったらと想うと,楽しい気分になる。私はこんなところをうろうろするのが大好きであるが,不審人物と間違われるリスクは高い。人を見かけたら声をかけるのがよい。

図3.道沿いの休憩所に建てられた案内(中国自然歩道の案内所)。こういう看板をつけるのは,岡山県にしても環境省にしても,多くの人に自然を体験してほしいからだろう。一方で,この場所に観光に来る人たちの数が増加したら,地元から看板撤去の要請が出るだろう。

図4.ビカリアの産地。具体的な場所は示されていない。ブッポウソウみたいにして宣伝すれば,いっぱい人が来て盗掘に会い,散々汚される。

図5.新生代における時代区分。Mya(million years)は100年を示す。10 Myaは1,000万年前ということ。1,500万年前というと,新生代の新第三期の中新世の中頃にあたる。
 ビカリヤについては,インターネットに多くの記事が出ているので,この場所(図4)に来る前日か,家に帰ってからでもよいので調べてみてはいかがだろうか?
 まずはWikipediaで大雑把な情報を得てから,詳しいことが知りたければ他の文献も多数見つかる。インターネットが発達してから,人間は短時間で膨大な量の(正確な)情報を手に入れることができるようになった。私が今でも原著論文を書き続けられるのは,インターネットの発達によるところが多い。
 ビカリヤは巻貝(snail)の一種で,最も古い化石は古生代から出土していると思う。実際にどこで採集できるかは,何度も訪れて周辺の地層をくまなく探せばよい。(採集は禁止になっているところも多い。)ただし,そんなに「お宝感」があるという代物ではない。地味な巻貝という感じである。いくつかミュージアムがあるので,そこを訪れ,どんな生物かを知る方が,採集するよりもメリットは大きい。
 図5は,どこかの文献を見て私が描いた原図である。文献に出ている図(original figure)を丸ごと転載すると問題になる可能性がある。そういう時には,ちょっと面倒ではあるが,描き直すことで対応できる。絵画でも,贋作(がんさく)には(贋作をした)画家の氏名が入れば,問題にならないのではないか?贋作であることを明示すれば,普通は売っても儲けはない。

図6.高梁市川面町(巨瀬町かもしれない)。巣箱は左側の電柱と正面奥の電柱にかけてある。このあたりの人たちはfriendlyである。

図7.高梁市巨瀬町にある段々田んぼ(整備が大変)。右の電柱には巣箱が掛けてあり,正面の電柱のてっぺんにはサシバが止まっている。

図8.サシバ。歯学部の学生にサシバという鳥がいることを話したら笑い転げていた。SONY RX10Ⅲを使用(図7を拡大した)。

図9.ホウノキの花と葉。高梁市巨瀬町。私が育った田舎(静岡県伊豆市)では,5月になると柏餅をホウノキの葉で包んでいた。

図10.ホウノキの葉。支脈がよく見える。若葉を後食(こうしょく)するカミキリムシは,葉裏を見ながら採集できる。

図11.駒ノ尾山頂に立つ近澤峰男さん。ブッポウソウの巣箱情報は,近澤さんのような方々には積極的に公開し,利用していただくことにした。

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