生物多様性研究・教育プロジェクト Internet Photo-Exhibition of Wild Animals(インターネット野生生物写真展) 2023–No. 7 ブッポウソウ・教育教材展示会のお知らせ

令和5年(2023)3月31日(金)

1.はじめに
 写真展というと,どこかの施設の一室を借り,高額なレンズをつけた高額なカメラで撮影した画像をプリントし,それらを額に入れて壁につるすという方法が一般的であった。インターネットがまだ十分に発達せず,高額なカメラで撮影した画像と,テレビやデスクトップパソコンのモニター画面に映る画像のresolution(解像度)に大きな差があるころは,どこかの施設の一室を借りて写真展をする意義は大きかっただろう。

 写真の技術は,フォトグラフが世に出回り始めたころに,急速に進歩した。太平洋戦争の前に撮影された写真でも,モノクロではあるが,素晴らしくきれいな写真も多かった。ただし,このころはresolution(解像度)が良くなかったので,被写体の特性をうまく利用してきれいな写真を撮ったということである。

 ちょうど太平洋戦争の初期に,99艦爆(太平洋戦争で使われた急降下爆撃機)が大きな戦果を挙げたのとよく似ている。この爆撃機の脚は,折り畳み式ではなく固定式であった。爆撃機(艦上爆撃機)の性能としては,それほど優れたものではなかったにもかかわらず,大きな戦果を挙げられたのは,パイロットの操縦技術が優れていたことと,パイロット同士の連携がうまく取れていたことである。ちょうど同じ時期に開発されたカメラの事情とよく似ている。機器類の性能を,人の「熟練した技術」が補う時代だったと言えるだろう

 太平洋戦争後は,一般の家庭にもテレビ(動画)が導入され,高度成長期と相まって,瞬く間に日本中のお茶の間に広がっていった。しかし,1960年前後の動画のresolutionは,モノクロ・カラーを含めて相当に荒い画像(poor resolution image)だった。いまYouTubeで「コンバット」の初回から最終回(第152話)まで視聴できる。団塊世代の方々は,もう一度見ていただければ,幼少時のご自分の姿が頭に浮かんでくるだろう。コンバットの画像は荒いが,毎回のストーリーは面白い。ヘンリー少尉が,いつの間にかドイツ軍の将校として出演していたことなんか,すごく面白い。

 でも,少年時代に感じた興奮は,蘇らなかった。進撃の巨人の方がずっと興奮するのはどうしてなのだろうか?もし今(2023年)コンバットが世に出て,逆に進撃の巨人が1960年に発表されていたら,ともにヒットしなかったのではなかろうか?

 人の社会には,それぞれの時代にマッチする音楽,芸能,科学がある。生物の進化(evolution)についても人の社会と同じことが言えそうである。つまり,生物の生活する環境は,時代とともに少しずつ,しかし必ず変化している。環境が変化することにより,生物の世界では,その時代にマッチする生物(例えば恐竜や哺乳類)が出現するだろう。そして,人の社会も生物の社会も,いったん新しい生活様式が定着すると,2度と古い様式に戻ることはない。

 カラーの写真技術(photographic technology)については,西暦2000年(平成12年)までにほぼ完成していたと思われる。問題は,写真技術を,相前後して発達したインターネット環境に組み込むのに時間がかかった,ということである。だから,2000年過ぎから20年近くの期間は,インターネットやテレビで見る写真よりも,どこかの施設の一角で開催される写真展の方が,ずっと優位な立場にあっただろう。

 テレビやインターネットで見られる画像のresolutionは,ここ20年間で飛躍的に進化した。私は結構な貧乏人なので,現在使用している機器類のほとんどが,中古品・もらい物・拾い物である。自家用車は中古(さすがに軽トラだけは5年前に新品を購入した。軽トラの中古は値段が高いし,絶対使いたくない。),カメラ(Canon EOS7D)も中古。パソコンとモニターに関しては,すべてもらい物で構成されている。私の教育・研究には,そんな機器類でも全く支障はない。もちろん研究には,高額な先端機器類が必要になるが,そういう研究はその筋の方々にお願いし,私はお金がなくても済む方面を分担している。

 パソコンの方は,2000年より前に製造された機種(Windows VistaとかXPあたりが入った機種)は,さすがに時代遅れとなっているが,2000年より後に製造されたパソコン(Windows XPとか7が入っている)は,再生すれば十分に使用可能である。私は,そういう類のパソコン(DELLがいいかも・・・)をもらってきては再生して使っている。再生したパソコンには,Windows 7,8.1,10が問題なくインストールできる。パソコンの性能自体は,ここ20年間は大きな仕様変更はない感じがする。データの処理速度の違いはあるだろうが,最新の機種にこだわる必要はないだろう。      

 デジタル時代に入って,パソコンやスマホで見られる映像の質(quality)もまた飛躍的に向上した。私は今までMITSUBISHI製とかIO・DATA製の横と縦の比率が1.26(38cm ):1(30cm)のモニターを使ってきた。このタイプのモニターは,論文を書くときに使い勝手が良いということで購入した。一方,横長(例えば47cm×30cm)のモニターは,原稿を書くには使い勝手がよくないという「うわさ」を信じて,長いこと使ってこなかった。

 ほんの2~3週間前のことになるが,あるところからEIZO製のモニターのお古を5つもらってきた。そのうち2つのモニターは,RGB端子があったので,パソコンに接続してモニターの性能をテストした。結果,EIZOのモニターは,従来使ってきたタイプのモニターより映像の画質が優れていることに気づいた(図1から図4)。文字(letters)も十分に鮮明だった。20年前は,こんなに荒い画像(図5)も,今ではこんなに鮮明になっている(図6)。

 ワードは全画面サイズで使えるので,この記事を書いている際にも違和感はない。それどころか,今まで使っていたモニターよりも使い勝手が良いことが判明した。画面は机から高い位置にあるので,姿勢もよくなった。動画も全画面サイズで表示できるので,画面の面積の割には迫力ある映像が期待できる(図7)。ただし,これは私の使っているモニターの解像度の問題なので,皆様にお届けするこの記事の画像には,私の方で改善された状況は全く反映されていない。

 いずれにせよ,今では静止画(写真)の場合には,ファイルはパソコンを通じてハード・ディスクに保管しておけば,いつでも再生できる。わざわざ吉備中央町に行かずとも,自宅に置いてあるパソコンを使えば,好きな時間に好きな写真を全画面で見ることができるだろう。しかも,画像のresolutionに関しては,20年前(図5)とは比較にならぬほど向上している。各地の写真展が下火になっているのも,こうした理由があるからだろう。

 ・・・ということで,今後記事を書く時にも,論文を執筆する時にも,やや古いパソコン(Windows 10を入れている)と,もらったEIZOのモニターを使うことに決めた。古いモニターの方は,吉備中央町でブッポウソウの行動(特に巣箱の中でのエサやり行動)をモニターして楽しむ人たちが増えてきたので,録画装置(recorder)にRGBケーブルで接続して使っていただくことになるだろう。

 ここまで詳細に書いてくると,ブッポウソウの撮影と画像の再生は大変うまくいっているように見えるが,実は大きな問題が生じていた。静止画像と異なり,動画(図5と6)の方は,ファイル・サイズが著しく大きくなる(たとえば100MB)。添付ファイルにしてEメールで簡単に送るという訳には行かない。私とメールを受け取る方々とのコミュニケーションは,ファイル・サイズで言うと8 MBが限界である。動画を展示する場合には,ご覧になりたい方々は,ご足労でも会場(吉備中央町)に来ていただかねばならないだろう。

 問題はもう一つある。ブッポウソウの行動観察で得られた記録を公開するためには,ビデオ映像の編集(editing)が必要になる。日本製の録画機器を使って撮影した映像は,割に容易に再生できるが,外国製(中国製が圧倒的に多い)のレコーダーの場合には,コピーは容易にできるが,記録した画像を開くことが難しい。(日本製は値段が高い。)ファイルを開くソフトが数多く開発されていて,どれを使えばファイルを開けるのか,プロフェッショナルでも難しい。残念ながら,私はこの方法はもうあきらめている。

 では何か方法があるか?画像は少しだけ荒くなるかも知れないが,手はある(図7)。展示会参加者は,各自で工夫して,面白い視聴覚教材を作成していただきたい。教材の作成の対象(object)は,ブッポウソウに限らない。里山の自然,人々の生活,営利を目的としない環境保護活動等を広く取り上げたい。目標は,各自のオリジナリティーを駆使して作成した視聴覚教材を,会場にお越しいただいた方々に目に見える形,耳に聞こえる形で提示することにある。中山良二さんらの実施する写真展とは,目的(aim)・展望(scope)・方法(methods)・ゴール(goal)すべてにおいて異なっていると思うが,そういうことを嫌う方々も多いことは承知している。古いスタイルに沿って実施するイベントの方が良いと思う方々は,そちらの方面を訪れた方がよい。

 私が吉備中央町でブッポウソウの研究を始めたとき,野鳥の行動や繁殖を調べるために,いくつかの巣箱の内外にビデオカメラを取り付けた(図5)。本来は研究目的で設置したビデオカメラであるが,同様なやり方でブッポウソウを楽しみたいという地元の人たちの数が増加した。現在は10軒近くになっているだろう。一方,吉備中央町においでの方々は,巣箱にビデオカメラを設置していったい何をしているのだろうか,いぶかる方々も少なくない。

 私の想いは,ブッポウソウの行動をモニターする機器類を使って,自分だけが楽しむ(得をする)のではなく,得られた結果を,岡山県をはじめとして全国の野鳥と自然を愛する人たちのために紹介してほしいということである(図8と9)。

ブッポウソウや自然環境の成り立ちに関する教育教材の開発を通じて,私たちの試みを広く発信するために,「吉備中央町ブッポウソウ会」のご協力を仰いで展示会を企画した。土曜日と日曜日には,担当者が配置される予定である。会場にお出でいただき,担当者と直接話をする機会があれば,各ブースの担当者は大変喜んで下さるだろう。

2.教育教材展示会に関する基礎情報

<展示会場と展示ブース>
1) 第1会場(インターネット)
 生物多様性研究・教育プロジェクトのホーム・ページ(https://biodiv-p.or.jp)に掲載されている記事は,以下のジャンルに分類される。
     
 ・四季折々の自然の風景と野鳥(2023)(近澤峰男さん追悼写真集)
 ・ブッポウソウ子育てカレンダー(2023)
 ・攻撃と防御の十脚甲殻類(2023) 
 ・サンゴ礁とサンゴ礁原(2023) 
 ・インターネット野生生物写真展(2023)

 上記の項目の中で,ブッポウソウ子育てカレンダー(2023)インターネット野生生物写真展(2023)が,教育教材作成展示会の展示品に対応している。Googleかyahooで「ブッポウソウ子育てカレンダー(2023)」と「インターネット野生生物写真展(2023)」を入力して検索すれば,ご自分が視聴したい記事を見ることができる。ホームページから検索することも可能。記事は,吉備中央町協働推進課にも送っているので,不明な点があれば,そちらに問い合わせることが可能である。例えば,第3会場はどこにあるかとか・・・。ただし,記事をプリントして送れという依頼には対応できない。
 第1会場における展示会は,すでに始まっている。インターネット野生生物写真展(2023)の方は,現在No. 6まで出版されている。

2)第2会場(未定;吉備高原プラザ)
・大塚夫妻,小虎夫妻,および豊野・婦人会(?)ブース(Booth)
 ブッポウソウの子育ての動画。
 関連グッズの展示と販売(詳細は後ほど)。

・黒瀬歯科ブース
 ブッポウソウを始めとした野鳥の写真。ブッポウソウの子育ての動画。

・綱島ブース
 綱島宅のブッポウソウの親とヒナの写真,ビデオ画像などを展示。
 中山良二さんの作成した野生動物の置物。

・佐々木家族ブース
 ブッポウソウの子育て映像。動画も。
 佐々木氏宅の巣箱では「ぴよ吉」が育った。その時の画像も展示できるだろう。

・難波夫妻ブース
 ヘビにヒナが吞まれる動画など。

・近澤・三枝ブース
 近澤峰男さんが作成したブッポウソウやクワガタムシの木彫り。
 巣箱内におけるシジュウカラの(巣箱の乗っ取りに対する)防衛行動(動画)。
 ブッポウソウのさえずりや求愛給餌(動画)。
 攻撃と防御の十脚甲殻類(2023)(図6の動画)やサンゴ礁とサンゴ礁原(2023)も展示する。

3) 第3会場(美原集落センター)
 担当:日名義人・中堀清。
 美原集落センターの前の巣箱の中の映像がリアルタイムで見られる。
 ブッポウソウのエサ運び行動を集落センターの庭から見ることができる。
 日名義人さんによるブッポウソウの子育て行動の解説がある。

4)第4会場(円城道の駅)
 担当:日名義人・中堀清・吉備中央町協働推進課(斎藤)。
 第4会場には,人(担当者)は配置しない。
 リアルタイムのビデオ映像(美原集落センターの巣箱内部)のみ。

5)第5会場(賀陽道の駅)
  担当:吉備中央町協働推進課(斎藤)。
  第5会場にも,人(担当者)は配置しない。
 リアルタイムのビデオ映像(巣箱内部)のみ。

<展示会の総責任者>
  展示会委員長:三枝誠行(生物多様性研究・教育プロジェクト,常任理事)
 展示会副委員長:綱島恭治(吉備中央町ブッポウソウ会,会長)

<展示会日程>
 6月下旬から7月上旬の1週間

 (詳細は後ほど,インターネットを通じて連絡する。)

<展示方法>
パソコンとモニターを利用。なお,展示機器類はすべて中古品(いわゆるお古)をリニューアルしている。お金をかけずに実施する。(出してくれるところはない。)修理した中古機材を使って実施するので,見苦しい点は多々あるだろうが,事情を斟酌してご容赦願いたい。

<教育教材作成のための条件>
1) 教材作成には,ブッポウソウに限らず,教材作成者が直接撮影するか,作成者の使う巣箱で得られた映像を使用する。
2) 第3者(ブース設置に関わらない方々,特に写真家を自称する人たち)の撮影した写真や動画は,一切使用しない。過去に第3者が撮影した写真をめぐって,大きなトラブルが起きている。第3者がいかに好意的に見えても,その人たちの撮影した写真や動画を受け取って教材を作成することは,許可しない。すぐに上手な人たちに頼りたくなる気持ちはわかるが,本展示会は自分の頭で考え,見栄えは悪くとも自分の手で作り出した作品を採択する。
 写真家の人たち(全部ではない)は,自分が撮影した画像のみに価値があると考えていて,ブッポウソウがどう生きているかとか,撮影した画像をどのようにして教育に役立てようかとかには,まず関心がない。そういう方々には,本展示会よりもずっと適したところがあるので,そう言う方面の方々とコンタクトされたい。私は「横山様」には関心がないし,横山様で撮影された「画像」にも興味はない。
3) 「横山様」で撮影された写真は,中山良二さんが許可したと言っても,使用しない。本展示会は「横山様」を宣伝するところではなく,該当するブースも置かない。なお,中山良二さんのご自宅で撮影されたブッポウソウの画像については,第3者の関与がないことを確認して採択することもある。

<協賛>
協賛を希望する公共団体があれば,団体名を入れることはやぶさかではないが・・・。(日名義人さんが担当。)

<参考文献>
 何度も言うが,参考文献は新しければよいという訳ではない。古い文献でも,出版当時の自然環境や社会に想いを馳せるは楽しい。

  • Newton, I. 1998. Population Limitation in Birds. Academic Press.
  • 石原勝敏・庄野邦彦 2010. 新版生物Ⅱ(新訂版)。実教出版。
  • Ferl, R.J., and R.A. Wallace. 1996. Biology: The Realm of Life. (Third Edition). Harper Collins College Publishers.
  • 菊池俊英 1982. 人間の生物学。理工学社。
  • 京浜昆虫同好会. 1971.新しい昆虫採集案内(Ⅱ)-西日本採集地案内編-。内田老鶴圃新社。
  • 三枝誠行・近澤峰男 2022. 自然のふところ:近澤峰男さんと共に歩んだ自然哲学の道。生物多様性研究。教育プロジェクト出版会。
  • (吉備中央町の公共施設に寄贈した。もう在庫はない。)
  • Harde, K.W., and F. Severa. 1984. Der Kosmos-Käferführer. Die mittleleuroäischen Käfer Mit mehr als 1000 Farbbildern. Kosmos Gesellschaft der naturfreunde Franckh’sche verlagshandlung, Stuttgart.
  • 周文一 2008. 臺灣天牛圖鑑。貓頭鷹出版。台北市。
  • ゴルナーグラート鉄道(https://aoitrip.jp/gornergratbahn/)
  • ツェルマット(https://www.myswitzerland.com/ja/destinations/zermatt/)
  • スイス登山鉄道の旅(https://www.swisstours.jp/rail_mountain.html)

3.ブッポウソウ観察所について

 本展示会は,「横山様」のように見世物小屋を作り,お金を払えばブッポウソウを自由に撮影できるという企画ではない。中山良二さんは,ブッポウソウを見世物にして都会から人がたくさんくれば,それが町おこしになると言う。ブッポウソウなんか本当はどうでもいい,というのが本音だろう。だから,地元(下土井)の反対も押し切って,「横山様」周辺を整地し,見世物小屋を作ってしまった。

 現在も,地元の強い反対があるにもかかわらず,横山様に行く道路を広げようと躍起になっているようだ。まあ,しかし・・・,地元の人たちにとっては,農繁期にたくさんの車が我が物顔で道路を登って行き,軽トラで走ろうとすれば,後ろからクラクションを鳴らされたりすれば,良い気持ちはしない。「お前らの使う道路じゃねえだろうが・・・」と言いたくなる気持ちはよくわかる。理屈や論理よりも何も,人間の社会とはそういうものである。

「横山様」については,事情をよく理解するに連れ,私は行かないようにしているし,そもそも私が見世物小屋に行っても何もすることがない。私は見世物小屋が町おこしになるとは思っていないので,そういうところで撮影した写真はお断りしたい。

 野生生物の採集や撮影には,撮り鉄と同じように熱狂的なマニアがいる。例えば,チョウの採集。採集案内書には,ヒサマツミドリシジミのポイントには多くの採集者が集まって,珍品が現れるのを今か今かと待っていると書かれている。私は昔からそういう所(マニアの集まるポイント)は避けて行動している。そんなところに行って,熱狂的採集者に混じって昆虫採集するのは性に合わない。

 ブッポウソウ観察所というと,熱狂的な撮影マニアが集まる場所を連想する。しかし,私の考えるブッポウソウの観察場所とは,そういう所ではない。

 話は少し飛ぶが,吉備中央町に住む人たちの中で,ブッポウソウを見に来てほしいという人たちは,一体どれぐらいいるのだろうか?私は,ブッポウソウの調査で,毎年吉備中央町のほぼ全域を回っており,地元の農作業をしている人たちと話す機会が多い。ブッポウソウの観察は農作業の邪魔になるので,来てほしくないというのが圧倒的多数の農作業者の希望ではなかろうか?

 私の場合も決して例外ではない。吉備中央町の多くの人たちは,私などには特に来てほしくないだろう。口ではそう言っていないが,目つきは明らかにそう言っている。「あの人ならいいが,お前は来るとトラブルばかり起こすので,絶対に来るな。」と間違いなく言っている。荷物まとめてさっさと出てゆけという声も何度か聞いた。もちろん,出て行かない。一方,リケジョなどと称される者は,熱烈歓迎を受けているのが面白い。人を受け入れることに対して,人間というのは,始めから強いフィルターをかけていることがわかる。

 お前みたいのが来てもらっては困る・・・というような所で,何で私はいまだにブッポウソウの研究を続けられるのか? 理由は簡単である。私の場合には,巣箱を設置したら,その後何度も来て子育ての状況を観察しなければならない。何度か来ているうちに,農作業者の方もあきらめてか,普通に会話をすることが多くなる。そうやって受け入れられれば,立派に私の考える「ブッポウソウ観察所」が成立する。ただし,そこは自分だけが自由に使える場所になる。

 田舎に限ったことではないが,一見さん(いちげんさん)だとよくトラブルが起きる。ブッポウソウの場合には,トラブルの原因の大半は,因業じじいによる恐喝である。畔を歩いて草を踏んだから,草が刈れなくなったとか(自分は畔を歩くときには,踏むことはないのか?),道端でおしっこをしたとか(自分らだってしょっちゅうやっているではないか・・・。)女子学生の前で堂々とする「気違いじじい」もたまにいる。マーキングする犬か,お前は・・・と言いたくなる。     

 なので,私のように熟練した(?)者でも,絶対に行かないところはいくつかある。そういう所は,見つからずに行って巣箱を下ろし,証拠を残さぬようトンズラを決め込む。激高のあまり,何をするかわからない爺さんもいるので注意が必要である。「ああ,すいません。」と言いながら,言い訳せずにできるだけ早く現場を去ることである。

 柿食えば,遠くでじじいの怒鳴る声

 じじいの怒鳴る声が耳に心地よく響くようになったら,あなたはブッポウソウがすごく好きなり,吉備中央町の観察場所で安心してブッポウソウの写真を撮れるようになるだろう。

 しかし,トラブルを回避できるようになったとしても,コンパクトカメラを持ってブッポウソウを撮影したいという方々に対して,私がアドバイスできることは少ない。「横山様」が流行るのはそういう人たちがたくさんいるからだろう。また,リケジョかリケダンか知らないが,いかに人気があっても,基礎知識が不足している方々には,私がいくら指導してもスキルの向上は期待できない。

 学校教育で修得する基礎知識は,社会に出てからうまく活用すれば,大変役に立つ。ブッポウソウの場合にも,ある程度の基礎知識(センター試験だと6割は欲しい。)があれば,どういう所に行って観察すればよい結果が得られるか,自分の頭で判断することができるだろう。

 逆に基礎知識の習得を怠ると,自分の頭で判断する力が低下し,人の言うことに右往左往する人生になる。評判を聞いて,うまそうな話にはすぐに飛びついて失敗しやすくなる。世の中,人をだまして儲けようとする輩がごろごろいる。猜疑心が強ければ人に騙されないかというと,そういう訳でもない。そういうやつこそよく騙される。自分の頭で考える習慣があるかどうかで人生は大きく変わってくる。

 嫌であってもしばらく我慢して基礎知識の習得に努め,そして自分の頭で考える習慣をつけられるようになれば,将来は十分な見返りを期待できるだろう。二宮金次郎は,本当は基礎知識の習得などやっていなかったように見受けられる。あんな単純な教育だと,二宮尊徳は将来卑屈な人間になること間違いない。日本の教育の脆弱性は,教育とはこういうものという単純な信念ばかりが強すぎて,こういう教育をすれば,こういう人材育成が期待できるというシミュレーションを全くやろうとしない点にある。「横山様」を見て思った。

図1.「鹿の角」にとまるブッポウソウのペア。2019年7月4日吉備中央町和中にて。ブッポウソウの観察に出てから夕方に和中に戻ってきたときに,「鹿の角」にペアで止まっていた。何かをくわえている下の方がオスで,上にいるのがメスだろう。和中(WA-01)で子育てをしているペアではないだろう。

図2.「鹿の角」にとまるブッポウソウのペア(拡大)。オスがくわえているのは巻貝か?ともに左足に白い足輪がついている。ペアに同じ足環をつけることはないので,どこかの巣箱で別々につけた個体が偶然にこの場所でペアになったのかもしれない。7月上旬に求愛給餌とは,恐ろしく時期遅れであるが,どこの巣箱を使うつもりだったのだろうか?WA-01のオスは,排他的行動が強く,このペアは追い出されてしまったと思う。もう戻ってくることはないのだろうか?

図3.WA-01の巣箱の奥に設置した「鹿の角」。図2の「鹿の角」を切って,この場所(図3)に移転した。A-01のオスは,ペアのメスよりも近くの巣箱にくるペアが気になって仕方がないらしく,しょっちゅう「ガンつけ」に行っていた。去年(2022)は喧嘩して落ちたが,すぐに回復。

図4.「鹿の角」にとまるキジバト。令和5年(2023)4月1日。「鹿の角」は1年を通じて,結構多くの種類の野鳥に利用されている。

図5.前胃(proventriculus)で消化できなかった昆虫の外皮をまるめてペレットとして吐きだすヒナ。「進撃の巨人」に出てくる「無垢の巨人」は人を食べるが,消化管はないので,食べたものはペレットとして吐き戻す。巨人が食べた調査兵団の兵士を丸めて吐き出すのと雰囲気が似ている。オリジナルは動画。

図 6.右の鋏脚で硬い餌(アサリ)を割るガザミ。オリジナルは動画。ガザミがアサリを割っている間,エアレーションのゴボゴボとした音が鳴り響いている。カニの場 合には,鋏脚が左右対称の種類と右が大きい(右利き)種類がいるようだ。左が大きい種類もいるが,もともと(つまりメガロパ幼生の時から)左利きなのか,あるい は右の鋏脚が自切した結果,左右の鋏脚の大きさが反転するのか,解明されていない。

図7. マッターホルン(標高4,478m)とゴルナーグラート鉄道(Gornergratbahn)。YouTubeの動画の1シーンを撮影。 これが動画の1シーンとはとても思えない解像度である。YouTube やGoogle Mapの動画や画像は,今やお茶の間で全画面で見られるようになっている。映像技術は大進歩をしている。

図 8.綱島さんの自宅のガレージの前を歩くカナヘビ。全画面にすると迫力が出る。前肢や後肢の構造と胴体への接続の位置は,哺乳類とはだいぶ異なる。

図9.吉備中央町の里山の春。SONY RX10Ⅲ。 2023年4月1日。写真展に行かずとも,自宅で椅子に腰かけて,お茶を飲みながら鑑賞できる。

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