令和5年(2023)1月25日(水)
1.はじめに
南西諸島の海岸には,サンゴ礁が発達している。南西諸島は大陸プレートに乗って北西側に傾いている。島の東側は遠浅の泥干潟(mud tidal-flat)になっていて,リーフの縁まで行くのに時間がかかる。一方,西側は,サンゴ礁原は泥ではなく,砂地であることが多い。リーフの縁までは海岸から100m以内という場所も多い。だから,サンゴ礁を見るには,島の東側よりも西側の方がずっと良い。
サンゴ礁原には,多くの無脊椎動物(marine invertebrates)がいる。しかし,種(species)はもちろんのこと(・・・と言って威張っている訳ではない),門(phylum)すらすぐに出てこない生物も多い。所属不明な海産無脊椎動物がいたら,各々の分類群(taxon)の専門家(分類学者)に種名(species)や目(order)・綱(class)の名前を尋ねることができる。しかし,私は分類学者の回答については,相当程度の疑問を持っている。簡単にはどこかの博物館とか水産研究所等に問い合わせることができない。不明な種類の遭遇した時には,specializeした図鑑を参考にするのではなく,一般的な文献を参考にして,目とか科の名称を知ることに努めた。そちらの方がずっと重要である。もう一つの問題は,写真展と言っても,画像に何も解説がないと筆者の意図がわからない。今回は,少しだけ解説をつけてみた。
2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者氏名> 三枝誠行(NPO法人生物多様性研究・教育プロジェクト常任理事)。
<撮影場所> 西表島(沖縄県八重山郡竹富町)の祖納(そない)と赤離(アカパナリ)のサンゴ礁原。
<撮影日> 平成23年(2011)4月上旬から中旬にかけて大潮(spring tide)の期間(5~6日間)。過去の潮汐表を見れば,日にちは特定できる。
<撮影機材> 陸上ではPENTAX K-rにTamron AF 18-200mmレンズをつけて撮影していたと思うが,海岸では使うのが怖い。西表島に行ったときには,同行者にはPENTAXのOptioという水中でも使えるカメラを持たせてやったと思う。Oputioは,子供たちを対象にした野外観察の事業(事業名は忘れたが,文部科学省の事業だった気がする。)を実施する際に校費で10コほど購入した。管理上は備品ではなく消耗品にした。もちろん売ったりすることは絶対になかったが,壊れたり,持ち出して返却されなかったりで,6~7年で全部消えた。Optioはよく働いたカメラだったと思う。今はOptioの後継機種ではなく,NIKONのCoolpixやRICOHのWG–50を使っている。
<参考文献> 文献は古いとダメかと言うとそうでもない。カメラと文献は違う。「新しいものは良い」という妄想に騙されないように。
椎野季雄(1964)動物系統分類学 7(上):節足動物(1)総説・甲殻類。中山書店。
内田亨(1965)動物系統分類学の基礎。北隆館。
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琉球大学熱帯生物圏研究センター西表実験施設の宿泊棟。西表島ではいつもここに泊まる。
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祖納(そない)集落の西側にあるサンゴ礁原。大潮(spring tide)の干潮時だが,潮が上げている。右側は外離島(ソトパナリ),正面の奥には舟浮岬が見える。左側は内離島(ウチパナリ)。
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大潮の干潮時に干出したサンゴ礁原(赤離)。春は日中によく潮が引くようになるが,日差しは強烈に強い。干潟の表面は藻類(algae)で被われている。中央にはサンゴ塊,正面奥には難破した廃船が見える。
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エダサンゴとソラスズメダイ。3月から5月にかけては,日中によく潮が引くようになる。タイドプールにはたくさんのソラスズメダイが泳いでいるが,水の蒸発が早く,田んぼの水を抜かれた時のオタマジャクシみたいに,1か所に集まって干からびる。
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オニヒトデ。西表島には少ない。素手で触らない方がよい。多分食べられない。
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何かよくわからないが,イソギンチャクの群体のような気がする。
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何かよくわからないが,イソギンチャクの群体か?。
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これはサンゴの群体。壁に囲まれた個虫(緑色の部分)が見える。
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ヒメジャコ? 外套膜に共生藻(緑藻類?)が入って光合成をする。
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オトヒメエビ。エビと言ってもshrimpやprawnではなく,ロブスターの仲間。干潮時は大きい石の下にいる。
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これは何とかエビ。食道・胃・腸が透けて見える。体長3㎝ほど。
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アカパナリのサンゴ礁原。正面に見えるのは石垣島だが,海では「正面」は「北」ではない。
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シャコガイ。中身(外套膜?と貝柱)は食べられるが,おいしくないと思う。
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潮が上げる前の静かなタイドプール。
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テングハギだったか?
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潮の上げ始めたサンゴ礁の縁(edge)。見た目は荒々しいが,海や穏やか。八重山諸島のサンゴ礁になれると,グアムではとんでもない目にある。 八重山諸島では「引き波」は来ないが,グアムでは強烈な引き波が来て,せっかくたどり着いたリーフの縁でも,すぐに引き戻される。次の波を待って再びサンゴ塊につかまるとまた引き戻される。渾身の力を振り絞ってつかまらないと海の中に引きずり込まれて命を落とす。
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ブダイの仲間?上げる潮と一緒に浅瀬に入ってくる。タイミングが良ければ面白いように網で捕れる。
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オコゼの仲間? バケツに他の魚を入れておくと、知らないうちに全部飲み込んでしまう嫌なやつ。
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テングハギモドキ? 潮が引いているときにサンゴ塊の隙間に入った個体を捕まえた。
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シマイセエビ。宿舎でゆでて食べたらしい。私は那根さんにサザエを焼いてもらったが,火の通りが悪かったらしく,次の日はダウンした。
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ウミシダ?だとすれは,棘皮動物門だが・・・。
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これはガンガゼ。細い方の棘が危険。
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ガンガゼを手のひらにのせて嬉しそうにしている。私はこんなアホなことはしない。