令和4年(2022)7月18日(月)
7月中旬に入って,吉備中央町と高梁市有漢町を結ぶ広域農道(奥吉備街道)には,オニヤンマの姿が目立つようになった。7月17日から18日あたりだと,井原(吉備中央町)から有漢町(岡山自動車道入口あたり)までの間で,車にはねられて道路に転がっている個体を3匹か4匹ぐらい拾うことができる。オニヤンマの発生が多い年には,10匹近く拾うことができる。
道路に転がっているオニヤンマ,クワガタムシ,エゾゼミを見つけるのは,動体視力が発達していればそう難しいことではない。軽トラは時速50km程度の速度で走り,進行車線・対向車線も含めて道路上に目をやっていると,すぐに発見できる。車に轢かれて体がつぶれている個体は拾わない。
気を付けなければならないのは,後続車である。止まるときは,常に後ろを注意して後続車がいないことを確認しないと危ない。
岡山空港に向かう県道.それから吉備中央町に向かう県道(72号)や,国道429号は非常に事故が多い。野生動物もたくさん車に轢かれて死んでいる。野鳥の場合には体の大きさに対して血液の量が少ないので,轢かれても道路に血のりはすくないが,ホ乳類は血液の量が多く,轢かれると道路の広範囲に血のりがべったりと残る。まともに凝視できない死体も多い。
昨日(7月18日)は,コメリの手前にある加茂川の橋を渡って,右にカーブするところで2台のバイクが走ってきた。最初のバイクはうまくやり過ごしたが,2台目は片側一車線の道路の黄色のセンターラインを50cmはみ出して曲がってきた。すぐにハンドルを左に切って道路の左端に寄って運よくかわすことができたが,ぶつかったら大事故になっていただろう。しばらく車を動かせなかった。皆さんもくれぐれも交通事故には気を付けられたい。
図1.奥吉備街道で車にはねられて道に落ちたオニヤンマ。もう死んでいる。7月6日。
図2.コオニヤンマ。やはり奥吉備街道で車にはねられた個体。まだ生きていたかもしれない。7月13日。
図2はオニヤンマ(Anotogaster sieboldii)ではなくコオニヤンマ(Sieboldius albardae)を示している。(シーボルトの名前がついているので,オニヤンマはよほどシーボルトに縁が深いのであろう。)共にオニヤンマというが,属(genus)の名称が違うので,系統学的にはオニヤンマとは相当違った位置にあるのだろう。両者の系統学的な位置関係はインターネットで調べればわかるだろうが,この記事ではそこまでの情報は要らないと思う。個人的には,オニヤンマの祖先とコオニヤンマの祖先が地質時代のいつ頃分岐したかは興味がある。頭部の形態や大きさが大きく異なっているので,相当古い時代であることは間違いないだろう。
コオニヤンマの発生は,ノートの記録を見ると,オニヤンマよりずっと早く,6月上旬となっている。6月いっぱいは,オニヤンマを見たと言ってもすべて本種(コオニヤンマ)のことである。コオニヤンマは奥吉備街道には非常に少なく,山林の小川沿いとか水田の脇の道路に多く見られる。捕虫網で採集するとなると逃げ足は速い。ブッポウソウはどうしてこんなに逃げ足の速いトンボを捕まえられるのだろうか。
オニヤンマ(図1)コオニヤンマ(図2)は違うと言っても,それぞれの種の写真を示しただけでは,どこがどう違うかわからない。図3は,コオニヤンマとオニヤンマを並べてみた写真である。コオニヤンマ(上)とオニヤンマ(下)では複眼の大きさに明瞭な違いがあることがわかるだろう。オニヤンマの複眼の方がずっと面積が広いということは,割と照度の低い環境でもオニヤンマは活動できるし,コオニヤンマに比べてより小さなサイズのエサを捕獲することが可能なのかもしれない。
また,毎年の発生量は,コオニヤンマは割と安定しているのに対し,オニヤンマの方は年ごとの変動が大きそうな気がする。今年(2022)はオニヤンマの発生数は多いだろう。
コオニヤンマにしてもオニヤンマにしても,新鮮な個体なら家に持って帰ってぴよ吉のエサにしている(図4)。飛んでいるのを捕まえるのはすごく大変である。7月中旬は,ブッポウソウはオニヤンマのほか,ニイニイゼミ,ヒグラシ,アブラゼミをよく捕まえてくる。ブッポウソウ独特のエサ認識能力と捕獲手段を持っているだろう。
図3.コオニヤンマとオニヤンマの比較。コオニヤンマ(上)は頭部が小さいが,オニヤンマ(下)は大きい。胸部の黄色い縞模様のパターンにも大きな違いが見られる。
図4.ぴよ吉(7月5日)。トンボは大好き。普段ブッポウソウが捕まえないナツアカネやアキアカネもよく食べる。一番好きなのはエンマコオロギだが,採集するのは結構大変である。