令和4年(2022)のブッポウソウ情報 No. 19(速報):変な巣箱を作るのはやめてくれないか。 (山中宅の巣箱のヒナ5匹全滅,死因は熱中症)

令和4年(2022)7月10日(日)

 吉備中央町で子育てをするブッポウソウは,巣箱を使っている(図1)。自然木の「うろ」を使っているペアは少ないだろう。巣箱の原型は,日本野鳥の会岡山県支部が考案したのだろう。しかし,野鳥の会の巣箱は入り口が狭い。この大きさ(直径7cm)だとオスの方は,割と簡単に入れるが,産卵前には腹部が大きくなるメスは体をよじりながら入ることになる。

 当初はカラスの被害を心配したようである。しかしこのサイズでは,確かにカラスは巣箱の深くまで首を突っ込めない。その代わり,ブッポウソウの方も入るのに難儀する。入り口の大きさに関しては改良がなされ,現在は直径7.5cmになっているようである。

 樹洞営巣性鳥類(cavity-nesting birds)が巣穴に入るときには,足を腹部にくっつけて,穴からスコッと入ってゆく。それを考えると,ブッポウソウの場合にはもう少し広い穴がいいと思い,多様性プロジェクトの巣箱では,直径8cmにした。ただし,7.5cmがいいのか8cmがいいのかという議論は意味がない。なぜそんな議論をするかもよくわからない。ブッポウソウがヒナにエサをやるために,巣箱の中に容易に入れることが大事である(図2)。もちろん,あまり大きいと(例えば10cm)樹洞としての意味がなくなるので,大きければよい訳でもない。

図1.NTTの電柱に架けられているブッポウソウの巣箱(WA-01)。7月1日上田西にて。

図2.近澤峰男さんが好きだったE-03の巣箱(吉備中央町上竹)。この巣箱(E-03)は,カラスの異常に多いところ。スズメバチの大きな巣があった年もある。カラスの片方の翼が入っていたこともあった。令和4年6月23日撮影。

図3.「有漢どん詰まり」にある多様性プロジェクトの巣箱(L-06)。最近はスズメの攻勢に勝っている。

 野鳥の会岡山県支部で使っている巣箱(図1)も多様性プロジェクトで使っている巣箱(図2と図3)も,基本的には同じタイプ(角型)である。メンテナンスも容易である。

 ブッポウソウが吉備中央町でよく知られるようになってから,中山良二さんの家には写真家なる人たちがたくさん訪れるようになった。その中には,大学の教員も少なから混じっていて,ブッポウソウの生態を知らないのに,さも専門的な知識に裏付けられているように,いい加減なことを宣うので始末が悪い。こういう人たちのめざす研究や教育は,少なくとも私には,とても信じられないし,そのような方々のご指導など絶対に受けたくはない。

中山良二さんは,ちょっと肩書を持つような人たちにおだてられると,芸術的センスが発揚してしまうようである。天に向かう竜の如く「芸術は爆発だ・・・」みたいな感覚が起きる。

 写真家は,全部ではないが,基本的にきれいな写真が撮れれば満足である。たとえは悪いが,水着の女性に対し,あっち向けこっち向けと指示する感覚で,ブッポウソウウを見ているのではなかろうか?そういう人たちが,自分たちの都合(欲望)を満足させるために使う人として,中山良二さんはもっとも適任者であろう。

 世の中には,自分の都合だけを考えて生きている人も多いが,そういう方々におだてられると元気になる人たちもまた少なからず存在する。世の中に存在するトラブルは,そんなところに起因することが多いかもしれない。

図4。ジブリの世界に出てきそうな「とんでも巣箱」。何でも,巣箱を開けるには,巣箱の下にビニールを敷いて,底全体をはずしヒナに水をやると言われる。ヒナに水をやる前に,自分がハシゴから落ちてしまいそうだ。

 ということで,図4は写真家のご要望を受けた中山さんが指南して,山中さん(personal nameは聞いていない)に作らせた巣箱を示している。一見してジブリの世界に出てきそうな,とんでもびっくり巣箱である。

 それでもこの巣箱では,最初のうちは子育てがうまく行っていたようである。卵も5つ産まれ,5匹ともふ化した。しかし,7月に入って大変な事態が発生した。7月4日に,中山良二さんから,山中さんのお宅の巣箱でヒナが4匹死亡したとの連絡を受けた。7月3日(2日だったかもしれない)に中山良二さんが実際に巣箱に登ってヒナの死骸を回収したようだ。中山良二さんによると,ヒナのウンチはポロポロで,ヒナはフン詰まりで死んだとのご意見であった。中山良二さんの不思議なところは,自分で電柱に登り,ブッポウソウのヒナを回収して死亡原因を突き止めようとすることである。普通の人だったら,自分がやったことで不都合が生じると真っ先に逃げてしまうが,そういう気持ちはあまり強くないのかもしれない。

 ちょうど7月初めごろは,auの電話が何日間か不通になっていて,中山さんから事件発生の連絡を受けたのは7月3日であり,5匹のヒナのうち4匹が死んだ後だった。死に方が少し変だったので,岡山県家畜衛生保健所に電話した。鳥インフルの可能性は極めて低いとの回答をいただいた。ついで池田動物園にある県鳥獣保護センターに電話し,事例の報告と死亡原因の究明を試みた。担当者は,鳥インフルの可能性は低いと言い,時節柄サルモネラ菌のような病原性細菌による食中毒の可能性を疑っていた。

 もし強毒性細菌が原因だったら,巣箱の中は死体を取り除き,巣材を取り換えて,中を清潔な状態に戻さなければならない。巣箱の状態を見るために,7月4日の午前中に山中宅に向かった(中山さんは同行を拒否。この時は逃げたか?)。途中車を運転中に,中山良二さんが「ヒナのウンチはポロポロ」と言っていたことを思い出した。ヒナは,強毒性の細菌に感染したのではなく,熱中症で脱水状態になったと確信した。

 山中さん宅にお邪魔してから,状況の説明を受け,まだ1匹生きているヒナがいることも分かった。脱水症状を改善するには,ポカリスエットを少量飲ませるのが有効だが,巣箱のフタは簡単には開けられないという。仕方ないので,巣箱の入り口から霧吹きで水分を供給するようにお願いした。巣箱の開け方を聞いたが,とても私にはできないので,山中さんご本人にやっていただくようお願いした。

 夕方調査の帰りにもう一度山中さんのお宅に寄った。今度は巣箱を開けてポカリを与えると言われた。でも,熱中症の症状は重いだろうから,死ぬ可能性があることも併せて伝えた。山中さんは,夜に綱島恭治さんに電話されたようで,7月5日にメールで最後のヒナも死亡したことを知らされた。

 7月5日に山中宅にもう一度伺いして,立派な巣箱を作っても,巣箱の環境は必ずしもヒナに好適とは限らないこと,またあのような巣箱(図4)では,何かあったときに中を開けて調べることができない旨をお伝えした。そして,来年からは吉備中央町が推薦する巣箱(図1~図3)を使うことを約束していただいた。自分の都合だけを考える一部の人たちの言うことを真に受けた結果,事件が起きてヒナが全滅した記録は残しておくべきである。人間の社会は,こんなだまし・だまされが,どんな組織の中でも日常的に起きている。

 一方,吉備中央町が推薦する巣箱(図1~図3)もまた,完ぺきとは言えない。へんてこ巣箱(図4)と同様に密閉度が高く,今年(2022)のように梅雨の期間が極端に短く,しかも急に気温が上昇すると,巣箱の中は熱風状態になる可能性が増す。一番いいのは,雨が降らずも猛烈に暑い日には,ホースを使って巣箱に水をかけるのがよいだろう。自宅の脇に巣箱があり,巣箱の中の鳥の行動は逐一モニターされている訳だから,すぐに異変に気が付くだろう。自分たちは日ごろ水田の管理にあれだけ神経をとがらせているのだから,鳥の行動についても同じようにできるはずである。

「ぴよ吉」を飼育してみて,ブッポウソウはよく水を飲むことがわかった。暑い日には,霧吹きでいっぱい水をかけてやるとご機嫌になる。もっとも,すぐにお尻を持ち上げて,ほとんど水のウンチをバシバシと出し始める(図5)。鳥は人間でいう下痢便が,いいウンチのようだ。余計なことだが,最近は野外で採集が容易な採集した昆虫(ヒメギス,ヤブキリ,バッタ,イナゴ)をやっている。トンボは,車にはねられて路上に落ちた個体を拾っている。(生きているのは早くて捕まえにくい。)ぴよ吉は,昆虫を食べると,きったねえウンチをする。

 ぴよ吉の止まり木の右側は窓,左側が部屋の内側(パソコンがある方)。ウンチの分布が大きく異なる(図5)。つまり,ぴよ吉は日がな一日外を眺めているのではなく,室内のいろいろなところを眺めて過ごしているのだろう。

 ブッポウソウは,シジュウカラやツバメのように巣の外にウンチを出さない。病原性の細菌類に関しては強い耐性があるように見える。酸性度の高い(つまりpHが低い)胃液を大量に出すのか,あるいは免疫力が高いのか・・・? 私は,多分そのどちらでもないと思っている。

 強毒性細菌は,魚やホ乳類の死肉で急速に増殖することが多いだろう。巣箱の中はすごく汚いが,巣箱は空中にあることや,生きている昆虫類をエサにしていることで,ブッポウソウのしたウンチで強毒性・弱毒性細菌が増殖する可能性は低いかもしれない。ブッポウソウは,死肉は食べない。このあたりに,東洋熱帯区という高温・多湿な気候の中で生き残る巧みな適応がある。(コンドルは死肉を食べる。コンドルの場合には,砂漠地帯に生息している。乾燥地域だと,死肉には細菌の増殖が起きにくいかもしれない。)

図5.止まり木の上のぴよ吉。6月25日。トイレ(新聞紙)を交換する時間がとれない。ほとんど巣箱の中と同じ状態である。カモ類のような水鳥と異なり,ブッポウソウのウンチには病原性細菌が増殖しにくいのではなかろうか?

 結論として,写真家を喜ばすのは中山良二さんだけでいいだろう。芸術的センスを加えるのは中山良二さんの特技,いや病気である。他の人たちが写真家に忖度する必要はないだろう。

 今回の事件の教訓は,誰がやったかで責任のなすりあいをするのではなく,予期せぬ事態が起きたことを(私に)報告していただくということである。正確に報告していただければ,すぐに対応できるし,今年が無理なら来年改善できるだろう。中山良二さんのおもりは大変だ。

<参考文献>
三枝誠行・近澤峰男(2022)自然のふところ:近澤峰男さんと共に歩いた自然哲学の道。生物多様性研究・教育プロジェクト出版会。

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