令和4年(2022)のブッポウソウ情報 No. 15:6月3日に上田西でまた落鳥(死亡)

令和4年(2022)6月22日(水)

 令和4年(2022)6月6日に吉備中央町ブッポウソウ会から,上田西で落鳥があったとの連絡を受けた。落ちたのは図1に示した池の近くの林縁である。落鳥あったのは6月3日(金)。拾ったのは池の左側にあるにお宅にすむ小林さん(奥さんの方)。落鳥したオスの写真が入ったUSBメモリーをお返しに行った際に,ちょうどこの場所(図1)で奥さんにお会いした。

図1.上田西(吉備中央町)で落鳥があった場所。この池の手前側(後ろ)にある田んぼ(写真には出ていない)の脇の草むらに落ちて死んでいたとのこと。撮影日の頃は,写真の電線に3匹か4匹とまっていた。写真右側の白い屋根の家(半分写っている)のすぐ右にB-08の巣箱がある。5月24日撮影(CANON Power-Shot S95)。

 ブッポウソウは,光りものが好きである。池の水面も太陽光を反射してよく光る。トンボもよく捕まえてくるので,池の付近ではよく姿を見かける。上田西にあるため池(図1)では,池の上の電線によくとまっている。池の付近には4つの巣箱があり,一番近いB-08の巣箱(図2)を使っているペアはいつもオスとメスのどちらかがとまっている。その他に池の左上の方(150mぐらい)にある巣箱(δ-08)からも時々来ていたようだ。また,池の手前側にもいくつか巣箱(A-27やP-08など)があり,そこから偵察かエサ取りに来ている個体もいるような感じがするが,実際には通りがかった単独個体かペアがとまっていたのかもしれない。足環付けをしたからといって,こういうところはなかなかわからない。

図2.池に一番近い巣箱(B-08)。ここのペアはいつも池の上の電線にとまっている。(よく見ると電線が見える。写真の電線にはあまりとまらない。) SONY RX10Ⅲ。

図3.池の近くに落ちて死んだブッポウソウのオス。撮影者は小林さん(6月3日に撮影)。ウジがわいたので埋めたとのことで,6月6日にお宅にお伺いしたときにはお墓が作られていた。

図4.池(図1)のとなりの田んぼの上でオスを殺したと思われるB-08のオス。左下に飛んでくるブッポウソウが写っているが,ペアのメスかは不明。もし敵だったら,このままいると頸部への一撃を食らうだろう。6月16日撮影。SONY RX10Ⅲ。

図5.ペアのオスを殺されてしまったメス。UN-01の巣箱近くの電線にとまる。6月17日。SONY RX10Ⅲ。

 小林さんは,落鳥を拾ってからすぐに写真を撮影した(図3)。この個体はオスで間違いない。傷は羽の付け根から胸にあったとのことで,その付近を激しくつつかれて骨の破砕と大量出血で死亡したのであろう。奥さんが見つけたときには,すでに死んでいたとのことである。

 小林さんの小林さんのお宅に行った翌日から池(図1)の周辺にある巣箱を見て回った。まず池に一番近い巣箱(B-08)を見ると,巣箱の中には卵が4つあり,池の上の電線にオスがとまって警戒していた(図4)。このオスはかなり気が荒い。普通は巣箱の中でヒナが成長し,巣立ちが近づくとケーケケケケケと激しく鳴きながら威嚇(threatening)をするが,B-08のオスは巣箱に卵が置いてある段階で激しい威嚇行動を示した。羽ばたかずに,羽を胸の横に固定し4~5mの距離まで一直線に飛んでくる。それから「パシッ」という音(どこから出すか不明)と共に急速反転して攻撃目標から遠ざかる。(「パシッ」音は,聞こえないときもある。)B-08のオスの行動を見ると,すぐにこのオスは気が荒いと気づく。メスも同じ電線にとまっている。

 次に,B-08から直線距離にして100~150mほど離れているδ-08の巣箱を見ると,メスが巣箱から飛んで逃げた。近くのヒノキの上でオスの鳴く声がする。この巣箱(δ-08)は被害を受けていないと判断された。

 さらに池の反対側にある3つの巣箱(P-08, A-27, UW-01)を見た。一番離れているP-08はペアで巣箱を守っている。A-27は,池から直線距離にして2百数十メートルの距離にある木柱巣箱で,今年は5つ卵が産まれた。この巣箱もペアが巣箱を守っている。

 最後にA-27から100mほどしか離れていないUW-01の巣箱を見た。ブッポウソウのことがよくわかってくると,巣箱に近づいた際に,この巣箱は何だか変だ・・・という感じがする。WA-01の周辺にはブッポウソウの姿が見当たらない。巣箱をのぞくとメスが卵を温めている。外を見まわすとオスの姿はどこにも見当たらず「池のところで死亡したのはUW-01のオスに違いない。」とわかる。その後も毎日のようにUW-01を見たが,いつもメスだけが近くの電線や桐の大木の枝にとまっていた(図5)。

 池の上で胸をつつかれて死んでいたのは,WA-01のオスで間違いないだろう。一方,このオスをつつき殺したのはB-08のオスで間違いないように思われる。
WA-01のメスは,6月7日から産卵を始めた。オスがいないのに産卵などありえるか・・・という方々もおられよう。しかし,実際にありうるのである。ブッポウソウの産卵のメカニズムについて,何度も述べてきた。ブッポウソウの産卵のメカニズム(仮説)はこういう時にすごく生きてくる。WA-01のメスはその後,6月9日,6月11日,6月13日,6月15日と,計5つ卵を産んだ。6月22に日現在で,巣箱に出たり入ったりして卵を温めている。卵は,6月30日と31日は全部ふ化するだろう。

 ヒナがふ化した後は,メス親ひとりで子育てをしなくてはならない。ふ化してから1週間以内は,子育ては親に任せる方がよい。しかし,1週間を過ぎたらメス親ひとりでエサ運びは大変だ。毎日電柱に登って私がエサやりを手伝うことになるだろう。中山良二さんに話したら,エサやりの助っ人はあっさりと断られた。

 なお,ブッポウソウの殺戮事件の起きる頻度は,巣箱間の距離とはあまり関係しない。巣箱間の距離が近いほど,どちらか片方の巣箱に入る頻度は増加する。一方,殺戮の方は,巣箱の奪い合いやメスをめぐっての争いで発生するため,巣箱間の距離とは無関係に生じるだろう。こちらは個体密度の問題。

 もうひとつ。ブッポウソウは,我が家に居候する「ぴよ吉」と同様に,普段(非繁殖期)は愛玩動物の持つかわいらしさを持つ。半面,繁殖期に入るとオス・メスともに狂暴になる。くちばしの真っ赤になったブッポウソウは特に危険で,先の尖ったくちばしであたりかまわず噛みつく。これは,繁殖になると脳下垂体から生殖腺刺激ホルモンが分泌されることで発現した攻撃行動である。人間には繁殖シーズンがないので,なかなか理解されないかもしれないが,動物園の飼育員はよく理解するだろう。

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