令和4年(2022)のブッポウソウ情報 No. 12:ぴよ吉は,本当は直翅目昆虫が大好き。

令和4年(2022)6月15日(水)

 ブッポウソウは昆虫類(insects)をよく食べる。フィールドで捕獲しているエサは,ほとんどが昆虫である。ブッポウソウが食べる昆虫類は,5月初めから羽化し始めるが,5月中はコアオハナムグリのように小型の昆虫類が多い。5月中に主要なエサとなる昆虫は,ハルゼミ,シオカラトンボ,ギンヤンマ,ハンミョウ,センチコガネ,ゴミムシ,カワゲラ,それに直翅目のバッタなどだろう。チョウは食べない。カワトンボ,イトトンボ,ヘリグロベニカミキリなども食べないだろう。昼行性のガは捕まえて食べると思う。

図1.モニターの上にとまってご機嫌なぴよ吉。時々お尻をあげて後ろ側にピッとウンチをする。モニターの後ろには新聞紙が敷かれ,ぴよ吉のトイレになっている。撮影は6月5日。ブッポウソウにとっては繁殖シーズンに入っているが,ぴよ吉は生殖腺刺激ホルモン(GSH)が分泌されていないらしく,くちばしは橙色で攻撃行動も発現していない。自宅に引き取ってから最初のうちは昆虫類を食べさせていたが,野外で採集するのが面倒なので,最近は人間と同じものを食べさせている。冷凍アサリをレンジで解凍したり,鶏肉や鶏卵をゆでたりと・・・。さすがに野菜は食べないが,パンはよく食べる。ご飯はあまり好きではないようだ。RICOH WG-50で撮影(距離30cm)。

 6月にはトンボ類が羽化する。オオヤマトンボ,ヤブヤンマ,コオニヤンマ,ギンヤンマはブッポウソウの大好物である。甲虫類(beetles)では,小型のカミキリ類が羽化するが,捕獲している感じがしない。キイロトラカミキリは食べそうだが,ブッポウソウがカミキリの集まる貯木場に下りるのは見たことがない。

 また,6月中旬からシロテンハナムグリが発生する(図2)。これはよく捕まえていると思う。

 さらに6月下旬になると大型の昆虫類が目立つようになる。一番よく捕まえるのは,オニヤンマ,カナブン,ニイニイゼミ,ヒグラシ,コクワガタである。タマムシはどこの地域でもめったに見かけないのに,巣箱の中には消化された後に吐き戻されたクチクラの切れ端が残っている。選択的に捕獲している証拠である。

図2.シロテンハナムグリ(6月12日)。ブッポウソウはシロテンハナムグリもよく食べている。

図3.カラムシの葉にとまるヤブキリの幼虫(上)とバッタの幼虫(下)。6月1日,高梁市有漢町にて。なお,6月に入るとカラムシの葉上には,美しいラミーカミキリがたくさんとまっている。

 ぴよ吉は,直翅目の幼虫は大好きであるが,野外ではブッポウソウは幼虫を捕まえることはないと思う。同じことが,トンボ目のナツアカネやアキアカネ(いわゆるアカトンボ)にも言える。捕獲して与えるとよく食べるが,自然の中ではあんなにたくさんいるのに,捕獲しているのを見たことがない。

 ブッポウソウのヒナは,6月下旬からふ化(hatching)が始まる。ヒナがふ化すると,親はオスとメスが交代でエサを運んでくる。多くの方々がブッポウソウの撮影に訪れるのは,6月下旬から7月中旬であり,このころは大型昆虫が目立つようになる。

 ブッポウソウは,大型の昆虫やキラキラ光るエサを選択的に捕獲する性質がある。一方,初夏の雑草地に発生する多くの直翅目は,大きなバッタ(よく飛ぶので目立つ)を除いては捕獲されることはなさそうである。ブッポウソウには見つかりにくい場所(草むら)に生息するというのが一番の理由だろう。

図4.ヒメギスの幼虫。黒光りした体表のつやが何とも言えない雰囲気を醸し出している。直翅目昆虫は大あごが発達しており,捕まえるとき噛まれないように注意。本州の直翅目昆虫はかまれても痛いぐらいで済むが,南西諸島にいる種類(ヒメギスの仲間か?)は,かまれると結構な出血がある。もちろんすごく痛い。SONY RX10で撮影。

図5.単子葉植物の花の上にとまるヤブキリの幼虫。ヤブキリのフォルムは素晴らしい。また,植物とよくマッチする。自然界の造形美がわかる人は,ブッポウソウの研究に向いていると思う。ブッポウソウは羽毛の鮮やかさでは直翅目昆虫を凌駕する。しかし,直翅目昆虫は,フォルムに関しては,地球に存在するどの動物と比べても決して見劣りしない。形態が美しい生物や機械は,機能も優れていることが多い。人間の場合には,優れた操縦士が乗ると,機械自体は結構おんぼろでも,運行スタイルは美しく見えるということもある。世の中は実に不思議である。

 ぴよ吉は,ブッポウソウがよく捕ってくるカナブンやアブラゼミはあまり好きではない。タマムシもたぶん嫌がる。これらの昆虫は体表のクチクラが硬く,柔らかいエサに慣れたぴよ吉にとってはかみ砕くのが面倒なのであろう。

 ぴよ吉は,ブッポウソウが運んでくる硬いエサ(図2)よりも,ヤブキリ(図3と図5)やヒメギス(図4)のようなエサの方が好きである。バッタ(図3の右)はちょっと苦労している。大きなバッタを与えると,くちばしにくわえてから,止まり木に激しくたたきつけるので,バッタの体はバラバラになる。おまけに,バッタの後ろ足には硬い棘がいっぱいあるので,これを食べるとすぐに血便が出る。ブッポウソウにとって血便自体は普通のことであるが,部屋の中に飛び散るのはいただけない。だから鋭い棘を持つ昆虫はなるべく食べさせないようにしている。8月に入ると,草むらにはエンマコオロギ(直翅目昆虫)の姿が目立つようになる。ぴよ吉はコオロギも大好きである。


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