ブッポウソウ総合情報センター速報(No. 43)

令和3年(2021)8月3日(火)

最後に一匹残った個体が死亡する可能性は低い。

巣箱の掃除をしていると,ヒナの出した大量のウンチの上で死んでいるブッポウソウが見つ かる。すでに白骨化しているので,ヒナなのか親なのか不明である。いずれにしても,死亡 個体の見つかる巣箱は,全体の 1~2%になるかと思う。ふ化して間もない個体の死亡を考慮すると,この値はもっと大きくなる。

この数値を無視できるかは,見る人によって異なる。いずれにしても,巣箱の中で死んでい る個体は親かヒナなのか,またどういう原因で死亡するかは,ぜひ解明したい。

巣箱の中で死亡しているのは,親の場合とヒナの場合と両方ある。親の場合には,死亡原因 の分かったケースはまだない。(親の場合には猟奇的雰囲気が漂っている。)ヒナの場合には,親からエサがもらえず,栄養失調で死んだと思われる個体以外に死亡原因が特定で きたケースはない。

その他に,割合としては受精卵の胚発生が始まらず,ふ化しない卵が多い。野鳥にとって卵 (受精卵)は「消耗品」なので,巣箱内を含めて環境条件がよければふ化数は増加するし, 悪ければ低下する。ヒナや親の死亡とは切り離して考えたい。

巣箱の中でヒナが死亡する原因は,巣箱の中に一匹だけ残り,親から「巣立ちコール」があるにも関わらず,怖くて外に出られない個体がいる可能性があった。親がとうとうあきらめ, すでに巣立ちした兄弟を連れて巣箱を去ってしまった結果,エサがもらえず死亡する可能性 が考えられた。

この可能性があるかを確かめるために,7 月 19 日から 7 月 25 日にかけて,巣箱の中に残っているヒナの数が記録された。表 1をご覧いただきたい。

表1.ヒナの残っている巣箱と残っているヒナの数


<7月19日(月)>
P-07(江与味)               ヒナ3
F-10(江与味)               ヒナ1
A-33(ソーラー)              ヒナ1

<7月20日(火)>
H-05(上井原から入るところ)       ヒナ4
I-01(上有漢一番初め)          羽軸5,親2警戒
I-04(ライチの木)             直前ヒナ4
J-01(中津井町?)             直前ヒナ3,親警戒
J-07(坂,お墓,去年幼鳥保護)       ヒナ1
J-04(J-06近く)              間近ヒナ3,親巣立ちコール

L-11(3年前落鳥,坂道)        羽軸3
N-08(M-08近く)           ヒナ1
G-12(田んぼ)            近ヒナ3
M-05(四角錐の墓)          ヒナ1

<7月21日(水)>
D-05(納地,爆音)          ヒナ2,親は?
F-05(川面町,一番奥)        ヒナ2
e-01(新ペア追い出された)      ヒナ1
N-04(道端電柱)           ヒナ1

<7月22日(木)>
カメラ忘れて,峰ピョン谷の草刈り

<7月23日(金)>
C-06(吉川,ミズカマキリ)     ヒナ1,親うるさい。
C-09(吉川)            ヒナ2,親2
P-06(藤田)            羽軸赤ヒナ,親いる。
F-05(先畑牧場)          ヒナ2,親いる。
F-07(自立柱)           ヒナ1,親1うるさい。
F-16(アパート見える。)       ヒナ2,親いない。
E-09(去年片親)          色づきヒナ3,親は?
妙1                 色づきヒナ4

<7月24日(土)>
O-08(上田西)           直前ヒナ2
H-05(上井原から入るところ)     ヒナ1残る。親いる。
H-10(椿)             直前2,羽軸1,親1遠くで見張る。
H-17(豊野,天福寺の入り口)     ヒナ1,親いない。
H-19(天福寺)           直前ヒナ2,親いる。
H-14(天福寺下)          ヒナ1,親いない。
H-18(県道沿い)          ヒナ1,親いる。
旧H-39               羽軸2,親いる。
H-26                ヒナ1,親いない。

<7月25日(日)>
P-07(江与味)           1匹ヒナ残る。
  電柱登り始めたら自分から出た。親も近くにいる。巣立ち完了
I-01(上有漢,最初の巣箱)     ヒナ5
J-01(中津井町?)         ヒナ1
L-11(上有漢)           ヒナ3
L-18(豊野)            ヒナ1


確かに,巣箱の中には 1 匹だけヒナが残っていることが多い。

表 1 のデータから,巣箱の外に出られなくて死ぬヒナが出る可能性はあると思った。それで7 月 26 日から,さらにヒナが一匹残った巣箱を追跡調査した。しかしながら,予想は見事に外れて,次から次へと 巣立っていった。なかなか外に出ないヒナのくちばしにかみついて外に引きずり出すという荒業をやった親もいた。

私も何年か前,粟島神社の P-08 の巣箱で,非常に発育が遅れ,親が1週間以上も巣立ちコ ールをしているのに,なかなか出てこない個体(「粟島ヒナ子」と名前を付けた)を強引に巣立ちさせたことがあった。(この時には,8 月 10 日前後になっており,本当に危なかったと思う。) 粟島ヒナ子は,今どうなっているかわからないが,どこかの巣箱で子育てをしていると思いたい。

このような例はあるが,表 1の結果とその後の追跡調査から,親がいればヒナはすべて巣立ち,巣箱に残されて死亡することはまずないと思われる。巣立ちは親に任せておけば,うまくやれるということが判明した。

ただ,危なっかしい巣箱が毎年残っていて(今年は大和にある E-17 の巣箱),そういうところは人の手を加えた方がよいのか,また手を加えるにしてもどの程度くわえたらよいのか, まだ結論が出ていない。E-17 の巣箱の結果を見てから考えよう。

もうひとつ,なぜ一匹だけヒナがいる巣箱が多いのか(表 1)という疑問が残っている。こ れは,野鳥の基本的な性質が関係することで,いずれ説明する機会があるだろう。鳥として生きてゆく場合に必然的に起きてしまう現象である。。

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