令和3年(2021)7月21日(水)
ブッポウソウヒナの擬死行動
速報No. 33で報告したように,大和(吉備中央町)にあるE-17の巣箱(W-33)は,昨年電柱と電線が撤去されたために,その場所から直線距離にして100m以上離れた別の電柱に移設された。去年と同じペアか不明だが,今年(2021)はだいぶ遅れて入った。
もし去年と同じペアだとすると,産卵がこれほど遅れるのは考えにくい。100m以上も巣箱を離したために,新しい巣箱と認識されたのだろうか?とすれば,最初の年からやり直しという可能性はある。一方,新しいペアが入ったのかもしれない。その場合には,昨年のペアはどこに行ってしまったのだろうか。このあたりがものすごくミステリアスで,野鳥の研究の難しさがある。
速報33号には,3匹のヒナのうち1番チビがちょっとやばいかも,と書いた。
気になっていたので,次の日(7月19日)に電柱に登り,巣箱のふたを開けてみた(図1)。
巣箱の中は,尿酸の強烈な臭いが鼻につく。臭いは,ヒナをつかむ手とともに,衣服にも吸着される。尿酸の臭いを想像しながら記事を読んでいただくと実感がわくだろう。帰りには,そのままの姿でスーパーに寄ってしまった。(臭いは家に帰ってから気づく。)
巣箱の中には3匹のヒナがいた。うち2匹は羽軸が生え順調に育っていることがわかったが,一番チビはまだ赤ヒナだ。相当腹が減っていたのだろう。与えたエサをバクバク食べた。兄弟2コはじっとしてエサを食べようとしなかった。特に奥の長男(or 長女)は,完全に死んだふりを決め込んで口を開けなかった。次男(or 次女)は,口をつついたらくちばしを開けて食べた。
巣箱のふたを開けると,ヒナは体が完全に固まって動かない。これを擬死行動と言ってよいかについては,まだ検討の余地はある。いずれにせよ,死んだふりしてどれほどの効果があるのか。人間の場合にも,ヒグマに遭遇したときに死んだふりをしても,命が助かる可能性は低いように思える。もちろん,そんなとんでもないことをする度胸があればの話であるが・・・。
午前中のたくさんエサをもらった一番チビは,よほど満足したのだろう。午後にエサをやったときには,くちばしを開けたまま完全に狸寝入りを決め込んでいた(図2)。長男もエサを少し食べたので,親があまりエサを運んでこなかったと思われる。親は巣箱の近くの電線にとまっていて,私が近づくと林の中に逃げた。
一番チビでも,巣箱の中でこのままエサをやり続ければ,親がいなくても幼鳥になれる。しかし,巣立ちの時に親からの「巣立ちコール」がないと巣箱の外に出られない。兄弟の上2つは間違いなく親について行くだろう。しかし一番チビは,兄者たち2個体と成長に大きな差が出ている。親が辛抱して巣立ちコールを発し続けてくれるか,興味を持って注視してゆきたい(図3)。