ブッポウソウ総合情報センター速報(No. 25)

令和3年(2021)7月8日(木)

小森の巣箱(P-07)のブッポウソウは,化け物に食べられた可能性

7月1日には,上田西から事件のあったG-04やA-05の巣箱を見てから,江与味(えよみ)の方に行った。途中,小森の巣箱(P-07)の状況を小型カメラで確認しようとした。

どうも中がおかしい。親鳥の死骸がある感じがする。すぐに電柱登り機を準備して巣箱のふたを開けてみた。やはり親が死んでいた(図1)。くちばしが赤いので,オスである。

図1.小森P-07の巣箱の中で死んでいたブッポウソウのオス。
巣箱内ではオスが暴れたためだろう、胸や腹部のやわらかい羽毛が
散乱していた。不思議なことに翼の方は,両方ともきれいなまま
であった。

このブッポウソウの死体には大きな特徴がある。頭部,頸部,胸部は白骨化が進んでいるが,翼の方には全く損傷が見られないことだ。頭から首,胸部から腹部に生える柔らかい青緑色の羽毛は,巣箱の中に散乱していた。化け物に襲われた際に,親はだいぶ暴れたのだろう。

実は,この場所(P-07)はA-05と並んで,もうだいぶ前から卵やヒナが子育ての途中でいなくなり,親が子育てを放棄したことで,かなり警戒していた。巣箱のすぐ近くにキリの大木があるのと,その周囲に蔓の絡まった鋼管柱が2本立っている。ヘビが,蔓を登って電線に達し,電線を伝って巣箱に侵入するというよくあるパターンである。

ビデオカメラを仕掛けた巣箱では,夜になると巣箱の上から長い舌をヒュルヒュルと伸ばしながら,巣箱の中に侵入するアオダイショウというのが定番だ。とんでもなくおぞましい光景である。化け物の正体は,状況からあれこれ議論しても,みんな違うことを言う。ビデオカメラをかけて証拠をつかむのが一番良い。20m以上も電線を伝ってくることがある。

P-07の巣箱もアオダイショウが入ったのであろう。巣箱の中には何匹かヒナがいて。まずヒナが全部食べられたであろう。しかし,ヒナだけでは足りなかったのか,あるいはブッポウソウが大暴れしたせいか,化け物はブッポウソウを頭から吞み込んだと思われる。

アオダイショウは,おそらく1.3~1.5m級の大蛇だろう。まず首まで呑み込み,たっぷりと胃から消化液を出し,数時間かけて頭部と頸部を溶かしたに違いない。さらに口を大きく開けて,胸部を思いきり飲み込んで,消化したに違いない。足はやせ衰えており,消化でもされない限り,こんなに細くなることはない。そして,もうこれ以上吞み込めないところで,死んだブッポウソウを吐き出して巣箱から逃走したと思われる。グロテスクの極みであるが,こんなことにショックを受けていては,野生生物の研究などできない。

巣箱の掃除のときに,巣箱に死んだ個体が1匹だけ出てくることがある。最初は,最後に残ったヒナが自力で巣箱の入り口に登ることができず,外に出られないまま巣箱で死亡したと思われた。しかし,よく調べてみると,巣箱に残っているブッポウソウは,幼鳥ではなく,成鳥の可能性が強くなった。

去年(2020)は,多様性プロジェクトの巣箱で4件ほど,中山良二さんらが設置した巣箱で3~4件発生した。繰り返すが,親はヘビとの交戦でストレス死になったのではなく,化け物(大蛇)に飲み込まれた可能性が高い。そのうちにはっきりした証拠をつかみたいが,写真を公開するのは,はばかられる。

私たちは,ヘビの侵入についてはものすごく神経を尖らせている。ビデオカメラを設置している巣箱では,電柱や配線にヘビ除けを設けている。にもかかわらず,毎年ヘビが親鳥を捕食するケースが,5~10件ほど発生していると考えられる。ヒナのみ捕食されたケースはさらに多いだろうが,親子ともども突然消えてしまうので何が起きたかわからない。

電柱をまっすぐ支えるために,片側に支線が張ってある電柱では,ことのほかアオダイショウにやられやすい。ヘビは,電線を伝ってくるケースが多いが,どうしてその電線を伝ってゆけば,巣箱に到達できるとわかるのか,非常に不思議である。ヤコブソン器官をもつというだけでこんなに優れた行動が可能になるのだろうか?

アオダイショウは一度巣箱に侵入したら,あとは化け物自身が死ぬまで毎年巣箱を襲う。

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