令和3年(2021)6月29日(火)
失敗の巻
6月も終盤になり,多くの巣箱ではヒナが成長し,親鳥はオスとメス,代わる代わる巣箱にエサ運びをしている。同時に,巣箱の近くに侵入者(私)が現れると,激しい威かく行動を示す個体が多くなっている。私はブッポウソウの子育てを研究するためには,威かく行動(英語ではthreatening behaviorと表すことが多いようだ)を理解する必要があると考えている。
なぜならば,巣箱の中のヒナの抵抗力は弱く,親が守ってやらなければ,捕食者が侵入してヒナは食べられてしまうからである。特に巣立ちが近づくと,親の攻撃行動は激しさを増す。
侵入者を威かくするというのは,人間で言えば,自分の意に沿わない行動をする他人に対し,激しく叱責することと似ている。事は一瞬にして起きる。呑気に対応している時間はない。実力行使で止めたいが,うかつに手を出すと返り討ちに会う可能性もある。まずは,派手な怒りのパフォーマンスをしながら,できるだけ大声を出して侵入者を追い払おうとする。生物の社会では,こういう行動パターンは,相手を追い払うのに成功することが多いのだろう。
侵入者(私)が巣箱の中を調べようと,カメラのついた継竿(つぎざお)を持って巣箱に近づくと,ブッポウソウはヒノキのてっぺんから飛び立ち,上下に激しくアップダウンを繰り返す。
威かく行動を撮影するカメラは,SONY, RX10Ⅲ。近澤峰男さんからお借りしたカメラだ。レンズはVario-SonnarというZeiss製のレンズを使っている。Zeissのレンズは質が高い。resolutionはCanon 600mmレンズに比べてそれほど大きなそん色はない。今までは静止画が多かったので,focusエリアを「s」(何の略か不明)に合わせていたが,前後左右に激しく動く被写体については,シャッターが作動しない。
図2は,ヒノキのてっぺんを離れて強く羽ばたいているブッポウソウ。Focusの合う範囲を「s」(shortのイニシャルではなさそう)から「L」(これはlargeか?)に変えて撮影した。しかし,シャッターは作動するが,なかなかうまくfocusが合わず,ぼけた写真が多くなってしまった。
上下運動を繰り返すと(ヒノキから直接もある)頭部をこちらに向けて,羽ばたきながら侵入者に近づく。ある程度の距離になると羽ばたくのをやめて,滑空(と言っていいのかわからない)に入る。図3のように羽を広げている場合もあるが,半開きの時もある。
図4では,ブッポウソウは羽を広げたまま目標に突撃している。航空機で言えば,魚雷を使う艦上攻撃機(例えば,太平洋戦争中に使われた97艦攻や天山)ではなく,まさに急降下爆撃機(ユンカース,99艦爆,彗星など)と同じ攻撃パターンである。ただ,攻撃する相手に認識される必要があるだろうから,進入角度は艦上爆撃機に比べて浅い。
図5の上2段は,focusが合っているが,バックが空(この日は曇り)なので,くちばしは橙色であるのはわかるが,体はどうしても黒く写ってしまう。一番下の写真(図5)になると,私から5mぐらいまで近づいているので,いわゆるピンボケの写真になってしまった。それでもよくシャッターが切れたと思う。
ブッポウソウは侵入者に対して最も近づくと「パシッ」という音を発して反転に入る(図6)。これもピンボケ。すみません。
吉備中央町のブッポウソウは,私がしばしば巣箱を見に行くものだから,私にかなり慣れているかと想像する。本当に攻撃に来るというより,何か遊んでいるのではないかと思えるときがある。
結局,最後までfucusを合わせようと思ったら,フォーカスエリアではなく,フレキシブル・フォーカスポイントかエリアを選択する方がいいのかもしれない。いずれにしても,ブッポウソウは黒色にしか映らない。皆様方には,つまらないことに時間をかけて,バカなことをやっているとしか映らないかもしれない。私はこういうことがやりたいのである。価値観の違いということで,ご理解いただけると大変ありがたい。