【ブッポウソウ総合情報センター】吉備中央町から江与味にかけての里山(真夏の一歩手前)

吉備中央町から江与味にかけての里山(真夏の一歩手前)

令和3年(2021)6月16日(火)

里山の空は,先週末から再び梅雨の空に戻った。6月15日(火)は,吉備中央町の上田西・案田(あんだ)から県道429号を通って江与味(美咲町)にあるブッポウソウの巣箱を調べた。

吉備中央町は,以前は西側の賀陽町,東は加茂川町に分かれていたが,だいぶ前に両町が合併した。旧賀陽町は,吉備高原に見られるように平坦な地形が広がっているが,東側の旧加茂川町は急峻な山々が連なっている。旧加茂川町のさらに東にある江与味(えよみ)は,急峻な山々の中に人家が立ち並んでいる。

図1.吉備中央町から江与味に抜ける429号沿いの森。
スギの大木が立ち並ぶと素晴らしい景観になる。

の左下の方をご覧いただきたい。白く写っている部分は,マタタビである。岡山県の中部から北部一帯にかけて,今の時期はマタタビがよく目につく。マタタビはつる性の植物で,白く見えるのは,今年新しくできた葉っぱであり。マタタビの花はすごく地味で,ちょうどお茶の木の花をこじんまりした感じと思ったらよいだろう。マタタビの蔓のすぐ近くに来ないとわからない。

少し脱線するが,マタタビの実は新潟県では(多分秋田県でも)塩漬けにして酒の肴にするようである。マタタビの実には,猫をうっとりさせたり,ヨツボシクサカゲロウ(昆虫)の成虫を誘引する物質が含まれている。活性物質は,3種類のアルコール(何とかオールとつく有機物質)から成り,1種類は共通のアルコールで,他の2種類は猫とクサカゲロウに別々に効果がある。人間がうっとりするのは,マタタビの実に含まれた活性物質のせいではなく,飲んでいるビールやお酒のせいであるから(確かにこれもアルコールには違いないが),お間違いなく。早い話,昆虫にしても哺乳類にしても,アルコールが入るとめろめろになる種類が多いということか・・・。

図 2.里山の針葉樹林。手前がヒノキで,後方はスギ。この森は間伐はやって
なさそうだが,割とうまく保た れているという印象を受ける。もう少し
うっそうとしてきたら,杉田林業が伐採に来るだろう。里山の森や林 は,
針葉樹林であれ,広葉樹林であれ定期的に伐採が必要である。こんな感じの
場所に巣箱を設置したら, 吉備中央町やその周辺では,ブッポウソウは必ずと
言ってよいほど入る。

小森(吉備中央町)から江与味にかけては ,山々の斜面はさらに勾配を増す。ブッポウソ ウはたくさん通過しているだろうが,巣箱を掛けにくいところが多いのと,アクセスも時間 がかかる。

江与味に行くひとつ目のトンネルを抜けると,左の山に登る道がある。100 m も登れば桐の大木と数件の民家があり,そこで道はどん詰まりとなる。そこにグミの木があって,ここの グミは大粒でえぐみが少なく,結構いける。今はグミを食べる人はいないので,黙ってもら っても怒られることはない。もし近くに人がいたら,グミもらうよとひと言かければよい。

図3.ここのグミはえぐみが少なく,結構いける。枝が傾くほど大量に実がなっている。

里山の人家の庭に植えてあるグミの実はえぐいのでうまくない。「えぐみ」は「グミ」と関係があるかと調べてみた。「えぐみ」は「エゴい味」が起源のようだ。えぐみの主成分は,ホモゲンチジン酸とシュウ酸カルシウム。ホモゲンチジン酸の方はよく知らないが,シュウ酸カルシウムは腎臓結石の元になる物質と思われる。えぐみを除くには米ぬか,重曹,灰あく汁につけるとよいそうだが,あまり食べすぎないようにした方がよさそうだ。

この場所(P-07)は,巣箱を設置してから,ブッポウソウ同士のけんかに加えて,桐の幹と枝を伝ってアオダイショウが入り込んだとみられる年もあった。4~5年前に設置してから無事に幼鳥が巣立つことは少なかった。今年は桐の下草が除かれ,ヘビは登りにくくなった。今年(2021)は順調に卵温めが進んでいる。もう3~4日すれば,4匹のヒナが誕生するだろう。

また余計なことを書いてしまうが,去年(2020)この巣箱の掃除に来た時に,あまりの疲れから,軽トラのとなりで寝込んでしまったことがあった。下で農作業をしていたおばちゃんが,誰か訪ねてきた人がいると思って,カブで道を上ってきた。人が倒れこんで死んでいるかと思った,と言われた。

429号のトンネルを2回抜けると江与味に入る。「江与味製材」の脇から川沿いの,隘路(あいろ)とまでは言えなくなったが,狭い道を抜けると平地に出る。道のわきにある看板に「真庭市」とあるので,自分が勝手に江与味と呼んでいるだけで,行政区分は真庭市に入るかもしれない。

江与味の集落には,レトロな古民家も多く,なかなか良い雰囲気の里山感を醸し出している。

図4.F-10からN-11の巣箱に向かう途中の坂道に咲いていたカキツバタ
(ショウブかもしれない)。多くの場所ではカキツバタの花は散ってしまったが,
ここだけは遅咲きの品種が咲いていた。

F-10(図1)は坂の途中の小道から入ったところにある空き地から撮影するといい写真が撮れるかもしれない。道沿いの小さな畑で採れる野菜をすぐ脇の無人販売所で売っている兄さんがいるので,(もし畑にいたら)ひと言声をかけてから撮影に入るとよいだろう(図4)。よい写真が取れたら,キュウリの2本(多分100円ぐらい)も買って帰ればよい。

坂の途中にN-11の巣箱があり,毎年知らないうちにブッポウソウが産卵をしている。さらに坂道を登ると尾根道になり,林の中のうねうね小道を5分も走れば,次の集落につく(名前は知らない)。道路端に最初に目に入るのが,M-01の巣箱である。3年ほど前にメスがひとつ卵を産んだあと落鳥した。オスは一か月以上一匹で巣箱を守っていたが,とうとういなくなった。

その年以来,同じオスがM-01の巣箱に来ている気がする。去年(2020)は,人家を建設する予定で電線と電柱が移設され,中にヒナがいる巣箱が降ろされてしまった。ヒナはすぐに野生動物に持って行かれてしまった。ひと言連絡してくれれば,こういう悲劇は容易に回避できるのだが,事が起きた後に発覚すると,ご本尊のNTTを含めてどこの工事業者も自分は知らぬ,存ぜぬ,の一点張りになる。そういうことでいちいち腹を立てたらきりがない。

M-01は,今年はひとつ前の電柱に移設した。それでも新築の人家の目と鼻の先に巣箱が見える。それでも今年もまたブッポウソウが入った。おそらく今まで来ていたのと同じオスと,新しくつれてきたメス(足環がついていたので,吉備中央町で生まれたメス)のペアであろう。新築の家の方は電気工事をしているということで,電柱の途中に蛍光灯がついた。

今年(2021)は,M-01の巣箱では子育てがうまく行くだろう。ただ,写真を撮るとなると家がすぐ近くだし,ブッポウソウといっしょに人家が写ったら,家に住む人はいい気分にはなれないかもしれない。ということで,この巣箱(M-01)は撮影禁止とさせていただく。

この巣箱は,もう自分では掃除できない。幸いに,そこの家の方がやって下さるそうなので,掃除の方はお任せする。江与味は住民の方々が,ブッポウソウに対して非常に好意的で,自分たちでブッポウソウの里を立ち上げ,(私の関与がなくても)住民が協力し合ってブッポウソウの里を維持することができるようになるかもしれない。

図5.ノカンゾウの変種か栽培品種? あるいはユリか?

話変わって,坂道の途中にはノカンゾウの栽培品種(ユリ?)が咲いていた(図5)。本当にノカンゾウの品種かは不明だが(調べればわかるが,今はその時間がとれない。)「俺たちはやっとこの道端を生息場所として選んだ」。のだから・・・,何があっても「ここは,立ちノカンゾウ!」と言って名前を知らないのをごまかす。

図6.B-14の巣箱(中央)と手前のため池。
ちょっと富栄養化が進行しすぎている感じあり。

狭い川沿いの道を抜け,平地に出てすぐ右側に立派な神社がある。そのすぐ近くにB-14の巣箱がある(図6)。巣箱はため池の縁の田んぼの畔の電柱にかけてあり,ここは毎年ブッポウソウの子育てがうまく行っている。近澤峰男さんが見つけてくださったのだが,B-14ノ池を挟んで反対側の空き地(道路の縁)からブッポウソウが撮影できるだろう。

ブッポウソウは撮影場所のすぐ後ろのヒノキ林に待機している。撮影場所の真上は,木々の緑で覆われているので,ここにいてもブッポウソウの行動には大きな影響は出ない可能性が高い。ぜひ一度トライしてみていただきたい。

江与味は,2年ぐらい前から若い人が急に増えだした。江与味の巣箱は全部で10個ほどなので,観察場所を含め,一人の熱心な若者が主導し,住民の協力を得て運営することができるように思える。

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