師走の高知

12月14日は高知県須崎市の池ノ浦(港)に行きました。購入した十脚甲殻類の標本はまだ冷凍で整理していないので、とりあえず途中の風景などお送りします。高知の自然を楽しんでいただけるとありがたく存じます。

岡山から四国に行くには,瀬戸大橋(図1)をわたります。また、四国に入ってからは下道(国道)を行くと、優に高速の倍以上の時間がかかります。ということで、岡山から高知インターまですべて高速です。土日は瀬戸大橋通過料と高速道路料金がだいぶ安くなります。


図1.瀬戸大橋を通過中。風があることが多いので,スピードは出せない。14日は快晴。

四国はまだ雪はありませんが、2月ごろに笹ヶ峰周辺(図2)では山が白くなることがたまに(まれに?)あります。

図2.笹ヶ峰トンネル(全長4.3km)の手前。まだ雪はなく、車も少ないので快適な走行を楽しめる。なお、笹ヶ峰の標高は1、860mと記されている。なぜか四国の高速道では、この場所からの景色をよく撮影してしまう。安全に撮影できるからだろう。

土佐湾はこの日も穏やかなり。太平洋岸に出ると室戸岬はうっすらと見えますが(図3)、足摺岬は横浪半島(宇佐から行く)に上がってからでないと見えません。

図3.海岸沿いの道路(国道14号)から見た足摺岬の方角。桟橋で釣りをしている人たちがいる。
図4.横浪半島から見た太平洋。波は穏やかで快晴。
図5.横浪半島から見た足摺岬の方角。中央にうっすらと見える半島は足摺岬のある土佐清水市か?この場所からだと、足摺岬までは車で2時間ぐらいかかりそう。

横浪半島の池ノ浦に下る細いグネグネ道からは土佐湾の岩礁海岸(図6)が見えます。今沢山手に入る古ガニ類(白亜紀の後半から繁栄が始まった)は、岩礁海岸の20m~50mぐらいに集中して分布していると思われます。

なお、原ガニ類、古ガニ類、新ガニ類という呼び方は、ある人の原著論文(2008)の図を参考にして、私たちの研究チームがつけた名称です。ヤドカリだと、このような呼び方でなく、鋏脚(鋏のついている第1歩脚)の左右対称群、右大型非対称群、それに左大型非対称群がいいかもしれません。いずれもカニ類とヤドカリ類の進化を反映すると思われる呼び方になっています。

図6.土佐湾の岩礁海岸。海底20m~100mぐらいにわたって岩場がありそうだが、実際にどんな感じかは、もぐってみたことがないのでわからない。

私たちの研究チームが現在集めているのは、古ガニ類です。古ガニ類はおじいちゃん・おばあちゃんが乗る小型船を使った刺網で採集されます。もう少し若い(と言っても50過ぎ?)の人たちは、釣り人を釣り場に案内する渡船をやっているようです。

図7.池ノ浦漁港。駐車中の車は、渡船で釣りに出た人たちが乗ってきた車。刺網をやる人たちは10件ほどで、写真左側に停泊している小型船を使う。こういう小型船では、あまり深いところに網を入れることができないが、捕るのはイセエビ、ゾウリエビ、セミエビ、アサヒガニなどだろうから、そう深いところまで網を入れる必要はないと思われる。

いつも気になることがあります。例えば底引網をやると、メヒカリとかニギス、あるいはそれに混じってアンコウやサバなどが入りますが、それ以外にまあ奇妙奇天烈な魚が一緒に入ってきます(写真はいずれ別の機会に)。そういう不思議な形態をした深海魚などは、釣りをしていて引っかかってくることはないのだろうか?

図8.横浪半島の内側には、長い入り江(内湾)が広がる。太平洋に面する海岸とは景色が異なる。内湾は波が弱いため陸上から流れ込んだ土砂のうち、微粒子がプランクトンの分解産物や家庭雑排水に含まれる有機物と結合してヘドロとなって湾内に堆積することが多い。ヘドロの堆積は、干潟の生物相を大きく変えてしまう。ヘドロ自体は、少なければ生物の栄養となるけれども、過剰な堆積は環境汚染を引き起こす。

太平洋は波が荒いですが、横浪半島の内側は長い入り江になっていて、いつも海は穏やかです。カニ類はたくさんいますが、すべて新ガニ類です。道沿いにたくさん無人販売所がありますが、いまはミカンぐらいしか売っていません(1袋200円也。)

図9.横浪半島の内側の入り江に沿って走る道沿いには、多くの無人販売所がある。春になれば、ブンタンとかポンカンなどがたくさん置いてある。
図10.冬場はミカンとレモンぐらいしか置いていない。

宇佐を過ぎると(戻り路)また太平洋岸に出ますが、日本列島の太平洋岸は、南西諸島から関東地方にかけてものすごく波が荒いです。波が荒くないと、陸上から流れ込んだ泥が堆積し、岩礁地帯に住むカニ、ヤドカリ、エビは住めなくなります。だから、瀬戸内海にはこういうエビ・カニ類は生息していません。

図11.海岸沿いの道路から望む土佐湾(太平洋)。このあたりの海底は、海岸の状態から見て砂泥が堆積していると思われる。特に、市内を流れる久万川と鏡川という2大河川の出口が近いので、海底の生物相は池ノ浦あたりの岩礁海岸とは大きく異なっているだろう。サーフィンに来ている人たちも多い。

最後ははりまや橋。自転車の少年の奥にある赤い小さな橋。あまり期待しすぎないで見るとよいです。


図12.はりまや橋。知らないで通り過ぎてしまうことが多い。橋の下に川はなかったと思う。

高知インターに入ったら、あとはノンストップで岡山インターまで200㎞弱。池ノ浦からは3時間以内で岡山に戻れます。

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