ブッポウソウ総合情報センター速報(No. 32)

令和3年(2021)7月18日(日)

子育て7月17日(土)の状況

7月17日,午前中は晴れ間,午後曇り。雲は厚いが,雨は降っていなかった。調査地域は,吉備中央町の椿,豊野,納地,湯山。使われていない少数の巣箱は見ずに,使われている巣箱計45コの内訳を示している。

表1.椿,豊野,納地,湯山における
ブッポウソウの子育て状況。

<所見>
・上記の地域では,設置したほとんどの巣箱で子育てが行われている。
・産卵,ふ化,および巣立ちのタイミングは個体群で同調性(synchrony)が高い。
・一つのペアあたりの平均産卵数はまだ集計していないが,4は超えるだろう。4.1から4.2ぐらいではないかと思われる。
・化け物に襲われた等,途中で子育てに失敗した巣箱はない。1ペア当たりの巣立ち数(平均)は,3.8から4.0ぐらいになりそうである(集計は後)。
・ふ化が遅れた巣箱が1つある(旧H-39の巣箱)。産卵が遅れたためであるが,なぜ他の巣箱と比べて遅れたか,原因は調査中である。

上記の地域だけ見ても,ブッポウソウの個体数は非常に高い増加率を示している。他の野鳥と比べると,異常なほど高い巣立ち率になっているのは間違いない。ただし,表1のデータは2021における繁殖状況を示しており,来年(2022)は大きく変わる可能性もある。

子育て中のブッポウソウが巣箱を放棄する一番大きな原因は,アオダイショウ(ヘビ)によるヒナおよび成鳥の捕食であろう。吉備中央町では,ヘビ対策が進んでいるので,巣立ち率は著しく高くなっている。

卵(受精卵)については,食べられたり,割られたり,捨てられたりすることは多いが,野鳥にとって卵は「消耗品」である。産卵に関する内分泌システムが維持されている間(6月中)は,巣箱からなくなってもまた産卵することができる。2度目の産卵になれば,卵数に有意な減少が見られるが,増加率が多少異なったとしても,巣箱の数(繁殖個体数の上限)は限られているため,個体群の維持には影響を及ぼさないだろう。卵が温めている途中でなくなったり,つつかれて割られるというようなケースが多発しているが,そういうことに過度に神経質になる必要はないと思われる。

一方では,産卵された卵(受精卵)が食べられたり,割られたり,捨てられたりすることの原因は究明する必要がある。

以下,7月17日に調べた巣箱の中から,面白そうな写真をいくつか拾ってみた。

図1.椿にあるH-10の巣箱。スズメのワラ積に勝って,大量のワラの上に産卵したために,ヒナのいる位置が巣箱の入り口に近い。産卵が遅れたために,まだ羽軸ヒナの段階である。羽軸ヒナは2匹見えるが,これらの下に発育の遅れた赤ヒナがひとついると思う。7月17日。

図1は椿にあるH-10の巣箱の中を示している。この辺りはスズメの勢力が強く,常時巣箱を見張っていないとすぐにスズメに占領される。

図2.豊野にある旧H-39の巣箱。ここは一時田んぼが鉄の防護柵で覆われたため,入れなくなった。近くの電柱に「新H-39」を設置してみたが,互いの距離が近すぎるせいか(50mも離れていない)ブッポウソウ同士のトラブルが起きているようだ。トラブルの合間を縫ってスズメがワラを運んで,ブッポウソウの卵を産めてしまう事件が続いている。7月17日。

図2は,豊野にある旧H-39の巣箱。この一帯はブッポウソウが巣箱を移動したり,卵が割られたり,なくなったりの事件が多発している。怨念に満ちたブッポウソウが活動しているかもしれない,などと想像してしまう。

図3.豊野にあるH-03の巣箱。ヒナが顔出ししていたので,これから巣立ちが始まるだろう。7月17日。

図3に示した巣箱(H-40)では,見に行ったときにヒナが巣箱から顔を出していた。近くにあるH-40の巣箱では,ヒナが飛び出したが,H-03では引っ込んでしまった。今日(7月18日)に巣立ちが始まり,おそらく7月20日には終わってしまうだろう。こういう巣箱では,2匹の親の警戒が相当激しくなっている。特にオスは,威かく攻撃を何度もかけてくることが多い。

図4.天福寺の巣箱。ヒナ4匹,巣立ちが近くなっている。

ラストは図4に示した天福寺(H-19)の巣箱。CASIO Exilimで撮影したときには,巣箱の中が暗くてよく見えない。ヘビが登ったのではないかと想像したが,岡山に戻ってモニターで拡大映像を見ると,4匹順調に育っていることがわかった。巣立ちは23日ごろになりそう。24日から25日にかけてが,撮影の最後のチャンスになりそう。ここは初夏にはいい写真が撮れた。

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