令和3年(2021)7月3日(土)
6月下旬の昆虫類(クワガタムシ全開)
6月下旬になると,里山の広葉樹(コナラ,アベマキ(クヌギ),ナラガシワ,アラカシ)では,地面からの吸収量が増加するのだろう。樹皮がめくれた箇所や,シロスジカミキリの幼虫の食害によって樹幹に傷がついた個所から樹液が浸みだしている木々をよく見かける
図1(左)は,6月29日に吉備中央町の「北」(地域名)にある雑木林を示している。アベマキの木にそんなに樹液がたくさん出ているとは思えないが,木を蹴るとクワガタムシが落ちてくる。この日は,蹴った後に道路上にノコギリクワガタのメス(図1の右上の写真)とコクワガタのオス(図1の右下の写真)が落ちていた。ノコギリクワガタはオスも落ちたと思うが,草むらだったのでそのままにしておいた。これらのクワガタ(図1)も,写真を撮って草むらにポイ。
こういうところ(図1左の写真)は,定期的に木を伐採し,下草を刈っておいたら,クワガタムシが発生し続けるだろう。
同じ日(6月29日)に豊野の山の中を軽トラで走っているときに,道端に大きなアベマキがあって,2本生えたうちの片方が切られていた。切られた方の切り株から樹液が出ており,そこにいろいろな昆虫が集まっていた(図2)。
5~6匹ほどのカナブンに混じってオオスズメバチもいた。この季節には,樹液が出ている木だと,オオスズメバチが来ていることが多い。動きは割に緩慢なので,怖がらずに捕虫網ですくい,足でつぶすというのがベストかもしれない。顔を指されると大変なことになるので,注意が必要である。私は小さいころに顔面を2度刺され,2回目はアナフィラキシーに陥って,4~5日寝ていた記憶がある。重症になったが,運よく死ぬことはなかった。
オオスズメバチは,草の生い茂った土手によく巣を作っている。子供たちがよく遊ぶ運動場は,できる限り草刈りをして,オオスズメバチの発生しにくい環境を整えておくことが大切である。
樹液には,コクワガタやスジクワガタ(?)も来ていた(図3と図4)。スジクワガタは間違いかもしれない。しかし,今年(2021)は定番のオオムラサキが全く見られない。ミヤマクワガタもまだ見ていない。。
6月29日は,上野から吉川,さらに岨谷から大和を回り,西(地域名)から北(地域名)に出て,納地(のうち)から豊野に行き,峰ピョン谷の基地に戻っている。全行程は100kmぐらいになっただろう。岡山市内からだとさらに往復70㎞が加算される。
県北で燈火採集をやれば,ブナ帯だと,カブトムシ,ノコギリクワガタ,ミヤマクワガタに混じってヒメオオクワガタ,オニクワガタ,アカアシクワガタ,コクワガタ,スジクワガタ,近くに小川があれば,夜中には天然のイワナが捕れる。ただし,片手に懐中電灯と,もう片方には魚をすくう「たも網」を持って,クモの巣を何度も払いのけ,上流に登ってゆかねばならない。昔は,焼山奥林道沿いの小川にはずいぶん天然イワナがいたが,今は林道自体が奥まで行けるか不明である。
また,今はクマに遭遇する可能性が高くなっているのではないだろうか。岡山県では,ツキノワグマが人を襲ったのは今まで聞いたことがないが,そろそろ事故が起きてもおかしくないほど里山は荒れ果てている。
今,岡山自動車道を対面2車線化を行っていて,掘った土を多くの谷に埋めている。そういうところは平地になっていて,すぐ近くで木を伐採している。こんなところで発電機を使って明かりをともせば,クワガタムシの普通種であれば,たくさん採集できると思う。寝っ転がって燈火採集ができるところはそう多くない。
里山では定期的に木を伐採する方が,多くの人たちが自然を利用できる機会を増やせるだろう。カブトムシ,クワガタムシ,タマムシなど甲虫類にとっては,森や林を放っておくのが一番悪いように思われる。しかし,いまの社会では木を伐採するニーズがない。無理に伐採しようとすれば,いびつな自然保護(つまり,保護のための保護)になりかねない。伐採のニーズがないこと,収入がないこと,(人の)老化が自然保護をできにくくしている。
里山は,山林の手入れがされなくなり,林床はイノシシの格好の住みかになっている。田んぼの周囲は農薬(枯葉剤)がまかれ,イノシシが出ると言っては田畑を電気柵で囲い,昼間から電気を流しているところもある。電気柵の中には高い電圧をかけているところがあり,ブッポウソウの巣箱を見て回るときに電線に触れると,ぱちーんという音とともにすごいショックを受ける。電気柵がないところは格子状の鉄棒を一面に張り巡らしている。
里山では,子供たちが遊べるところがなくなっている。そのせいか,昔はよくいた「悪ガキ」の姿も見られなくなった。ブッポウソウを飼育してみようなどという発想は,悪ガキでないと生まれないよ。もちろん飼育許可はとってあるので,悪しからず(図6)。