生物多様性研究・教育プロジェクト「進化生物学の研究」 2026‒No. 1:国立公園内(西表島)での生物採集と行動規範

2026年1月1日(木)

「西表島エコツーリズム推進全体構想」(竹富町西表島エコツーリズム推進協議会)
 今(2026)から5年前の2021年7月26日に「奄美大島」「徳之島」「沖縄島北部」および「西表島」が世界自然遺産に登録された。自然遺産の認定を受けて,竹富町では「西表島エコツーリズム推進協議会」が立ち上げられ,2022年12月に「西表島エコツーリズム推進全体構想」が公表されている。公表と同じ年月日(2022年12月7日)に環境省の認定があったと記されているが,環境省の認定があれば法的拘束力が生じるのか,またどれほどの強さの拘束力が適用されるか不明である。(だから無視してよいということではない。)私の立場は,竹富町や環境省の立ち上げた「西表島エコツーリズム推進全体構想」の詳細を解説することではない。全体構想の詳細を知りたい人は,竹富町や環境省から公表されているホームページを見ていただきたい。
 私の方は,50年以上前から国立公園内(西表石垣国立公園)で生物の研究を行ってきた。どんな研究かについては「参考文献」にその一部を記した。過去には,私が西表島に行って研究をしようとすると「国立公園内では生物の採集は一切禁止されており,それに違反すると厳しい処罰が下る。」と主張する者が少なからず現れた。また自然科学系の研究者には,野外で研究しようとすると,観光に行くと言って激高する者は少なくなかったと思う。(そういう人たちは,現代生物学の研究は実験室内で行うものという信念を持っている。)西表島が自然遺産の認定を受けたことで,そんな人たちの声がさらに大きくなることが予想される。そんな人々からの強い圧力に屈して,貴重な野外研究を断念することになれば,生物の生態や進化の研究は長い間停滞することになると思う。そうならないためにも,私たちの研究に対し,陰ひなたで非難する人たちの心理について分析してみたい。
 多くの組織には,何かとネガティブな意見ばかり述べる者がいる。そういう人たちは,昔ながらの官僚的人事制度をうまく利用して階段を登ってきた人たちなのだろう。そういう人たちは,自分より地位の上の者には従順であるが,地位の下の者に対し高圧的にふるまう傾向が強い。「魔人ブー」(該当する人はたくさんいる)か「東京大学の官僚主義」による人材育成理念が根本にあると思う。私を非難する人たちは,魔人ブーや東京大学官僚主義の恩恵を受けて階段を登った人たちに多いようだ。・・・となると,そういう人たちのやっかみが原因になっている可能性が高い。結論として,自分で判断できるのでお説教は不要ということ。

図1.西表島の全景。どこに行ってどんな研究をするかは,自分が決める。野外で研究する際には,自然保護法とか入山規制等の法律やガイドラインがあるので,それらに従って行動する必要がある。何かとネガティブな意見を言う人たちは(官僚主義的な性格を持つ人が多い),形式に対して強いこだわりがあり,批判されることを極端に恐れる。大学にいると,そういう人たちが大きな顔をして自分たちの偏見を押し付けてくる。フィールド・ワークは,そういう偏見の根を断ち切らないと進められない。その点,NPO法人(生物多様性研究・教育プロジェクト)は,命令系統が大学とは異なるので理不尽な押しつけは拒否できるというメリットがある。理学博士(農学博士や学術博士でも構わない)という学位は,自分で物事を決めるにあたって不可欠な要件である。博士号は自動車の運転免許に対応する。飾りではない。

図2.西表島におけるゾーニングと利用フィールド。国立公園内における自然科学の研究。「西表島エコツーリズム推進全体構想の概要」(竹富町観光課)から転写。一般利用ゾーンには田んぼやサトウキビ畑も含まれる。以前に古見の日田にある田んぼの縁にある湿地帯にある塚にオキナワアナジャコのトラップをしかけたら,トラップを全部捨てられてしまったことがある。湿地帯は私有地ではないだろうから,トラップをしかけてオキナワアナジャコを採集するのは違法ではないと思うが,野外で研究しているとこういう類のトラブルが頻発する。ブッポウソウの巣箱かけをしている時も,同様なトラブルが頻発する。トラブルが起きたら名前など言わず,現場から一刻も早く立ち去ることをお勧めする。自分に都合の良い行動規範しか持ち合わせていないじいさんばかりで,とにかく話ができるような人たちではない。

図3.ゾーニングと観光利用の考え方。「竹富町西表島エコツーリズム推進全体構想の概要」から転写。昆虫採集がしたいのであれば,一般利用ゾーンの道沿いで自由にできる。ただし,条例として一般利用ゾーンでも採集禁止になっている種類がいる。保護ゾーンであれば,原則として昆虫採集は禁止と考えてよい。

図4.入林届(林野庁)の書式。 
「竹富町西表島エコツーリズム推進全体構想の概要」を検討した結果,私が国立公園内(西表島)で研究・教育活動を行うことに大きな支障はないとの結論に至った。今まで通りに研究・教育活動を進めて行けばよい。
「竹富町西表島エコツーリズム推進全体構想」は,観光目的で西表島に来る人たちにとっては,ちょっと面倒な足かせになるだろうが,国立公園内の環境保全を考えれば,多少の不自由は仕方ない。一方で,この全体構想は西表島に住む住人ならば,国立公園内で何をしても構わないとの印象を与える。ヤシガニの保護についても言えることだが,「生活がかかっている」という脅し文句に日本の行政は弱い。私の勘では,規制をかけようとすると魔人ブーの政治家が横やりを入れてくるのではなかろうか? 私も鳥取魔人ブー(政治家)の横やりに被害を受けたことがある。
 話は変わるが,図2(ゾーニングおよび利用フィールドの一部)に赤で示した遊歩道を観光目的で歩くのであれば,町長への届け出が必要になる。私の場合には研究目的で入山するので,届け出は要らない。もちろんガイドなどつける必要はない。「竹富町西表島エコツーリズム推進全体構想の概要」には,研究目的であれば保護ゾーンに入ることができる。
 図2の赤い線で示した場所を含めて,山中を歩くのであれば林野庁に入林届を提出するとよい。(竹富町の観光課とか教育委員会は,相談すると,どうでもいいことで何かと文句をつけてくる。)美田良から山を越えて白浜に抜ける旧道から,旧横断道が島の東側に伸びている(途中まで作って放置)。昨年(2025)何十年ぶりに歩いてみた。観光であろうと研究であろうと,旧横断道に入るには入林届は必要だろう。
 しかしながら,西表島の山道は,道から5 mも離れればもと来た道を見失うことがある。そしてイノシシ道に迷い込む。イノシシ道は崖の上で消えている。落ちて死ぬイノシシも毎年何匹もいるだろう。入林届があるからと言って安心し,登山道を外れてジャングルに入り込むと元の道を見つけ出すのに大変な苦労をすることがある。迷ったら気を落ち着かせて,木の枝に括り付けられたリボンを探すこと。すぐ近くに道が見つかることが多い。
 実は,私の研究場所は海岸の潮間帯や海岸沿いの藪の中である。昨年(2025)白浜から旧横断道をハテルマムルまで歩いたのは,昔の思い出をたどってみたかっただけで,まず山に入ることはない。1972年に西表島ではヒゼンダニが大発生して,膝から下に大量の水疱ができた。完治するまで恐ろしい痒さが数か月持続した。

図5.舟浮(西表島)にあるトンネル内で子育てをするカグラコウモリ。このトンネルは集落のはずれの海岸沿いにあり,太平洋戦争時に陸軍によって作られたのだろう。西表島の西側海岸は地盤がもろく,駆逐艦の主砲でもぶっ放されればひとたまりもなく崩れる。20年前に舟浮を訪れた時には,トンネル内にコウモリがたくさんいたが,ここ10年ほどはあまり姿を見ない。もう20年以上前になるが,松村澄子氏がこの場所でコウモリの子育てを研究していた。この写真は研究を手伝いに行ったときに撮影された。ユーラシア大陸にすむコウモリは,狂犬病ウィルスを持っている可能性が高い。幸いなことに西表島のコウモリは狂犬病ウィルスを持っていなかったからよかったが,松村氏は狂犬病予防ワクチンの注射もせずに,コウモリを捕獲していた。コウモリの前足には銀色の足環がついている。(私は中国南部やバングラディッシュに渡航するときには3種混合ワクチンの注射をした。)松村氏は,地元の人物と大きなトラブルを起こし,山口に引き上げたという話が伝わってきた。

図6.道を歩いていたヤエヤママルバネクワガタ(20年前に撮影)。場所はよく覚えていない。ヤエヤママルバネクワガタは,一般利用ゾーンで見かけても採集は禁止になっている。クワガタの盗掘マニアは,過激な撮り鉄とよく似ていて,クワガタの珍種に異常な執着がある。秋になると,一般利用ゾーン,保護ゾーンに関わらず,歩き回って見たクワガタをみな持って行く。石垣島のオモト岳とバンナ岳周辺は相当やられているが,西表島も危ない。マナーの啓発などでは阻止できない。

図7.アカショウビン。春になると,繁殖地への移動(migration)のために西表島に立ち寄る野鳥は多い。4月に琉球列島を訪れると,生暖かい風の吹く夜には,あちこちでアオバズクの鳴き声(ホー・ホー・ホホー)が聞こえる。沖縄本島の本部半島には巣箱が架けてあったが,アオバズクかコノハズクの営巣に使われるのだろう。アカショウビンは,アオバズクより少し遅れて西表島にやってくる。5月になるとよく姿を見かけるようになる。確か,「ピィロロロ・・・」とか鳴いていたと思う。写真の個体は,近澤峰男さん(故人)が森林公園で撮影。私も西表島でアカショウビンの写真をいくつか撮ったが,うまく写っていなかった。何でこんなにくちばしがでかいのか?

図8.イワサキクサゼミ。リュウキュウの生物には「イワサキ・・・」の名を冠した種(和名)が多い。石垣島地方気象台で気象観測に携わる一方で,八重山の生物や歴史・文化を愛し続けた岩崎卓爾氏(1869‒1937)の苗字にちなんで命名されている。「イワサキ・・・」は,和名についてはいいとは思うが,学名に入れると学術論文の中でバイアスが生じる。例えば丘浅次郎氏(1868‒1944)は カンテンコケムシに Asajirella gelatinosa Oka, 1891と命名した。カンテンコケムシに共通した特徴があれば,それを属名(genus)として,Gelatina gelatinosaとかつけておけば良かったと思う。当時(明治・大正時代)は流行だったのかも知れない。しかし,昆虫や十脚甲殻類では昭和に入っても続いた。学名に個人の名前を付けようとする人たちは,概して名誉欲が強く,えげつない人が多い気がする。

図9.研究棟の窓の網戸に飛来したツマグロゼミ。鳴き声で探すのは不可能だろう。琉大の熱研で初夏に1か月研究を行ったことがあるが,研究棟の窓には夜な夜な多くの昆虫類が飛来した。特に多いのは,コガネムシ(多分イシガキコガネ)である。ヒラタクワガタもたくさん飛来したが,ある程度以上のサイズは飛んでこなかった。大きくなると樹洞に対する執着が強くなるのだろう。ヨナグニサンが大量に来た年もあった。今はタイワンムヤツボシハンミョウ(外来生物)がやたらと多い。

図10.ハクサンボク(?)の花にとまるオオゴマダラ。リュウキュウを代表する大型のチョウ。蛹(さなぎ)も全身金色ですごくきれい。昔は木の花の周囲に「乱舞」していたこともあったが,最近は個体数が減ったかもしれない。採集は禁止されていないが,たくさん捕っても標本箱に入りきらない。後になってみると写真の方がよい。

図11.コノハチョウ。西表島では普段見ることはまずないが,10年に一度ぐらいだろうか,川沿いで結構姿を見ることがある。写真の個体は2006年あたりに相良川で撮影された。(羽化してからずいぶん日にちが経っている。)コノハチョウは,沖縄全域で保護ゾーンだけでなく,一般利用ゾーンでの採集も禁止されている。

図12.旧横断道入り口付近から見た美田良(みたら)の田んぼ(2006年だったかに撮影)。西表島は二毛作である。5月に撮影されたと思う。正直に言って,西表島のコメはまずいが,本州と違って品種改良が行われていないのだろう。ニーズを考えれば仕方ないが,本州からうまいコメを輸入すれば西表島のコメ作りは終わる。  

図13.(左)コウトウシランの花。「コウトウ」は台湾島南部の島である紅頭嶼(「嶼」は「島」の意味?)に由来する。大富林道にたくさん咲いている。(右)ナナホシキンカメムシ。体全体が金色の美しいカメムシだが,つかむとカメムシ特有の臭いにおいを出す。ハスノハギリの葉っぱに多く付着している。ナナホシキンカメムシの体表の菌入りは色あせしないので,「玉虫厨子」の代わりに「椿象厨子」を作ったら,数は増やせるだろう。厨子(ずし)は,仏像や経典・位牌などの大事なものを安置・収納するための、両開きの扉が付いた戸棚のことらしいが,ナナホシキンカメではダメか?

図14.(左)大富林道。道の両側にはクワズイモとシロバナセンダングサが生い茂る。樹木の方はよくわからないが,アカメガシワ,ハスノハギリ,ギンネム,リュウビンタイ,ヒカゲヘゴ,ギランイヌビワ,アデクなどが見られると思う。大富林道は晴れている日に歩くと,いろいろな生物に出会えるだろう。林道の入り口にサトウキビ畑(その奥にはお墓)があるので,サトウキビ畑の横にレンタカーを置いて歩けばよい。そのうちにこの辺りに駐車場ができるのだろう。
 林道は車が通れるぐらいの道幅があり,道もそんなに壊れていない。 ゆっくりとであれば軽でも十分入って行ける。500 mほど行けば,浄水場があり,脇の空き地に駐車できるスペースがある。
浄水場のところから仲間川沿いに下りて行く道(亜熱帯植物展示林)がある。川の近くまで行けば,サガリバナがいっぱい咲いている。一方,川沿いでは道がなくなるので,山道に入っていいかどうかということより,身の安全を確保しないと営林署のお世話になるので注意。迷った場合に,携帯も通じるかどうか不明。
 川の近くで道を見失ったら,どんどん歩かずに落ち着いてもと来た道を探す努力をしたらよい。何度か行ったり来たりしているうちに元の道が見つかる。「あれ・・・こんなところを歩いてきたのか?」と思うことがよくある。

図15.(左)アオバハゴロモ(成虫)。ハゴロモは半翅目の昆虫で,カメムシと同じく吸汁性害虫。スケバハゴロモ(「スケベハゴロモ」ではない)もよく見かけるが,こちらはとまった時に前翅が開く。(右)アカメガシワの花にとまるタイワンクロボシシジミ。タイワンクロボシシジミは,アカメガシワの花によく集まる。また,アカメガシワの枯れ枝には面白い甲虫類(カミキリムシ)が入る。枝を切って保管すると,しばらくして成虫が羽化してくる。でも,私は写真の方が好きである。

図16.展望台に立つ場違いな身なりの二人組(自然遺産ではない)。大体こんなところにサンダル履きでついて来るのがおかしい。20年前に撮影。大富林道(左の写真)は,仲間川展望台までは一般利用ゾーンのはずなので,町長に届け出を出す必要はない。うっかり届け出が受理されたら,高額なガイド料を請求されるかも。

図17.展望台から見る仲間川の河口域。川に沿ってオヒルギの群落が見える。日本の亜熱帯域の河口には,川に沿ってヒルギ林が広がっている。ヒルギ林が見られる湿地帯の景観をマングローブ(mangrove)と呼んでいるが,別な定義をする人もいる。展望台からは遊覧船が往復しているのが見える。展望台から少し戻ったところに遊歩道があり,15分ほど歩けば仲間川に着く。・・・が,船着き場はない。写真の一番奥(の方が南海岸になる)に見えるのは南風見岳(425 m)。

<まとめ>
 世の中には,本当にいろいろな見方や考え方があって,どれが正しいのか見極めることが難しい。しかも,見方や考え方の「深さ」は人によって大きく異なる。世間で大手を振ってまかり通っている「正しい見方・考え方」などは,実際には存在しないのかも知れない。「正しい見方・考え方」だと思ってうかつに信じて行動すると大やけどを負う,なんてことも普通に起きている。
 今はもう昔の話にはなったが,大学紛争時の過激なリーダーの言うこと(デタラメ)を信じたばかりに,内ゲバに巻き込まれて大けがをした学生な何人もいたし,命まで落とした者もいた。最近では,何とか真理教の教祖の言うことを信じたばかりに,大変な事件を起こした者もいた。もっと規模の小さい事件は,社会のいたるところで発生している。
 問題は,人々が自分の頭で考えることなしに,行動の規範を宗教者とか権威者・権力者の言うことに求めてきたことであろう。権威者・権力者は,もともと権力欲が強い人たちで,見かけは公平さとか公平さを装っても,心の底では如何にしたら自己の権力欲が満たされるかを常に考えている。そういう人たちの言うことを真に受けて行動すると,後で大きなつけが回ってくる。こんな風潮は,現在の大学にはまだ色濃く残っている。
 世の中は,上に述べた弊害の多い行動規範から「法律」や「憲法」を基礎においた行動規範を受け入れる方向に変わりつつある。国立公園内における野外研究も学部長の鶴の一声でやってよいか悪いかが決まるのではなく,例えば「西表島エコツーリズム推進全体構想」というガイドライン(行動規範)ができているので,それに沿って研究を実施するかを決めればよい。決めるのは自分であって上司や権威者ではない。もちろん事前に竹富町にお伺いを立てるという日本独特の卑屈な行動様式も必要はない。基本的には法律の記載された文書をもとに行動すればよい。

<大事なこと>
 国立公園内でなくても条例で採集が禁止されている生物がいる。ただ,採集が禁止されている種類は,普通に道を歩いて簡単に採集できることは少ないので,そんなに目くじらを立てて昆虫採集する者(老人であれ,若者であれ・・・)を非難しなくてもよい。一方では,昆虫採集者について注意すべき点が2つある。
 ひとつは特定の場所に足しげく通う狂信的マニアがいることである。例えば,奄美大島では警告を無視して木の枝に「糖蜜トラップ」をしかける者がいる(何を捕りたいのかは知らない)。西表島では,古見岳登山道周辺のオキナワウラジロガシの林でベニボシカミキリを採集しようとするマニアや,秋に道の上に出てきたヤエヤママルバネクワガタを多数採集しようとするマニアがいる。オークションで売りに出すのだろう。狂信的マニアは,自然環境保全という視点からは悪質性が高いと思う。こういう人たちは,スピード違反者と似て定期的に取り締まらないと,行動はエスカレートする。過激な「撮り鉄」みたいなやつらである。しかし,やつらは盗掘のプロである。そう簡単には捕まらない。
 もうひとつは,マナーの極端に悪い採集者(若い者がほとんど)である。特にひどいのは以下の事例である。西表島では,ミカドアゲハとアオスジアゲハがともに普通種並みに発生したことがある。両者は飛んでいる時には区別しにくい。ミカドアゲハだと思って採集してみると,実はアオスジアゲハだったということが起こる。
 ある年(20年以上前だったか正確な年は忘れた)に,道に飛んでいたミカドアゲハとアオスジアゲハを片っ端から採集し,ミカドアゲハだけは採集箱に入れ,アオスジアゲハの方は胸部を押しつぶして殺し,道に捨てながら採集して行った若者がいた。(複数いたように思う。)私は直後に通りかかったが,確かに道の上にはアオスジアゲハの死骸がたくさん落ちていた。何でも,生かして置いたらまた採集してしまう可能性があるということだったようだが,こういう人たちは,いつ何時も自分の都合しか考えられないお粗末な性格の持ち主である。
 こういうやつらは,「西表島エコツーリズム推進全体構想」への宣戦布告をしているのと同じだろう。過激な「捕り昆」や「変質的昆虫愛好者」に対しては処罰を課してもよいと思う。こういう連中のたまり場として,大原か大富の民宿があるのではないか?闇サイトみたいなところで情報交換を行っているかも知れない。

<亜熱帯の島という独特の環境>
 初めて昆虫採集に来る人は,「西表島エコツーリズム推進全体構想の概要」を見ておけば,どこで採集してよいかわかるだろう。石垣島は良い採集場所がたくさんあるようだが,西表島は山の中に入る道は少なく,開けた場所は少ない。
 ヤエヤママルバネクワガタ,セマルハコガメ,コノハチョウ,ヨナグニサン,ベニボシカミキリなどは,一般利用ゾーン(図2)でも採集は禁止になっているが,これらは熟練した者でないと容易には採集できない。これらの昆虫を狙う連中のたまり場がある。採集禁止の昆虫類のリストを作り,罰則規定も掲載したパンフレットを作り,桟橋の待合所や大原や大富の民宿に置いておく必要があるだろう。
 採集が禁止されていない昆虫の中にも,珍奇種は少なくない。マツダクスベニカミキリやトゲウスバカミキリなどはめったに捕れない。フタツメイエカミキリは発生場所が限られている。イエカミキリは,古い家屋の木材を食い荒らす大害虫であるが,最近は姿さえ見かけない。こういう種類については,わざわざこちらから禁止云々の指示を出すことはない。
 私は,個人的にはヒメカミキリ(Ceresium spp.)が好きである。南の島の夜と言えば,ホオグロヤモリ,7~8 cmもあろうかと思う巨大なクロゴキブリ,巨大なアシダカグモ,ツチボタル,サキシマハブ,リュウキュウヨシゴイと並んで,灯火に飛来する各種のヒメカミキリの姿を見ると,南の島に来たという実感がわく。3月下旬から4月にかけて,しとしとと雨が降り,生暖かい南の風が吹き抜ける夜の風景は何度経験しても色あせない。 

<参考文献>

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  • 京浜昆虫同好会(1973)新しい昆虫採集案内(Ⅲ)‒離島・沖縄採集地案内編。内田老鶴圃新社。
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  • 周文一(2004)台灣天牛圖鑑(全新美耐版)。猫頭鷹出版。
  • 竹富町西表島エコツーリズム推進協議会(2022)西表島エコツーリズム推進全体構想(全体構想)の概要(https://www.env.go.jp/content/000091458.pdf)
  • 谷真介(1976)台風の島に生きる‒石垣島の先覚者 岩崎卓爾。偕成社。
  • 林野庁(2022)西表島エコツーリズム推進全体構想(https://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/okinawa/attach/pdf/yousiki-49.pdf)
  • 琉球大学博物館(風樹館)(2025)沖縄のセミ。ツマグロゼミ(https://fujukan.skr.u-ryukyu.ac.jp/ouchimus/2468/)

<執筆> 三枝誠行(NPO法人,生物多様性研究・教育プロジェクト,プロジェクト長)。
<撮影機材> PENTAX K-rだったと思う。壊れたので10年以上前に廃棄した。レンズはTAMRONを使っていたと思う。

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