生物多様性研究・教育プロジェクト 四季折々の自然の風景と野鳥 2023–No. 20: ササユリ(Lilium japonicum)の保護

令和5年(2023)6月2日(金)

1.はじめに
 5月29日(木)は,長瀬や美原で巣箱を見た後,奥吉備街道(広域農道)を通って高梁市有漢町(上有漢)に出た。県道49号を横切って,栗原有漢線(県道332号)に入り,宮地有漢線(312号)と栗原有漢線の間には,多くの巣箱があり,ブッポウソウの密度も高い。
 県道49号を横切り,栗原有漢線に入ってから数分で,道路左側に山の方に登る坂道が見えてくる。5分も走れば,山の上に出る。山の上は平たんな地形になっており,曲がりくねった小道を走ると長代公民館に着く。公民館の脇には小さな池があり,水面(みなも)はスイレンの葉で蔽われている。まだ花は咲いていない。
 長代公会堂の周辺では,多くの野生動物を目にすることができる。巣箱の周辺ではキジが歩いている。雨水に濡れた葉の上にはアマガエルがくっついている。そろそろオオムラサキの雄姿も見られるだろう。
 公会堂から細い道を上の方に行くと5分程度で峠に出る。しかし,道は細いので,よほど走り慣れた人でない限り,軽自動車,それも四輪駆動で来た方がよい。
上有漢にはクワガタ,特にヒラタクワガタの大きめの個体がいるが,あと1ケ月もすれば,めぼしいところ(樹液の出ている木)は「撮り鉄」ならぬ「取り昆」によってほぼ盗掘される。
 盗掘屋は人に目立たずに隠密行動をするのが得意である。彼らは,樹液の匂いを遠く(20~30m)からかぎ分けることができる。奴らが来たかは,道路から樹液の出る木まで草を踏みつけた跡が残るのでそれとわかる。実際に樹木を調べてみると,この前までいたクワガタがすっかりいなくなっている。御蔵島,奄美大島,石垣島では盗掘防止に大変な努力が払われていると推察される。

2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト)
<撮影場所> 高梁市有漢町(上有漢)。ササユリの自生地(habitat)の詳細は教えられない。
<撮影日時> 令和5年(2023)5月30日(火)。
<Key words> ササユリ,保護,斜面,下刈り,5月下旬,盗掘,
<記録機材> Canon EOS 7D with TAMRON Zoom (28-300mm) Lens; CASIO Exilim。
<参考文献>
ササユリ(Wikipedia)https://ja.wikipedia.org/wiki/ササユリ。
動物の生活と生物の進化(https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/chu/science/support/keyseat/data/rika_2nen2_02.pdf)

図1.長代公会堂の古池にあるスイレン。まだ花は咲いていない。なぜこんなにうまく水の表面に浮くのだろうか?撥水性の問題か?

図2.葉上のアマガエル。静かな風景という点では,葉の上で休むアマガエルの方がスイレンより一枚上かもしれない。しかし,お尻の後ろはおしっこかと思うと,突然静けさが崩壊する。芭蕉の俳句「古池や蛙飛びこむ水の音」に出てくる蛙は,架空の両生類(amphibian)だろう。アマガエルは,葉上にいたとしても,自ら古池に飛び込む可能性は低い。古池に飛び込むカエルはウシガエル。しかし,ウシガエルが日本に移入されたのは明治以降である。なお,最近はほ乳類の起源はハ虫類ではなく,両生類という見方がある。啓林館の「中学理科」のテキストには「近年の研究の成果から,哺乳類と爬虫類は,別物であるという考えが主流となっています。」という記述がある。こんなオカルト性の強い記述で,私(仮説を主張している者:人物は特定できる。)を信じよと言われても,私はついて行けない。ホ乳類様の単弓類がいたとすれば,それは原始ホ乳類(綱)ではなく,まぎれもないハ虫類だろう。図が間違っているか,自分なりに検証してみる必要がある。また宿題がひとつ増えた。

図3.道の脇に咲いていたマメ科(?)の花。赤色のエニシダか?調べている時間が取れず,申し訳ない。多分種名は間違っている。

図4.峠から下の道に下る曲がりくねった小道。慣れない人は普通車では来ない方がよい。軽も四駆でないとまずい。

図5.山の斜面に咲くササユリ(自生地)。ざっと見ただけで10本ぐらい花をつけていた。近くに行っても匂いがしなかった。

図5.山の斜面に咲くササユリ(自生地)。ざっと見ただけで10本ぐらい花をつけていた。近くに行っても匂いがしなかった。

図6.ササユリ。柱頭が上を向くところが面白い。近づいてもそんなに強い匂いはしなかった。良い匂いでもなかった。嗅覚が衰えたか?

図7.ササユリのおしべとめしべ。家に帰ったらユリ特有の強烈な匂いが衣服についていることが分かった。匂いは次の日も車に残っていた。

図8.ササユリの群生地。写真の下半分のように雑草が生い茂るとササユリは全滅する。適度に下草を刈るのが維持には重要と思われる。

図9.巣箱M-07の観察場所(可能性)。巣箱までは20mしかないので,アベマキの木々(クワガタもいそうだ)の陰から撮影することはできる。しかし,ブッポウソウは真上を通って巣箱と待機する枝を往復するので,巣箱に来なくなるだろう。軽トラを小道の奥にバックさせ,車内から撮影できる可能性はあるが,M-07の個体は非常に警戒心が強いので,難しいだろう。M-07では,今まで一度も撮影できていない。

図10.M-07の下に咲いていたノアザミ。茎のとげとげ感が印象的である。日本のアザミの棘は,大陸のアザミに比べて柔らかい。

図11.枯れたススキの間から出てきた小鳥。サメビタキか?距離5m。耕作を放棄した田んぼはイノシシが暴れ放題。ニホンザルの群れも出る。

図12.有漢どん詰まりの景観。中央にフタ取れかけ巣箱がかかっている。周辺には多くの野生生物がみられる。ブッポウソウも多い。

図13.有漢どん詰まりにあるフタ取れかけ巣箱。多様性プロジェクトの巣箱ではないが,小川の奥の林から良い写真が撮れる(距離30m)。

図14。フタ取れかけ巣箱の中。ブッポウソウの卵が2つあった。巣箱は全然掃除されていない。この巣箱をつけたじいさんは管理が悪い。

図15.有漢どん詰まりを上がったところ(P-09)にある墓地。「故 陸軍輜重兵(しちょうへい)上等兵 勲8等 清原高一之墓」と刻まれている。詳細は墓石の劣化が進んで判別できなかったが,「武漢・・・」とあった。中国大陸で戦死されたのだろう。字句が判読不能のお墓も多い。

図16.ヤマサナエ。吉備中央町に戻る途中,栗原有漢線(332号)の道路上に落ちていた。体色が薄緑から黄色に変わっている。

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