生物多様性研究・教育プロジェクト 四季折々の自然の風景と野鳥 2023–No. 19: ブッポ,シジュウカラを攻撃する。

令和5年(2023)5月31日(水)

1.はじめに
 5月30日は朝から雨だったが,次第に小降りになってきた。曇りの予報に変わったので産卵状況の調査に出かけた。まず長瀬から美原にある巣箱を見た。ブッポウソウのペアが早くから来ている巣箱ではすでに卵が生まれており,WA-03では卵4つ,巣箱美1では5つ生まれていた。一方,早くからいた巣箱でも,気配のないところが多かった。巣箱美5は,ブッポウソウは見当たらず,シジュウカラの卵が4つ産んであった。シジュウカラの親もすぐ近くにいた。
 途中賀陽にある図書館によってパソコンを置いた後,山越えの県道156号を通って,有漢町(上有漢)に出た。さらに県道49号を通り,奥吉備街道(広域農道)を上がったところで,小道に入りM-05, M-04, L-03, L-01を調べてからI-01に行った。I-01では,巣箱から10mの電線にブッポウソウがとまっており(距離20mほど),撮影しようとカメラを軽トラの窓から被写体に向けた直後にどこかへ逃げてしまった。
 しばらく巣箱を見ているとシジュウカラのペアが巣箱に近づいてきた(ビデオカメラで撮影)。シジュウカラは明らかにあたりを警戒している様子だった。一匹が巣箱の入り口に近づき,中をのぞこうとする瞬間に素早く巣箱から飛んで逃げた。直後にブッポウソウのオスが猛烈な勢いで巣箱の入り口に飛んで来た。その時に「パチッ」あるいは「カチッ」という「声」が聞こえた。
 この音声(sound)は,ケケケケケ・ケケケケーという,けたたましい警戒音(warning call)ではなく,攻撃音(attacking click)と考えてよいだろう。巣箱の入り口に飛んできたブッポウソウは,勢い余って巣箱の入り口を通り過ぎた。巣箱の前方で水平方向に旋回して再び巣箱の入り口につかまり,一度中をのぞいてから巣箱を離れた。メスは巣箱から100m離れたスギのてっぺんにとまっており,オスはそこ飛んで行き,しばらくペアで遠くから警戒をしていた。
 「カチッ」という攻撃音は,シジュウカラが卵(あるいはヒナ)の上に乗って巣を防衛するときにも出される。普通は,尾を広げて勢いよく「パシュー」と聞こえる声を出すが,時々「カチッ」と聞こえる音を出す個体がいる。ブッポウソウと同じ音なのだろうか。

2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト)<撮影場所> 高梁市有漢町(上有漢)。
<撮影日時> 令和5年(2023)5月30日(火)。<記録機材> ビデオカメラ(SONY HDR-CX680)。
<Key words> ブッポウソウ,シジュウカラ,I-01, 追い払い行動,「カチッ」という攻撃音,attacking click。
<参考文献>
Marler, P. and H. Slabbekoorn (2004) Nature’s Music: The Science of Birdsong. Elsevier.

図1.巣箱I-01にやってきたシジュウカラのペア。ビデオカメラの映像を撮影。もともとはこの巣箱で産卵してブッポウソウに乗っ取られたのだろう。鳥の世界では「巣の強奪」(usurp)は普通に起きることかもしれない。「きれいさ」だけで物を見ていては,自然の本質は理解できない。

図2.巣穴をのぞこうとするシジュウカラ。巣箱に恐る恐る近寄ってきて,もう少しで中が覗けるところまできた。

図3.あわてて巣箱から逃げるシジュウカラ。ブッポウソウが攻撃(羽ばたかずに一直線に飛んでくる動き)してきたことに気づいたのだろう。

図4.逃避直後のブッポウソウの攻撃。この時に一瞬「パチッ」という音が聞こえる。頭はシジュウカラの逃げた方向を向いている。

図5.勢い余って巣箱を通り過ぎるオス。赤いのは肢で頭は写っていない。翼の白紋の面積からオスであることがすぐにわかる。

図6.巣箱の入り口に接近するオス。いったん巣箱を通り過ぎ,水平方向に旋回してまた巣箱の入り口に来た。

図7.巣箱の入り口に到達寸前のオス。羽(feather)が風になびいている。

図8.巣箱の入り口につかまってあたりを警戒するオス。静止しているときれいに写る。EOS 7DにTAMRONのズームレンズを装着。

図9.入口にとまって中を確認した後に飛び立つオス。この後,巣箱の後ろ側にあるヒノキまで飛んで行った。

図10.巣箱の後ろ側にあるヒノキ(距離は100m近くある)。私が来たので,シジュウカラを攻撃後にヒノキのてっぺんまで逃げて行った。

図11.巣箱I-01で産れていた卵。5月30日の時点では2コだが,さらに2つか3つ追加される。卵は1日おきに産れることが多い。

図12.ヒノキのてっぺんまで逃げたオス。メスもこの場所にいることが多い。オスは私が去ったらまた巣箱の近くの電線にとまるだろう。

図13.ブッポウソウの撮影をした場所に咲いていたノバラ。花弁がくしゃくしゃで伸びきっていないところが面白い。

図14.巣箱I-01の近くにある神社。巣箱I-02からI-10を見るときにはここを通る。キジムナーが時々訪れて遊んでいる。ノウサギも現れる。

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