生物多様性研究教育プロジェクト・リサーチレポート 四季折々の自然の風景と野鳥 No. 9:砥峰(とのみね)高原

令和4年(2022)12月1日(木)

 兵庫県の中央部には,雪彦(せっぴこ)峰山(みねやま)県立自然公園がある。兵庫県と岡山県は隣同士の県であるが,岡山市からだと,山陽道を相生まで行ってから国道29号線を北上するか,姫路市を経由して国道312号線を北上する経路が考えられる(図1)。国道2号を使えば,岡山市からだと3時間はかかりそうである。津山の手前で国道429号線に入って,429号線を延々と走るという方法があるが,周りの景色はよいが,さらに多くの時間がかかる。

 近澤峰男さんは,兵庫県明石市(図1)にお住まいだった。明石市からだと,姫路まで30分。姫路から312号を使えば, 2時間もあれば目的地に到着するだろう。私と違って,近澤さんは早起きである。4時にご自宅を出発されれば,6時過ぎには目的地についていただろう。

図1.砥峰高原の地図。雪彦峰山兵庫県立自然公園や岡山県と兵庫県の県境に位置する若杉原生林,千種(ちくさ)高原スキー場,後山,日名倉山などは,私の住む岡山市から行くとすごく時間がかかるが,兵庫県の姫路市や明石市からは割と容易にアクセスできると思われる。若杉原生林のさらに北にある氷ノ山(兵庫県)もまだ行ったことがない。地図はGoogle mapより転写。なお,転載はgoogle地図の利用規定をチェックした上で行った。

 この記事で紹介する砥峰(とのみね)高原は,雪彦峰山自然公園の北東部に位置する(図2)。砥峰高原には,国道312号を神崎南ICで下り,播但線沿いの県道404号線を長谷まで行き,そこから県道39号線に移り,あとはグネグネ道を対向車に注意しながらひたすら走れば(といっても30分以内だが)着くだろう。私は雪彦峰山自然公園には行ったことがない。

図2.兵庫県立・雪彦峰山自然公園。地図は,兵庫県環境部自然・鳥獣共生課から配信されるインターネット(文献参照)より転載。こんな地図があると,雪彦峰山自然公園を散策するときにすごく役立つだろう。

 砥峰高原は,兵庫県神崎(かんざき)郡神河(かみかわ)町にある標高800–900mに広がる草原である。Wikipediaを見ると,ススキの大群生地としてよく知られる。また,近くの湿地帯では高山植物がみられるとの記述もある。さらに詳しいアクセスの手段や,宿泊場所,高原の見どころについては,インターネットで調べていただきたい。明日どこに行こうか,どこで昼ご飯を食べようかとインターネットで調べてあれこれ考える作業はすごく楽しい。

図3.砥峰高原の展望台から景色を見る近澤峰男さん。一面のススキ野原にクロマツやスギの疎林がある。近澤さんは何を考えているか?「ウーム,きれいだ。どこかに野鳥はいないかな?」ぐらいか?面白いことに,景色に接しているときには,深く物を考えることができない。家に帰って机に向かい,当日に撮影した写真を見るときに深く物を考えることができる。松尾芭蕉殿は,どういう時に俳句を思いついたのだろうか?平成16年(2004)10月17日。

 砥峰高原は,ススキの大群生地として知られているだけあって,さすがに見事なススキ野原が広がっている(図3)。土地は緩斜面や平地である。ところどころに湿地が点在するかもしれない。いずれにせよ,奈良の若草山と同様に,人工的に作られた草原なのであろう。ということであれば,放置すれば植物群落の遷移(succession)が進んで,4~5年もすれば灌木林に移行するだろう。定期的に刈り取るか,若草山や山口県のカルスト台地のように山焼きをしなくてはならない。砥峰高原では,どのようにしてススキの大草原を維持しているか,よく知りません。大変申し訳ございません。

 図4は,ススキの野原から見た砥峰高原の山林である。平地は,クロマツ,スギ,ヤナギ,ハンノキ,シデ類が生えているだろう。山の斜面については,コナラはあるだろうが,ブナやミズナラがあるかどうか,播州高原については,直感が働かない。カエデ,ヤマザクラ,ノリウツギ,ノグルミ,サワグルミはありそうな感じがする。トチノキやホウノキもあるだろう。初夏にはススキ野原をどんな昆虫が飛んでいるのだろうか?ミドリヒョウモン,ツマグロヒョウモン,ウラギンヒョウモン,ツマグロヒョウモン,真夏にはメスグロヒョウモンなどがみられるだろう。・・・という訳で,実際に生息しているかどうか不明な種類を並べ立てた(図5)。

 近澤さんの写真ファイルとみると,今のところは砥峰高原で撮影された写真の中に野鳥やチョウ,高山植物は見つからない。

図4.ススキ野原から眺めた砥峰高原の山林。標高が800~900mだと,ミズナラやブナ林はありそうな気がする。一番手前はヤシャブシとかハンノキ類だろう。ヤナギ類も点在するはずである。その奥にスギの植林がある。山の斜面の植生については,自分の知識の範囲内では十分な回答ができない。平成16年(2004)9月27日。

図5.砥峰高原のススキが原。ススキの穂はそろそろ散りかけている・・・かな?平成16年(2004)10月17日。

 先日(令和4年11月6日)牛窓の海岸から岡山に戻る際に,吉井川沿いの道路わきにススキの群落を見つけた。夕日がいい具合に差し込んでいたので,一句ひねるつもりで撮影した(図6)。使用したカメラはNIKON COOLPIX W100。いわゆるコンパクトカメラである。防水機能がついているが,シャッター部分が壊れやすい感じがするので,海産動物を採集する際には使えない。(シャッターを押す頻度が高くなると,指についた砂や小ゴミが微量の海水に混って機械の中に入り込みそうである。)水に入れずに乾いた手で操作する分には,海岸で使用しても全く問題はない。

 一句ひねるつもりで撮影したススキの群落(図6)や和中の基地の秋景色(図7)を見ても,まあこんなもんか・・・,ぐらいの感慨でしかなかった。

 ということでもう一度図3に戻る。私がススキ野原を見てつくづく想うことは,世の多くの権威者とか専門家の方々が主張することは,自分たちに都合の良いことばかりで,研究・教育の両面において,社会の発展に寄与する示唆は少ないということである。生態学の分野では,大した観察事例もないのに,自分の強い思い込みを入れ込んだ議論が目に付く。多くのデータに基づいて客観的に物を考えるという習慣がないのであろう。科学者というよりも呪術師と呼んだ方が似合っている方々が多い。鳥の世界でも,専門家と称する人々の呪術師的な見解には,辟易することが多い。

 近澤さんの撮影された写真は一部BMPファイルで保存されていた。恐らくBMPの方を消去するつもりで,JPEGファイルの方を間違って消去したのだろう。そのことを知らなかったので,原稿をだいぶ進めてからファイルサイズが異常に大きい(1枚17Mbとか・・・)ことに気づき,原稿全体のサイズを10Mb以下に収めるのに時間がかかった。

<参考文献>

  • ひょうごの環境(兵庫県環境部自然・鳥獣共生課)インターネット配信。(https://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/jp/environment/leg_293/leg_294/leg_755)
  • 石原勝敏・庄野明彦(2010)新版生物Ⅱ(高校の生物の教科書)。実教出版。

図6.稲とセイタカアワダチソウとススキの群落。令和4年(2022)11月6日、岡山市東区西大寺にて。

図7.吉備中央町和中のWA-01の巣箱と秋の風景。今年は柿がたくさん実をつけた。令和4年(2022)10月28日。

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