令和4年（2022）7月30日（土）

　令和4年（2022）は，ブッポウソウに関しては吉備中央町の北西にある有漢町（高梁市）に行くことが多かった。有漢町は山の起伏が激しく，エサとなる昆虫も多い。ブッポウソウの個体群密度は，吉備中央町よりも有漢町の方がずっと高い。また，木陰など隠れ場所も多いため，ブッポウソウの撮影には適している巣箱が多い。ただし，有漢町のような山間地でブッポウソウや他の野鳥の写真を撮るためには，山道に入るので，それなりの運転技術は必要である。さらに，山登りとか藪こぎ等に慣れていないと，場合によっては遭難もありうる。だから，町の公園を散策する気分で山間地に分け入ると，散々な目に合うことが多いので注意されたい。

図1。「有漢どん詰まり」の雑木林。7月20日に行ったときには，付近ではブッポウソウの声は少なかったが，林の中に巣立ちした幼鳥とともにいるのだろう。巣立ちが終わって静かになる林と，巣立ちが終わっても親子が頻繁に鳴き交わしている林とさまざまである。この場所は，8月12日ごろからまたやかましくなると予想している。写真左下に見えるのは，L-05の巣箱（もう幼鳥は巣立った。）L-05ではスズメがワラを積んで，ヒナは入り口の近くにいた。

「有漢どん詰まり」（図1）までは，道路は片側1車線ずつあり，ダンプカーが来ても十分すれ違える道幅がある。（もっと下の方では，岡山自動車道の4車線化工事が進行中。）有漢どん詰まりからは，道は急に狭くなり，大型の車は通行できない表示がある。そこから100mほど奥に入ったところにB-15の巣箱がある。巣箱の向かい側には広葉樹の林があり（図2），ブッポウソウはいつも林の中央に見えるコナラの枝にとまる。

図2．B-15の小川を挟んで向かい側にある落葉広葉樹林。林の下半分は10年以上前に伐採された。カブトムシとクワガタは，伐採された後に残った朽木の幹や枝，あるいは腐葉土で発生しているのだろう。

図3．道端に落ちていたカブトムシ。腹部がもがれている。7月19日の夕方から20日（当日）の朝にかけて襲われたと思われる。

図4．道端に落ちていたミヤマクワガタの頭部。7月18日の夕方から7月20日（当日）の朝に襲われたのだろう。

図5．マメクワガタによく似たヒョウタンゴミムシ。これは道を歩いていた。7月20日。

「有漢どん詰まり」周辺には，樹液の出ている木はない。樹液の出ている木は，相当な山奥でも採集家によく知られている。羽化して樹液に集まれば，すぐに盗掘される。「有漢どん詰まり」から3 km下流に小さな公園があり，公園に行く道路脇にナラガシワの疎林がある。ナラガシワの木からは樹液が出ていて，大きめのヒラタクワガタがいた。しかし，ある時からヒラタクワガタの姿は消えた。道路からナラガシワの木まで人が歩いた跡があったので，このクワガタは盗掘されてしまったのだろう。昆虫の盗掘は，有漢町や吉備中央町ではそれほど激しくはないが（このあたりには珍品は少ない。），北房町から蒜山（岡山県）や大山（鳥取県）にかけて広がる林では，被害は大きいかもしれない。盗掘屋（マニア）は隠密行動をするので，発見するのが難しい。背後をいつも気にして行動する。南西諸島では，パイナップルと黒砂糖を混ぜてストッキングに入れ，道沿いの木の枝につるしてクワガタ類を採集する。ストッキングは放置されるので，そんなのがいっぱいつる下がったところを見ると不気味である。

「有漢どん詰まり」では，樹液の出ている木は，少なくとも道路脇にはない。カブトムシ（図3）やクワガタムシ（図4）は，朽ち木で羽化した後に，夕方か明け方に飛しょう中に襲われるのだろう。なお，同じ場所でマメクワガタによく似たヒョウタンゴミムシが道路上を歩いていた（図5）。

　問題は，カブトムシ（図3）やクワガタムシ（図4）の腹部をもいでしまう動物の種類である。「有漢どん詰まり」（図2）には，B-12とフタ取れかけ巣箱（これは地元のじいさんが設置）がある。最初はブッポウソウの仕業かと思ったが，いくつかの状況証拠から，ブッポウソウ以外の野鳥（例えばアオバズク）の可能性が高いように思える。今後の課題のひとつとしたい。

　私は，里山（woodland）の生物を研究して，多くの魅力的で楽しい課題を皆さんに提示しようと思う（図6）。一方では，里山の魅力が町の人たちに知れ渡ると，多くの人たちが押し寄せるだろう。その結果，町の人たちにいいとこばかり持って行かれ，ゴミの廃棄や環境汚染（農薬も含むが・・・）が進むつまらない場所にされてしまう。里山で生活している人たちは，そのことを心配しているのだと思う。

図6．B-15の上空を飛しょうするブッポウソウ（写真のごみではない）。こんなブッポウソウではダメですか？