ブッポウソウ総合情報センター・ニュース:四季折々の自然の風景と野鳥 No. 1:今は亡き近澤峰男さん

 近澤峰男さん(兵庫県明石市)には,吉備中央町の下土井にある横山様ではじめてお目にかかった。平成29年(2017)の夏だったかと思う。ブッポウソウの木彫り(figure)を作ったらどこかに飾ってもらえるかと言われた。即座に「いただきます。」とお答えしたのがきっかけで,野鳥の撮影のお手伝いをしていただくことになった。

図1.乗鞍岳の頂上(3,026m)に立つ近澤峰男さん。写真ファイルには,平成30年(2018)7月19日とある。近澤さんご自身がタイマーを使って撮影された。乗鞍岳は中央アルプスの一角にあり,割に容易に頂上まで行けるようだが,私は一度も登ったことがない。代わりに近澤さんが登って下さった。その時の写真を見ていると,自分が登った気になってしまうのが不思議である。

 近澤さんとは,始めてお会いした時からよく気が合う感じがした。ボイラーを設計する会社にお勤めだったと聞く。少し話をすると,会社ではすごく有能な技術者として頑張ってこられたことがすぐにわかった(図1)。

 近澤さんからいただいたブッポウソウの木彫りは,幼鳥(粟島ヒナ子ちゃん)を含めて,みなすぐれものである。また,日本に来ているブッポウソウだけでなく,インドからマレー半島に分布するベンガル・ブッポウソウ(Coracias bengalensis)の木彫りもいただいた。さらに,カブトムシとミヤマクワガタの木彫りも作って下さった。近澤さんには,奄美大島以南のマングローブに生息するオキナワアナジャコも作っていただく予定だった。

 しかし,近澤峰男さんは平成31年(2019)5月に回復の難しいご病気でお亡くなりになった。同じ年の4月に,ご子息の運転する車に乗り,賀陽町にある道の駅まで来られた。そこで近澤さんが今まで使っていたカメラ(SONY, RX 10Ⅲ)を使えと言われた。近澤さんは片手に酸素ボンベを持ちながら,肺からの出血が止まらなくなったと言われた。もう自力で呼吸することが難しくなっていたのだろう。もうだめかもしれん,ともおっしゃっていた。

図2.熟した柿の実の上にとまるヤマガラ(近澤峰男さん撮影)。平成24年12月26日。場所は森林植物園とあるが,岡山県の森林公園ではなさそうだ。兵庫県の森林植物園だろうか。晩秋から初冬の感じがよく出ている。この写真を静かに見ていると,近澤さんも含めて,過去と現在のいろんな思いがよみがえってくる。

 平成31年4月に賀陽道の駅で近澤さんにお会いしたときには,まさか1か月後にお亡くなりになるとは絶対に考えられなかった。近澤さんは,吉備中央町の上竹荘にあるE-03の巣箱がお気に入りだったようで,ぜひもう一度そこに行きたいと言われていた。しかし,その時にはE-03がどこにあったかどうしても思い出せなかったのと,まだ4月の半ばあたりだったので,ブッポウソウの姿は見られないと思い,案内することができなかった(図2)。

 今から考えれば,ブッポウソウはいなくても,その時に近澤さんをE-03にお連れするべきだったと本当に後悔している。少し元気になられてから,またゆっくりとみていただければよいと考えていた。状況判断が甘いと言われればそれまでだが,どれほど深刻な事態かは,はたから見るとなかなかわかりにくいことが多い。

図3.タラノキの枝にとまるムギマキのメス。背景はナツハゼ(ハゼノキ?)。濃い紫色の実がついている。何でムギマキと呼ぶのか,調べたらわかると思う。私にはむしろ,手前のタラノキの枝に棘(とげ)が生えているのが気にかかる。木の上を小鳥が歩いたら,棘に刺さって痛そうであるが,鳥の足びはどれほど痛覚があるのか不明。動物や植物の持つ棘の起源は何か,そしてどうやって棘の構造に変化したのか,そのしくみを調べることが私の本業(研究)である。なお,この写真(ムギマキ)は,近澤さんが撮影した。平成24年10月31日岡山とあるが,ファイルには正確な場所までは記載されていなかった。

 近澤さんが今まで使っていたカメラ(SONY, RX 10Ⅲ)は優れものである。レンズはZeiss製をはめ込んでいるところがまた良い。今まではPENTAX, K-rに望遠レンズをつけたり接写レンズをつけたりして使っていたが,カメラの調子がよくなかったこともあって(これは言い訳ではなく本当の話)良い写真が撮れなかった。

 SONY, RX 10Ⅲを使ってみて,益々解像度の高いレンズでブッポウソウを撮影したくなった。近澤さんはお亡くなりになる前に,CANON, EOS7DのカメラにCANON製600mmのレンズをつけて撮影されていた。これも使うかと言われたことがあったが,その時にはこんなすごい機器を使いこなせる自信がなく,自分には分不相当ということで丁重にお断りした。冗談で言われたのかと思ったが,それも今から考えると自分の状況判断の甘さだったのだろう。

図4.泳いでいるミコアイサ。明石市の地図(google map)を見ると,北部には数えきれないほどたくさんのため池がある。ミコアイサは,溝ガ沢池にて撮影された。私には,黒いゴーグルをつけたカメがこちらに向かって高速で泳いでくるように見える。平成23年(2011)9月10日(近澤峰男)。

 近澤さんはお亡くなりになる前に,600mmレンズのついたEOS7Dを同業者の方に譲られてしまったかもしれない。もし可能ならその方にお会いして,このカメラをブッポウソウの撮影に使いたく,お借りできないかお願いしてみようと思い,明石市(兵庫県)のご実家に手紙を書いた。

 しばらくして近澤さんの奥さまから,カメラはご実家に置いたままになっており,必要ならば使ってよいとのご返事をいただいた。すぐに近澤さんのご実家を訪ねて,奥さまからカメラをお借りしてきた。という経緯があって,ブッポウソウの撮影は,令和1年(2019)と令和2年(2020)は専らSONY, RX 10Ⅲを使い,令和3年(2021)は600mmの望遠レンズ(カメラはCANON, EOS7D)を併用した。

 近澤さんにお借りした2台のカメラを使用することで, 3年前までと比べ,格段にきれいで,かつresolutionの良い写真が撮れるようになった。私の場合には,カメラマンの方々とは,ブッポウソウを見る視点が大きく異なっている。だから,目的に合う写真を撮るには,やはり自分で撮影する必要がある。近澤さんがお使いになっていた2台のカメラをお借りできたことは,本当に良かったと思う。

 近澤さんの撮影された数多くの写真は,カメラの性能の良さもあって,どれも優れたものばかりである。相当辛抱強く粘って,やっとうまく撮影できたシーンも多いかと思う。近澤さんがお亡くなりになり,それらの写真ファイルがハード・ディスクに収まったままで日の目を見ないのでは,あまりにももったいない話である(図3と図4)。

 私は,近澤さんの撮影された写真をブッポウソウ総合情報センターか生物多様性研究・教育プロジェクトの出版事業として,順次インターネットで公開しようと思う。全く公開されないのと,一瞬見たけど忘れてしまったというのでは全く意味が異なる。

 ブッポウソウ総合情報センターと生物多様性研究・教育プロジェクトは,自分たちを含め,身近にいる方々の行う多様な活動を,社会に向けて紹介する(公開する)ために作られた。近澤峰男さんは,私たちが普段目にすることのない自然環境の中に身を置き,多様な生物の生きざま(行動)を写真にとった。近澤さんの活動は,ブッポウソウ総合情報センターと生物多様性研究・教育プロジェクトの目的(aim)や目標(scope)に良く合致する。

 社会の中には,多くの人たちが実施する多様な活動がある。それらの中で,どれが優れているかについて,私は外部機関に全面的に判断を託すことはしたくない。私の考え方の基準(standard)は,多くの方々の基準の平均値から遠く離れていることは間違いない。外部機関にすべて判断をゆだねた場合には,自分の主張が公表される可能性はまずない。だから,自分の判断が,優先はされないまでも,常に考慮される機関の設立は不可欠である。

 自分が判断するということは,自分の持つ倫理観,常識,理念がそこに含まれることを意味する。それらの細部については,社会とはそごもあるとは思うが(たとえば,懲罰に対する考え方),全体としては好意的に受け入れていただけるのではないかという期待もある。

 いつものように理屈っぽい言い訳になってしまったが,それぞれの季節によく合う雰囲気の野鳥の生きざまを,近澤峰男さんが撮影した写真を使って紹介してゆきたい(図5と図6)。

図5.ミコアイサのオス2匹。手前にいる個体は,後ろの個体の子供か?手前のオスは,後頭部の黒い線が眼の周囲の黒紋に達しているが,後ろの個体には黒線がない。平成23年(2011)9月10日(近澤峰男)。

図6.ミコアイサのオス(奥)とメス(手前)。多くのカモのメスは,ミコアイサのメスと似た色模様をしている気がする。それにしてもやはりオスの頭部は変な模様だ。平成29年1月9日,溝ガ沢池 (近澤峰男)。

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