生物多様性研究・教育プロジェクト(研究と教育の原点を考える) Ⅲ. 四季折々の自然の風景と野鳥 2024‒No. 1:春はそこまで来ている

2024年1月31日(水)

1.はじめに
 生物の社会では個体群(population)を維持するために,個体同士のコミュニケーションが必要不可欠である。効果的なコミュニケーションの手段を持つ生物は,古いコミュニケーションに頼る種(species)よりも生き残る可能性が高い。コミュニケーションの発達を良く思わない国家や集団は徐々に孤立して行く。そんな国家や集団は,自分たちの優位性を世に知らしめんとして,ますます体制の先鋭化を図るようになる。その先にあるのは,戦争という代償である。

 人間の社会は,コミュニケーションの手段を急速に進化させている。人間が発明したコミュニケーションの手段として最も重要なのは,文字(letters)だと思う。また,私は写真(photograph)も素晴らしい発明だと思う。写真は,止まることのない「時間」を止めることができる。写真によって過去と現代のコミュニケーションが成立する。3つ目は,最近台頭したインターネット(internet)である。

 現代社会におけるコミュニケーションには,いろいろなタイプがある。数学的・物理学的な手法は,数という客観的な原理に基づき,世界を表現できる。情報を正確に伝えるためには適している。ただし,コミュニケーションの母集団(理解できる人数)が小さい。文学・芸術学的な表現は,俳句を見ればわかるように,読む人に感傷を呼び起こす機能がある。愛好者は多いが,権威主義的思考に陥りやすい。

 世界をわかりやすく表現するためには,文字のみでは難しいケースがある。写真のみでも難しい(野鳥や昆虫の撮影家がこの例)。また,インターネットはこちらからアクションを起こさない限り,何にも伝えてはくれない。私は,客観的な根拠に基づいて,可能な限り情報を正確に伝えたいと思う。そのためには,上記の3種類のコミュニケーションの方法をうまく組み合わせるのがいいと思う。

「四季折々の自然の風景と野鳥」に関して,2024年の第1号はオオワシの雄姿を紹介したい。野鳥・無脊椎動物・風景・・・,私は自然についてあれこれ深読みする悪い癖がある。深読みというと聞こえは良いが,詮索好きなのだろう。近澤さんは迷惑しているに違いない。お許しいただけることを切に願う。

 1月に入って一度寒波が来た。それを過ぎて,今(1月下旬)は気温が平年より少し高い日が続いている。寒波はもう一度来るだろうが,2月15日を過ぎれば気温が少しずつ上がってくる。今年(2024)は,2月末までに終えたいことが山ほどある。

2.撮影と執筆の基本情報
<撮影> 近澤峰男・三枝誠行(生物多様性研究・教育プロジェクト)。
<原稿の執筆> 三枝誠行(生物多様性研究・教育プロジェクト)。
<参考文献> 夏目漱石(2002)文鳥・夢十夜 。新潮文庫。

図 1.オオワシ。平成 27 年(2015)1 月 7 日撮影。オオワシは夏季にはロシア沿海州(一度行ったことがある)周辺で繁殖し,冬季は北海道で過ごす個体が多いようだ。撮影は「湖北」とある。「湖」とは琵琶湖のことだろう。平成 25 年(2013)12 月 25 日,平成 27 年(2015)1 月 7 日,平成 27 年(2015)1 月 13 日,平成 28 年(2016)2 月 21 日の計 4 回訪れている。写真の個体は,2013 年から 2016 年まで 4 年間,湖北で越冬したかもしれない。

図 2.オオワシの飛翔。どのぐらいの距離から撮影したのだろうか?口が頭部の容積の半分を占めており,口のお化けみたいな野鳥である。くちばしの先端が尖り,かつ 90 度下方にカーブしているのは,捕獲した獲物をくちばしの先端で突き刺し,飛翔中に下に落とさないようにするためだろう。視力は良いのだろうか?おそらく 100m 先に動く動物(魚が多い?)を見つけることができるだろうが,視力は人間の尺度では測れない。ちなみに,私も 200m先のアカマツの枯れ木にとまっているブッポウソウを見つけることができるが,視力は 0.8 という時がある。私の視力は明らかに低下している。

図 3.アカマツの枯れ枝を飛び立つオオワシ。エサを見つけたのだろうか?ここまで体の大きい動物が,日本列島のような狭い範囲の地域で進化することはないだろう。ユーラシア大陸の東側に広がった広大な自然の中で進化したのだろう。日本海ができ始めたのが 2,500 万年前。新生代の古第三紀と新第三紀の境にあたる。それより前なのか,あるいは後なのか全くわからない。でも何か,日本海の誕生とオオワシの進化は密接に関係する気がする。

図 4.ヒノキの立ち枯れを飛び立つオオワシ。これだけ体が大きく,かつくちばしや後ろ足の黄色が映えていると,遠くから見つけやすいだろう。オオワシは越冬期になるとペアを解消するのだろうか?多くの野鳥の写真を見ていると,冬季でもペアが維持される種類が多いように見受けられる。ところで,オオワシの体重はどのぐらいなのか?50 kg 未満のような気もするのだが・・・。

図 5.アカマツの立ち枯れにとまるオオワシ。何かエサを捕まえたのだろうか?眼が足元を見ているような感じだ。これだけの体の大きさを維持するには,毎日相当な量の魚を食べる必要があるだろう。かつて(1,000 万年から 2,000 万年前)はユーラシア大陸の東岸に,いくつか巨大な湖があって淡水魚も多かったのだろう。海岸にも食べられるエサは豊富にあった。そういう環境であれば,体の大きな動物の方が生き残るには有利になるかもしれない。

図 6.「湖北水鳥公園」事務所の前に駐車している近澤さんの愛車。近澤峰男さんは,何度か自家用車を乗り換えていた。最初は三菱の軽のジープを使っていたが,次に乗り換えたのがこの車だったようだ。やはり三菱製だが,車種は知らない。私が初めて近澤さんにお会いしたころは,トヨタのハリアーに乗っておられた。近澤さんのお家は,兵庫県明石市にある。琵琶湖や兵庫県北,あるいは岡山県まで来るには軽だとちょっときついのではないか?

図 7.ハチ北高原スキー場。琵琶湖とは方向が異なるが,近澤さんが撮影したファイルから「ハチ北」という写真を拾ってみた。記録を見ると,平成 24年(2012)1 月 18 日,平成 27 年(2015)1 月 14 日・1 月 27 日・3 月 4 日,平成 31 年(2019)1 月 19 日とあった。近澤さんはスキーも大好きで,冬季にはしばしばスキー場にも出かけていたようである。2019 年 1 月 19 日の撮影。この日のスキー場は結構にぎわっている。

図 8.「ハチ北」のファイルにあった写真。2015 年 3 月 4 日撮影。撮影場所は不明。スキー場の近くか?

図 9.「ハチ北」のファイルから。2019 年 1 月 19 日撮影。ハチ北高原スキー場で撮影したと思われる。面白い形をした雲である。

図 10.「ハチ北」のファイルから。2019 年 1 月 19 日撮影。ハチ北高原スキー場。樹氷という表現でよいのだろうか?

図 11.「メイホウ」のファイルから。2011 年 3 月 22 日撮影。近澤さんは「メイホウ」にもよく行かれてスキーを楽しんでいたが,場所は知らない。

図 12.和中(吉備中央町)の基地。2023 年の 11 月ごろから 2024 年の正月にかけて,観察場所を整備した。去年(2023)は,早くからブッポウソウのオスが「鹿の角」にとまっていたが,メスがなかなか現れなかった。オスはとうとうメスを探しに行って,1 週間後にメスを連れてきた。ところがメスはここが気に入らなかったらしく,150m 程離れた別の巣箱に移り,2 つ卵を生んだ。早速近くにいたブッポウソウが飛んできて,生まれた卵を捨ててしまった。結局移った先の巣箱では,子育ては失敗した。今年(2024)は間違いなく同じオスが来るだろう。結構人に敏感なので,観察小屋を設置した。

図 13.「ハチ北」や「メイホウ」に行きたいところだが,ここは和中(吉備中央町)。「華」(メス)が長い間居候している。2 日に一度エサやりに行く。

図 14.ウメのつぼみ。和中ではウメのつぼみが大きくなっている。2 月下旬には花が咲くかもしれない。ウメの枝には地衣類がたくさん付着している。

図 15.我が家に居候をしている「ぴよ吉」。メスのブッポウソウである。昼間は,私が仕事をしているとモニターの上に飛んでくる。外を向いている時間よりも,部屋の中を向いている時間の方が圧倒的に長い。部屋の中で起こること(つまり私の行動)の方に強い関心があるようだ。トイレ(新聞紙)はモニターの後ろに置いてあるので,こちらを向いているときにはウンチはトイレに落ちるが,外を向くと机の上にポトンと落ちる。

図 16.モニターの上で日向ぼっこをするぴよ吉。私は鳥の飼育に関しては,夏目漱石のような飼い方はしない。文鳥を入れた巣箱を縁側にかけたら,猫に襲われるのは目に見えている。野良猫はすごく賢いし,力もある。文豪夏目漱石さんの飼育は,自己中心的で子供がする飼い方である。

図 17.真冬に花を咲かせるシャコバサボテン。ずっと外(地面)においたら茎がしなびたので,玄関の内側に置き,水をやったらきれいな花が咲いた。

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