生物多様性研究・教育プロジェクト 四季折々の自然の風景と野鳥 2023–No. 24: ブッポウソウの子育て,7月3日の状況

令和5年(2023)7月4日(火)

1.Introduction
「ブッポウソウ教育教材展示会」開催の準備のために,6月28日(水)から7月2日(日)までブッポウソウの産卵・ふ化状況の調査を休んだ。5日間も連続して休むというのは,今までになかったと思う。

 展示会2日目は日曜日に実施された。朝から天気が良く,美原集落センターの前を通り過ぎたときには,多くの人たちが巣箱の方にカメラを向けてブッポウソウを撮影していた。そんなにブッポウソウに関心があるなら,生態や行動にも強い関心があるだろうと期待された。しかし,そんな期待は,すぐに裏切られた。

 私には,多くの人々がブッポウソウの何に関心をお持ちなのか,よく理解できない。パンダが日本に来たときにも,異常なほど多くの人々が動物園を訪れた。過去には,ゾウやトラも同じだったのだろう。有名人が来れば,沿道には人だかりができる。珍しい動物(・・・と言うと有名人には失礼か)がいると,人々は一目でもよいから見てみたいと思うのだろうか?

 ブッポウソウも,森の宝石だとか言って「珍し感」を捏造(ねつぞう)している人たちがいることは事実である。捏造された「情報」をすぐに信じて行動する前に,インターネットでブッポウソウのことをよく調べてみたらどうだろうか?私には,その方がよほど楽しい作業になる気がする。サンゴ礁の島々に行く前に,インターネットで島の環境やそこにすむ生物たち(みんな森や海の宝石)のことを調べてみれば,サンゴ礁の島々を訪れた際に,自然と生命の躍動を思い切り深く感じ取ることができる。ブッポウソウについても同じである。

 ブッポウソウの産卵は,5月25日ごろから6月10日までの15日間がピークになる。卵の温めに続いて,6月下旬からヒナ(chick)のいる巣箱の数が急激に増加した。7月3日には,井原(吉備中央町)から奥吉備街道を通って上有漢(高梁市)の巣箱を見て回った。今年(2023)は,有漢町,巨瀬町,中井町,北房町にある巣箱は,全部使われている。吉備中央町で頻発している「卵の持ち出し事件」は少ないようで,トラブルが起きた巣箱は,有漢町にあるI-04だけのようだ。I-04は,まだヒナがふ化していない。親鳥の警戒も今ひとつ弱い。

2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト)
<撮影場所> 井原(吉備中央町)と有漢町(高梁市)。<撮影日時> 令和5年(2023)7月3日(月)。
<Key words> ブッポウソウ,産卵(egg-laying),ヒナ(chick),ふ化(hatching),エサ運び,いるぞコール,警戒コール,警戒飛しょう。
<記録機材> Canon EOS 7D with TAMRON Zoom Lens (28-300 mm)(風景全般); CASIO Exilim(巣箱の中を写すカメラ)。
<参考文献>
 小西正一(1994)小鳥はなぜ歌うのか。岩波新書。

図1.巣箱を出るブッポウソウ(メス)。カメラを巣箱に向けて適当にシャッターを切った。ブッポウソウにはしっかりとピントが合っている。EOS 7Dは,シャッター速度が,例えば1,250分の1,ISOが6,400に設定できる。優れモノのカメラである。中古で2万8千円ぐらい。

図2.B-13の巣箱。場所は,和田になるのだろうか?ここは卵の持ち出しが多かったが,今年は安定している。撮影もできそうだ。

図3.7月3日の里山(和田)。水田は一度放棄されたが,また再開した。この辺りは卵の持ち出し事件が頻発している。

図4.有漢町の巣箱(I-01)。使用したレンズはTAMRON 28-300 F/3.5-6.3 Di VC PZD(キャノン用)。中古で5万6千円ぐらいしたと思う。

図5.ふ化したブッポウソウのヒナ。4匹ふ化している。ふ化してから数日以内である。残った卵殻(egg shell)は,親鳥自身が食べるか,ヒナに食べさせるのではないだろうか。私は,ブッポウソウを見るなら,親鳥だけでなく,巣箱の中でふ化した直後のヒナや,羽軸の生えてきたヒナもぜひ見てみたいと思う。生まれたてのヒナは,それこそ「森の宝石」と言えるのではないだろうか?眼はまだ皮膚に覆われている。

図6.I-01の巣箱の奥にあるヒノキ林。写真を撮る前には一番高い木の上にペアでとまっていた。

図7.巣箱に行く小道。左側はでかいイノシシによって大きく破壊されている。小道の上は草ぼうぼう。草刈はあきらめたというご返事。

図8.モンシロチョウの飛しょう。EOS 7Dは,飛翔中の昆虫でもうまく撮影できる。SONY RX10だと,飛翔中の個体にはピントが合わない。

図9.ドクダミの葉の上にとまるウラギンスジヒョウモン。個体数は多い。

図10.花にとまるウラギンスジヒョウモン。後翅(こうし)の裏側を見ると,すぐに種類が判別できる。花の種類は調べている時間がない。

図11.ギボウシ似の花で花粉を集めるハナバチ(種名は不明)。花の種類は調べている時間が取れない。

図12.ハナバチ。図11とは別の種類だろう。この花もよく見かけるが,散りかけになっているところが多い。

図13.ネギボウズのような花で吸蜜するキタテハとハナバチ。

図14.ムム・・・白い花じゃ。名前はわからん。

図15.畑仕事をするおばあちゃん。毎年ブッポウソウが来るのを楽しみにしている方々は,予想以上に多い。私のやるべきことは,写真家やブッポウソウ愛好家にブッポウソウの撮影場所を提供することではない。町おこしを誤解せぬようお願いしたい。

図16.上有漢にあるM-05の巣箱。数年前に卵の持ち出し事件が勃発した。卵を持ち出すのは,ブッポウソウである。

図17.羽軸が生え始めたヒナ4匹。下の卵は胚発生が途中で止まったのだろう。野鳥にとって,卵は完全な消耗品である。眼の開いている個体とまだ開いていない個体がいる。

図18.羽軸の生えそろった「チュクヒナ」。チュクチュクと鳴いてエサをねだる。この巣箱もヒナは4匹。

図19.羽毛(feather)が生えてきたヒナ。ここも4匹が育っている。

図20.四角錐の墓(M-05)。大石正志氏と刻まれた裏側には,大石一郎とあった。ご兄弟で戦死されたのだろう。

図21.王子権現神社(有漢町)。私の頭の中では,ブッポウソウと神社や社はセットになっている。守護神はキツネのようである。

図22.農作業をするじいさん。こんなに背が曲がっても働き続けている。人間,何よりも楽しいことは,生きて働けることである。

図23.梅雨の時期の里山の景観(有漢町)。右側はI-04の巣箱。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です