令和5年(2023)5月28日(日)
1.はじめに
数年前から吉備中央町や高梁市有漢町では,岡山自動車道の4車線化が進んでいる。完成したところもあるが,まだこれから工事が行われるところもある。4車線化の工事は,平坦な道路を作るために山を大きく切り崩す。その際に出る土壌(残土)は,大型のダンプカーで吉備中央町や有漢町にある谷(残土処理場)に持って行き,そこに埋められる。吉備中央町や有漢町では,残土を運ぶために,幹線道路は大型のダンプカーがひっきりなしに通る。
岡山県は,市街地を離れれば,幹線道路と言っても中央の車線もない細い道も多い。多少の退避スペースがあっても,そういうところに車を止めて大口径レンズを出してブッポウソウの撮影をすれば,地元には迷惑駐車の印象を与えるだろう。しかも駐車している車の脇で用を足そうものなら,すぐさま協働推進課に電話がかかる。
もうひとつは,被写体(ブッポウソウ)とカメラの間の距離の問題がある。ブッポウソウは人にはよく慣れる鳥である。だから,毎年人里にある巣箱に来て子育てを行っている。だからと言って,人が不用意に近づけば,遠くに逃げてしまう。ショックが大きければ,その晩は巣箱に戻ってこないこともある。(ジオロケータの装着による心理的負担は,親鳥を巣箱から長時間遠ざける。)6月中は,メス親が一晩戻らなければ,夜間の低温で胚発生(embryonic development)がストップする可能性が高い。
要するに,ブッポウソウの習性についての知識がないものだから,ブッポウソウや周囲の人たちの目を無視して平気で近づく。これは自称専門家でも同じこと。カメラマンは専門家でも何でもない,野鳥に関してはただの素人であるという認識も重要である。
一方では,ブッポウソウは,人の目につくところで生活する。しかし,そこには地元の人たちの目が光っている。そのメリットを生かして,規制(control)を強めるのではなく,教育の力を借りながら,ブッポウソウの保護をめざすことができるだろう。
2.被写体と撮影に関する基礎情報
<撮影者と所属> 三枝誠行・近澤峰男(生物多様性研究・教育プロジェクト常任理事)。
<撮影場所> 上田西,上田東,湯武(ゆぶ),大木. <撮影日時> 令和5年(2023)5月18日(木)。
<Key words> ブッポウソウの習性に関する知識,野鳥に対する配慮,周囲への警戒,ただの素人,事実誤認,教育。
<記録機材> 近澤第1カメラ(SONY RX10Ⅲ),近澤第2カメラ(EOS 7D Mark II with Canon 600mm レンズ)。
<参考文献>
三枝誠行・加藤想・近澤峰男(2021)ブッポウソウ物語。生物多様性研究・教育出版会。在庫なし。吉備中央町の図書館で閲覧可能。
図1.「魔の第3巣箱」(左の電柱)と「魔の第2巣箱」(右の電柱)。この位置からブッポウソウの撮影は無理。すべて遠くへ逃げてしまう
図2.H-39の巣箱(正面の電柱)。地元の人たちでも,道の脇に車を止めて畑作業をしている。どこに車を止めてよいか,よくわかっている。
図3.「魔の第2巣箱」より「魔の第1巣箱」方面を望む。今年は何匹のブッポウソウが死亡するのだろうか?
図4.魔の第2巣箱。ブッポウソウが死亡する原因はまだわかっていない。ここは入り口に鉄の柵があり,私しか立ち入れない。
図5.大木(おおぎ)にある巣箱。ブッポウソウを撮影しようと思えば,電柱から100m離れないと難しい。
図6.巣箱R-10。図5の巣箱のすぐ近くにある。ブッポウソウが入り込んでシジュウカラの巣を壊してしまった。
図7.ブッポウソウの観察場所。道の脇(左側)に車(軽)を止めて外に出て撮影できる。周囲に4か所の巣箱があるが,鳥は黒い点に写る。
図8.大木にある巣箱。巣箱から40mの距離なので撮影は無理。地元の人に注意されたらすぐに引き下がること。
図9.豊岡(吉備中央町)を抜ける主要幹線道路(県道371号)。繰り返すが,幹線道路上での駐車は厳禁である。
図10.県道371号(豊岡)。ブッポウソウを撮影したければ,田んぼの向こう側の細い道に行けばよい。とにかく,謙虚な気持ちで・・・。
図11.巣箱A-15(井原)。よい撮影場所だが,道の入り口に柵があって通行不可。私がつけた巣箱だが,私が撮影していると右側にある家の人から綱島さんに通報される。大変けしからん奴がいたと,私のところに連絡があって,実はそれは私だったということはよくある。あまり気にしていない。仕事柄,地元の人たちとの立ち話をする機会は多い。冷静に話を聞いていると裏の事情がよく分かって楽しい。
図12.A-15のすぐ近くの枯れ木。ブッポウソウはよくこの枯れ木にとまる。車中から撮影は可能だが,場所は教えられない。
図13.枯れ枝にとまるブッポウソウ。距離30m。SONY RX10Ⅲで撮影していると思う。距離30mだと長くは撮影できない。
図14.クリの枯れ枝から飛び立つブッポウソウ(江与味)。場所は教えられない。私はブッポウソウの案内人ではないので・・・。
図15.夕日を浴びて「鹿の角」にとまるペア。こういう写真を撮るのは難しい。この場所に西日が差すのは午後3時を中心に1時間のみ。しかも.このペアはなかなか鹿の角にとまろうとしないで林の奥に引っ込んでいる。多様性プロジェクトの基地の敷地内は,立ち入り禁止にしている。繰り返すが,基地は美原集落センターとは違ってブッポウソウの案内所ではない。ブッポウソウを見たければ案内所に行っていただきたい。
図16.ブッポウソウのペア。撮影は許可できない代わりに,絵葉書にして美原集落センターか図書館に置こうか(無料)と思っている。