令和4年(2022)ブッポウソウ情報 No 35:子育てを終えたブッポウソウはいつ渡りを始めるか?

令和4年(2022)10月2日(日)

 ブッポウソウは,7月10日前後から巣立ちが始まる。巣立ちの最盛期は,7月中旬から下旬にかけて2週間前後になるだろう。巣立ちが終わると,親と幼鳥は巣箱を離れ,近くの林の中に入って過ごす。繁殖行動が始まるころや,子育ての時期のようにけたたましく鳴くことはなくなるので,遠くから見ていると,里山は静かになったように感じる。そして,いつの間にか里山を後にして南に渡る。ブッポウソウがどんな単位,つまり単独で飛ぶのか,親子だけで渡りをするのか,親子のグループが形成されて渡りを始めるのか,あるいはツバメのように河川敷に集結してから大群になって渡るのか,まだよくわかっていない。いろいろなことを言う人たちがいるが,多くの方々は先入観が優先しているのではなかろうか。研究となるとうわさを発表する訳にはいかず,明確な証拠をつかんでからものを言う必要があるだろう。

図1.アカマツの枯れ木の上を飛ぶブッポウソウ。8月13日(2022)吉備中央町上田西にて。撮影機材は,SONY RX10Ⅲ。ブッポウソウの飛んでいる枯れ木まで200m以上の距離がある。旅立ちは近いと思われる。

 ブッポウソウは,ヒナが巣立った後は,しばらく家族単位で生活しているかもしれない。どのぐらいの期間家族でいるかは不明だが,8月中旬には旅立ちと判断される行動が観察されるので,ヒナが巣立った後は2–3週間ほど子供の成長を見守っていると思われる。

 ブッポウソウの親子が旅立つ際には,面白い行動が観察される。家族で巣箱の上を何回か旋回し,それから川沿いに飛んで行くのを見た人がいる。私も,和中の基地に帰るときに(8月14日だったと思う)に遭遇した。まるでピクニックに行くような感じで,宇甘川(有漢川ではない)の方に飛んで行く家族を見た。私の姿を見ると,幼鳥の方はすぐ近くに来ては,まるで挨拶をするようなしぐさをしてから移動していった。これらの観察には,感傷的な思いは含まれていない。

 図1は吉備中央町の上田西にある池の土手から撮影されたアカマツの枯れ木を示している。右上の枯れ枝のすぐ近くをブッポウソウが飛んでいるのがわかる。池の土手からブッポウソウ、までの距離は200m以上ある。慣れれば,肉眼でもブッポウソウが枯れ枝にとまっているのがわかる。

 池の周囲では,8月中旬に入ってから急にブッポウソウの姿が見えなくなった。いつも池ノ上の林に集まるよと,おばちゃんは言っていたが,今年(2022)は大きな群れは作らず,小さな群れで渡りに入ったのかもしれない。来年(2023)はぜひもう一度観察をしたい。

図2.「有漢どん詰まり」の林。この林はどうも写りが悪い。カメラ(SONY RX10Ⅲ)のせいではなく,光の加減なのだろう。7月後半から,ブッポウソウが林間を頻繁に飛び回っていたが,8月13日は静かになっていた。

 図2は,高梁市有漢町にある「有漢どん詰まり」と呼ぶ場所の雑木林を示している。7月後半になるとクワガタムシやカブトムシの頭部がない個体が落ちているすぐ近くである。「有漢どん詰まり」の林にはブッポウソウが集まるとの話を聞いて,今年(2022)は何度も行ってみた。確かに7月後半になると林の中や付近をブッポウソウが飛び回っていた。しかし,群れを作っているという感じではなかった。8月13日に行くと,林はすでに静かになっていた。

 今年(2022)は,ブッポウソウの研究で大きな進展があった。もっとも重要な成果は,ブッポウソウが産卵する日にち(lay date)や卵数(clutch size)には,巣箱をめぐる種内の争いや,種間(特にスズメ)での争い,巣箱の近くで行われている土木工事が強い影響を及ぼすことを示す証拠をたくさん得たことである。つまり,野鳥は環境のわずかな変化にも強い反応を示す習性があることがわかった。大きな望遠レンズには特に鋭敏な反応を示す。人間自体の行動も大きな影響を及ぼす。カメラを片手に巣箱のすぐ近くまで行って撮影してはいけない。なぜダメかというと,産卵日が大きく遅れ,場合によっては産卵が止まるからである。巣箱に近づいて写真を撮ろうと思ったら,どうやったら鳥に与える恐怖心を取り除けるのか,そこをあれこれ工夫して改善する必要がある。特に写真家を自称する方々は,熱狂的「撮り鉄」のようにならないで、野鳥の気持ちを考えながら慎重に撮影していただきたい。

図3.竹にとまるヒヨドリ(左上)とヒヨドリの足。ヒヨドリの足指は前側が3本,後ろ側が1本の構造になっている。爪は鋭い。野鳥は犬と違って,足のツメを深くまで切っても出血しないと思う。

 池の土手は伐採されて,その跡に竹や灌木が生えている。この付近は野鳥が多いところで,8月13日には池の周囲を含めていろいろな種類の野鳥を観察することができた。図3は,竹にとまったヒヨドリの写真である。姿はともかく,足指には鋭利な爪が生えているのがわかる。私は野鳥の見た目の綺麗さよりも,こんなところ(図3では鋭利な爪の形態)に興味がある。 

 8月13日には,ケッ・ケッ,ケッ・ケッと声を出してみたら,巣立った幼鳥が一匹,すぐ近くのコナラに現れた。片親もいっしょについてきているようだった。それ以降は,池の周囲にはブッポウソウの姿見られなくなったので,8月15日前後には渡りに入ったのであろう。

図4.池の上を飛ぶキジバト。どうやって撮影したか覚えていないが,こんな写真は意図して撮ることは難しい。絵本やアニメの世界に出てきそうな姿である。写真としては完全に失敗作(白飛び)なのだが,雰囲気がよい。

 ブッポウソウがいなくなっても,池の周囲には多くの種類の野鳥が活動している。土手の上から池の上を飛んで行く鳥(キジバトか?)を撮影したら,とんでもびっくりの(?)写真(図4)が撮れた。この写真は,単に全体が白飛びになったにすぎないが,まるで絵本やアニメの世界に出てくるようなワン・シーンである。画像の改変は行っていない。

 私は,皆さまに向かって,この写真(図4)を素晴らしいと自慢するつもりは全くない。ましてや写真展に出して,自称専門家の方々に媚びるつもりもない。媚びたところで,価値観が異なるので相手にもされないだろう。

 さて,このキジバト,何か天使に見えなくもない。もし天使に見えたとすれば,私の命をさらってどこか遠くの世界へ持ってこうとしたのだろうか?しかし,それでは天使ではなく,悪魔ではないか・・・。まあ,美しい悪魔ということでよい。いつしかこの命を差し出す日は確実にやってくる。その時にはよろしく。

図5.民家の軒先に咲くコスモス。9月13日。SONY RX10ⅢのレンズはZeiss製である。Zeissは,顕微鏡も製造しており,双眼実体顕微鏡(Stemi 2000C)は使い勝手もよく,美しい写真が撮れる。ただし,双眼実体顕微鏡の方で使用しているカメラはPENTAX K–rとK–10である。PENTAXのカメラも悪くない。

 9月13日に,ぴよ吉のエサ(バッタ,イナゴ,コオロギ)を捕まえに井原に行った。途中の民家の庭にコスモスが咲いていたので,軽トラの中からカメラを出して撮影した(図5)。この写真は,明暗もコントラストもシャープネスも全くいじくっていない。もちろん画像の改変もない。ススキと同様に,コスモスの花が映える時期は限られている。ちょうどその時期に通りがかったので,きれいな写真が撮れたのだと思う。

 ブッポウソウはいつ渡りをするかでまとめるつもりが,終わりはSONY RX10Ⅲがいかに優れたカメラかを宣伝する記事になった。

 Canonの600mmレンズは,resolutionは最高レベルであり,EOS 7Dにつけるときれいな写真が山ほど撮影できる。そういう写真こそが素晴らしいと主張する人はいるだろう。しかし,私はそうは思わない。レンズのresolution(解像度)がよければ,被写体はそれだけ動きがない写真になる(図6)。それがよい時もある。

 しかし,少し工夫すれば(図3),あるいは偶然のこともあるが(図4),動物の動き(action)を表現することもできる。それを考えると,重たい400–600mmレンズ(2 kgぐらいありそう)をつけたカメラと比較すると, やはりSONY RX10Ⅲは使い勝手の良いカメラだと言える。Resolutionも優れている。図1も拡大すれば,ブッポウソウの羽の白紋までかなり鮮明に見える。

図6.エンマコオロギのメス。生物写真では瞬間的な動きを捉えるか,精密さを表現するか,どちらかに焦点を当てるとよい。それと,目的に合わせて中古カメラや中古レンズ選びをするのも大変面白い。

 SONY RX10Ⅲは,性能の良いカメラの割には,中古は多く出回っていない。そんなに数の出た機種ではなかったのだろう。中古もかなりの値段(8–9万円)である。いまこのカメラと同等な性能を持った機種を探している。

 最初の目的として,現在手元にあるVixenのフィールド・スコープを中古のEOS 7D(ランクはAB,30,300円で購入)につけてみたが,結果はいまひとつだった。カメラの世界,というか,精密機器類の世界は,古い機種ほど一般的には性能が落ちる。もったいない精神で行くと,時流に乗り遅れるだろう。一方,最新の機種は高価で自分にはとても購入できない。だが,EOS 7Dあたりになれば,最新の機種(どんなのか知らない。わかっても買えないので調べていない。)に比べ,そんなにそん色はないように思える。数も出回っているので,注意して中古品を購入すれば,結構なレベルに達するような気がする。Canonのレンズ(EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS APS-C対応)が使えそうな感じがする。カメラのキタムラだと,このレンズの中古は26,000~27,000円ほどで購入できる。

 来年(2023)は,ブッポウソウの行動と音声を同時に記録しようと思う。動画の中に音声記録があり,音声記録の方はRaven Liteでソノグラムを作って音声解析を行いたい。EOS 7Dはこの目的には合致しない。(動画だと3分で1ギガバイトを使う。)集音マイクを直接つなげるビデオカメラを購入する必要があるだろう。

<参考文献>

三枝誠行・近澤峰男(2022)自然のふところ-近澤峰男さんと共に歩んだ自然哲学の道。生物多様性研究・教育出版会。

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