令和4年(2022)のブッポウソウ情報 No. 17:C-07でまた事件発生(ふ化直後にヘビに食べられた?)

令和4年(2022)6月30日(木)

 吉備中央町湯武(ゆぶ)にあるC-07の巣箱では,昨年(2021)ブッポウソウの首なし事件が発生した。卵を温め中のオスの首を落とした犯人は,イタチではなく,近くにいたブッポウソウのオスだろう。私は「キラーD」と名付けたが,十分な証拠がある訳ではない。キラーDが実際に存在する可能性は,今のところ50%と言ったところである。

図1.湯武(ゆぶ)の電柱に架けられたC-07の巣箱。電柱の左側にある2本の電線が,写真左側にあるヒノキの枝に接触しているのがわかるだろうか。6月29日撮影。ふ化したばかりのヒナはこの巣箱にはもういない。

 C-07の巣箱の移設の際,電柱(図1)に電線がヒノキの枝にかかっていたの,設置の際にすでに把握していた。しかし,20mも離れていれば大丈夫だろうと高をくくっていた。C-07では5月27日あたりからペアが来ていた。ねらっていたのはC-07ではなく,30mほど離れて木柱に添架された木柱型巣箱だったのかもしれない。しかし,木柱型の巣箱は,おそらく中に産卵する十分なスペースがなく,それに気づいたペアはすぐにC-07に移ったはずである。

 C-07のペアは,今年初めて来たのか,どこかの巣箱から移ってきたか不明である。5月28日にはまだ産卵が始まっていなかった。6月2日に見たときには,ペアは巣箱からすぐに逃げたので,初めてここに来たペアなのであろう。いったん逃げても,この巣箱を使うと決めていれば,しばらくしてまた戻ってくる。6月6日に見たときには,メスが巣箱の中にいて,メスの横には卵が2つ見えた。おそらく最初の卵が産まれたのは,6月3日か4日で間違いないだろう。そして6月10日には,卵が4つになっていた(図2)。

図2.C-07で産まれた卵4つ。卵は,6月4日から1日おきに生まれ,6月10日に見たときには4つになっていた。6月26日撮影(CASIO Exilim)。

 卵が4つ産まれてから,温めはオスとメスが交互に行っていたと思う。6月26日に見たときには,親は巣箱の中にいなかったが,胚発生は順調に進んでいると思われた(図2)。C-07では,ヒナのふ化は6月28日と予想された。

 6月29日に湯武を通りがかった際に,もうふ化しているだろうと期待しながら巣箱の中を見た。意外なことに,26日にいたときには4つあった卵が跡形もなく消えていた。この畑でビワに袋掛けをしていたじいちゃんに尋ねてみると,ブッポウソウがひどく騒いでいたことがあったという。

 ヘビが入ってふ化したばかりのヒナを全部食べてしまったのだろう。ヘビ(主にアオダイショウ)は,卵でもヒナでも丸呑みする。だから,ヘビの攻撃を受けた巣箱は,内側でも外側でも,卵殻の破片などは一切散らかっていない。

 それにしても,この巣箱を襲ったヘビはしたたかである。きっと前々から巣箱の中にはおいしいエサがあることがわかっていたのだろう。そして,ヒナがふ化するのを近くで辛抱強くじっと待っていたのだろう。

図3.ふ化直後のヒナが捕食され,空になった巣箱。ヒナがふ化したとたんに襲われているようだ。6月29日撮影。

 このヘビ(もちろん名前はない)は,6月28日になってヒナがふ化するや否や,ヒノキに登り,枝から電線を伝って巣箱に入りヒナを全部失敬してどこかへ消えたということであろう。

 しかし,アオダイショウがそんな遠くからヒノキを伝って巣箱にくるなど,証拠もないくせによくそんなことが言えたものだ,と強く反論する方もおられるだろう。地上から3.5~5mも離れた巣箱の中においしいエサがあることをどうやって認識できるか,そしてどうやって巣箱に入れるのか,私もかつては懐疑的であった。

 ヘビ類には,哺乳類の出す熱(赤外線)を感じるヤコブソン器官があることはよく知られている。しかし,ヤコブソン器官によって,この電柱の上においしいエサがあるということを認識できたとしても,電柱には登れない。木柱の場合には,体表のうろこを立てて容易に電柱に登ることは確認されているが,コンクリートでできた電柱は滑りやすく,ヘビが登ることはできない。これも確認済みである。とすると,ヘビはどこから巣箱にやってくるのか?巣箱の入り口や天井に仕掛けた防犯カメラは,犯人探しに大いに役立った。ヘビはまず巣箱の近くにある人家の壁や,枝のかかっている木の幹をよじ登り,それから電線を伝って巣箱に侵入することが判明した。しかも,場所によっては巣箱のある電柱から20m以上も離れたところから電線を伝ってくることが明らかになった。

 里山をご存じでない方や,何事につけても童話や絵本風に解釈したがる方々には,本当のことは理解していただけないかもしれない。しかし,ヘビが20m以上も離れたところから電線を伝って巣箱に入り,ヒナや卵を呑み込んでしまうことは,多くのビデオカメラの記録から明らかになっている。今は,そういう証拠をできる限り数多く残しておくことが必要だろう。

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