ブッポウソウ総合情報センター速報 (No. 50)

令和3年(2021)8月9日(月)

今年(2021)最後の巣立ち,および 生物多様性研究・教育プロジェクトの視点と目標

今年(2021)は,最後までヒナが残った巣箱は,吉備中央町藤田にあるP-06である。

8月5日に小型カメラで巣箱をのぞいたら,ヒナが1匹残っているのがわかったが,全然動きがないので,カンカン照りの中(図1),電柱に登って巣箱のふたを開けてみた。

図1.P-06の周囲の景色。手前に見えるのは枝豆の畑。ブッポウソウの親は正面のアカマツ林の上にいて,巣立ちコールを発している。巣箱の中を見るためにカメラは継竿の先端に下向きにつけている。カメラが付いたまま写真を撮ると,どうしても竿の基部の筒が入ってしまう。

巣箱の中にいた1匹のヒナを調べたが,どこにも異常はないようだった。巣箱の中に霧吹きをしてから,エサ(湯がいた鶏肉)を少し口の中に押し込んでから,フタを閉じた。

8月6日(金)は,P-06以外では全部巣立っていて,残るはこの巣箱だけになった(図2)。正面の林からは,親の巣立ちコールがずっと聞こえてきた。

図2.巣箱(P-06)に残る最後の1個体。
前日,そして前々日と全く同じ格好をしている。

巣箱の底にいる個体に動きはなかったが,8月6日は電柱には登らず,そのまま基地のある峰ピョン谷に帰投した。翌8月7日(土)の午後にP-06に行った。この日は親の巣立ちコールもなく,辺りは静かだった。これは巣立ちが終ったかと思い,巣箱の中を見るとやはり空になっていた。

今年(2021)は,P-06の巣箱で最後の巣立ちが終了した。巣立ちの終了は例年に比べて1週間ほど早かった。数日間休みを取り,峰ピョン谷の草刈りを行う予定だ。4~5日はかかかるだろう。草刈りが終わったら,今年のデータを整理して原著論文の作成に入る。
「皆様,大変お疲れさま」と言いたいところだが,これからが本番である。

<生物多様性研究・教育プロジェクトの視点と目標>

生物多様性研究・教育プロジェクトは,地方自治体や大学の下部組織ではなく,これらからは完全に独立した研究・教育組織である。日本の社会では,新しくできた組織に旧来の組織の影響力を行使しようとする強い力が働いているようだが,多様性プロジェクトは,地位も名誉もお金も関心がなく,既成の組織が影響力を行使するメリットはない。

独立した研究・教育組織とは,要するに,自分たちの進む道は,自分たちで決定する組織ということである。専門的研究や教育を進めて行こうとすると,必ずと言っていいほど,権威をかたり,進路を妨害する者が現れる。自分の敷いた道を踏み外してもらっては困るという強い思いがあるのだろう。しかし,権威を自称する者の敷いた道(例えば学説)は,その当時は光ったかもしれないが,新しい成果を生み出し続けない限り,すぐに時代遅れになる。

一般に,日本人は権威者を見ると,その学説に疑念を抱くことなく従順になる人が多い。権威者の「臭い」をかぎわける能力に長けた者もいる。トラの威を借りて,これが現代生物学の最新の成果だと威張ってみても,直ぐその脇でもっと革新的な研究が芽生え始めている。多様性プロジェクトは,そういう研究や教育を支援したい。

私は,権威者の唱える学説については,初めから否定することはない。まずは理解するよう努力をする。だから,まず権威の者が唱える学説の中身をよく調べてみる。そうすると真実が見えてくる。

例えば,ダーウィンの唱えた自然淘汰説は,社会学的な面から見た生物の進化説として優れているが,しかし進化のもうひとつの重要な側面である発生(development)や形態形成(morphogenesis)は考慮されていない。コープの定向進化説やエルドリッジとグールドの区切り平衡説は,生物進化の優れた説明である。内在する生命力を仮定しているからおかしい,という主張はお門違いである。ラマルクの進化論(生物は進化するという考え方)も,現代生物学の知見に抵触はしない。集団遺伝学者は,単純な仮定の上に立って理論を構築し,それを一般化し,異説を唱えるものを排斥している。しかし,無目的な素材から目的を持った生物が出現する説明に,彼らの一番嫌いなはずのオカルトが入っている。物質は,化学結合することによってそれぞれの要素の加算とは違った性質(化学結合の積み重ねが,いわゆる生命力につながる)を示すようになることは,考えてもよいだろう。

独立性が高くないと,さまざまな学説に対して客観的で公平な意見が言えなくなる。「独立性が高い」ことは「自分勝手な考えをする」ことではない。この点をご理解いただけるとありがたい。実際には「独立性が高い」ことと「自分勝手な考え方をすること」は,紙一重の違いだけれども・・・。

生物多様性研究・教育プロジェクトが戦う相手は,結果として,だいたい海外において権威を自称する「敵対者」である。日本人ではないことが多い。ということで,多様性プロジェクトの敵は,本能寺にもいないし,そこらの大学や研究所にもいない(そう思うなら被害妄想)。しかし,あの野郎は生意気だから,捕まえて懲らしめてやろうと思うなら,その傲慢さには強く反撃するだろう(図3)。

<参考文献>
Futuyma, D.J. 1998. Evolutionary Biology. Sinauer Associates, Inc. Massachusetts.
Patterson, C. 1999. Evolution. Comstock Publishing Associates, New York.
八杉竜一 1969. 進化論の歴史,岩波新書.

図3.モニターの上で眼を閉じて寝ているぴよ吉。トイレのしつけもだいたいできているが,さすがに2か月も部屋の掃除をしなかったので,部屋の中に置いたトイレにはウンチがたくさんたまっている。あまり臭いはしないことはラッキーだ。寄生虫もいなさそう。モニターの上にとまって目を閉じ,音楽を聴くのが楽しいらしい。くちばしの色が黄色から赤色に変わると,攻撃力が高くなり,手に負えなくなる可能性があるので,メスと同居させていない。ブッポウソウの生殖腺の発達に,光周期が直接影響する可能性は低いだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です