令和3年(2021)7月27日(火)
長い間巣箱を出られなかったヒナがとうとう巣立ちした。
7月27日現在で,まだヒナが残っている巣箱は,全部で15コ前後になった。今の時期(7月下旬)になると,面白いことに,ヒナがいる巣箱では一匹だけ残っていることが多い(図1)。一匹だけヒナの残っている巣箱の割合(数)については,次の速報でお知らせする。
図1は,天福寺の下にあるH-14の巣箱の中を示している。7月17日に巣箱を見たときには,3匹は無事に巣立ちを終え(多分7月15日前後),巣箱の中にはヒナが一匹残っていた(図2)。
図2をよく見ると,このヒナは羽毛の発育が完成しておらず,まだ巣立ちには早いことが推察される。しかし,この時点(7月17日)では,この後9日間も巣箱に居続けることになろうとは,予想だにできなかった。
竿の先につけた小型カメラで撮影した写真では,巣箱にいるヒナの状態がよくわからない。そこで電柱に登り,巣箱のふたを開けてヒナの状態を調べてみた(図3)。
ヒナはよく成長し,健康状態にも異常は見られなかった(図4)。ただ,親の姿が近くに見られなかったので,このまま放鳥とはいかず,エサを与えてから巣箱のふたを閉じた。
ヒナの生育状態はよく,親が来てエサを与えている可能性はあったが,1週間も置き去りにされているのは少し心配だったので,こういうケースではいつもエサを与えている。
天福寺の下にあるH-14の巣箱では,今年(2021)には4つ卵が産まれ,すべての卵でヒナがふ化した。図5は,6月29日に巣箱の中を撮影した写真である。巣箱の中には,ヒナが4匹いるのがわかるだろうか。くちばしを数えてゆけばよい。
図5の写真で注目していただきたいのは,中央にいるヒナである。このヒナを囲む3匹はすでに眼も開き,羽軸の形成が始まろうとしているが,中央の個体は明らかに小さく,まだ眼も開いていない。多くの野鳥では,成長の遅れたヒナ(中央のチビ)はエサがもらえず,途中で死亡することが多いかもしれない。
しかし,ブッポウソウは成長の遅れたヒナを巣立ちまで導いているからすごい。
結論を急ごう。
7月17日に巣箱に残っていたヒナ(図1から図4)は,図5に示した4匹のヒナのうち一番チビだろう。親がチビにも優先的にえさを与えることがあるのか,あるいはチビでも兄弟が食べ残したエサを拾って食べ,小さいながらも強い「餌くれコール」(ケケケケケケケ・・・・)を発してエサをもらうことができるか,まだわかっていない。いずれにしてもブッポウソウの場合には,最後のチビまで巣立ちにこぎつけることが多い。
図1~図4に示したヒナは,もう十分自力で飛べる状態になっていると思われる。
問題は,親が近くにいて「巣立ちコール」(ケッ・・・,ケッ・・・,ケッ・・・)を発しないと,ヒナは巣立ちしないことである。H-14の場合には,7月24日に親の気配がなかったので,ヒナは巣箱に戻した。7月25日も行ってみたが,やはり親の気配はなく,エサをやった後にヒナは巣箱に戻された。
7月26日にまた行ってみると,遠くからかすかに親の鳴き声が聞こえてきた。ゲチョ・ゲチョと鳴いていたか,ケッ・・・,ケッ・・・と鳴いていたかよく覚えていないが,ひょっとしたらこれはと思いながら,巣箱の中にカメラを入れると,ヒナの姿はなかった。無事に巣立ちが完了していた。
ブッポウソウの親は,ヒナがふ化してからは相当辛抱強くケアをする。H-14の場合には,親は先に巣立った3匹の幼鳥の世話のため,巣箱の近くにいなかったと思われる。親の姿が見えないからといって,すぐ幼鳥を引き取らずに,何日間かエサを与えて親が戻ってくるのを待つべきだろう。面白いことに,ブッポウソウは私が電柱に登って巣箱のふたを開け,ヒナにエサをやることを全然嫌がっていない。
今まで多くの巣箱で,親の亀背がしなかったときには,電柱に登り,ヒナにエサをやってきた。すべてのケースで親が戻ってきて巣立ちを成功させている。
巣立ちが近づいたヒナは,一度電柱に登り,巣箱のふたを開け,ちょっとエサやりの「ご挨拶」をすれば,巣立ちの成功率が非常に高まる(多分100%)ように思われる。ヒナとすれば,突然巣箱の外に現れた「化け物」を見たら,親から「巣立ちコール」が発せられると,さっさと巣箱から逃げ出したくなるのではないか。こんなところに長居はできない・・と。
逆に,親の「巣立ちコール」があっても,結局最後まで巣立ちのできない気弱なヒナもいるだろう。それが速報No. 38で報告した死骸につながる。そういうヒナに対しては「早く出ないと,親において行かれるぞ」とハッパをかけてやることが必要である。巣箱から顔出しもできない個体には,巣箱を開けて「こんにちは」をすれば,巣立ちを促すことができる。