ブッポウソウ総合情報センター速報(No. 37)

令和3年(2021)7月22日(木)

7月20日を境に,空になる巣箱が急増する。

7月20日と言えば,ブッポウソウの写真を撮る方々にとっては,ほとんど仕事はお終いかもしれないが,私にとっては7月21日から8月15日までの26日間は重要な時期である。「みんな巣立ったから.今年はもう(写真を撮りに)来ないよ。」とは行かないのである。

まず結論から・・・。ここ10年間,いつ巣立ちが完了するかを調べてきた。巣立ちは7月10日前後から始まり,7月20日までの10日間が最盛期になる。この期間に子育てのあった9割以上の巣箱で巣立ちが完了する。この期間を「正常な」巣立ちの時期と考えてよい。

一方,7月21日を過ぎても1割ぐらいの巣箱では,まだヒナが残っている。もちろん,7月21を過ぎたら「異常がある」ということではなく,時期的に見て大多数の個体から「遅れている」という意味である。巣立ちが遅れたからと言って,ヒナの成長自体に異常がある訳ではない。この点はよくご理解いただきたい。

巣立ちの正常な時期がわかれば,その範囲を逸脱する巣箱については,巣立ちの遅延する原因を特定できるかもしれない。このような視点でブッポウソウの巣立ちのデータを集め,例えば3年間分のデータを定量化すれば(図や表によって表現する。)遅延の原因について十分な議論ができるだろう。これならば原著論文が書けるし,出版してくれる国際誌もあるに違いない。速報で読者の方々にお知らせするのは,巣立ちのピークとか,終わりの時期とか,そのイメージである。

7月20日(火)は,上井原から広域農道を通り,まず上有漢にある巣箱を調べた。13コ調べたうち(子育てを行っているところのみ)10コで巣立ちが終わっていた。まだ巣立ちが始まっていない3つの巣箱の内訳を表1に示した。

表1.まだ巣立ちしていない巣箱(和田と上有漢の巣箱)

続いて,中井町周辺では10コ調べたうち,7つで巣立ち終了。まだ巣立ちが始まっていない3つの巣箱の内訳を表2に示した。J-01とJ-07は正常範囲に含められる。

表2.まだ巣立ちしていない巣箱(高梁市中井町)

さらに,新見市北房町にある8つの巣箱は全部巣立ち終了。

北房町から再び有漢町に戻って,県道49号の西側に設置した巣箱を見た。全部で20見た中で,巣立ちの終わった巣箱は15。75%で巣立ち終了。残る巣箱の内訳を表3に示した。N-08とM-05は正常範囲に含められる。

表3.まだ巣立ちしていない巣箱(高梁市有漢町)

表1~表3に示したように,まだ巣立ちしていないヒナがいる巣箱では,何らかの原因で産卵が遅れた可能性が高い。(もちろん,各巣箱の産卵時期のデータもある。)産卵の遅延をもたらす原因はひとつではなく,複数あるだろう。どのような原因が産卵の遅延をもたらすのか,原著論文のDiscussionのところで述べればよいだろう。

図1.大量のワラの上にいるブッポウソウのヒナ。
たぶんヒナの頭にカメラがぶつかっている。

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