ブッポウソウ総合情報センター速報(No. 23)

令和3年(2021)7月4日(日)

ブッポウソウの威かく攻撃

ヒナはふ化した時点では,体表には羽がなく,私は「チュクヒナ」とか「赤ヒナ」と呼んでいる。チュクヒナというのは,巣箱の下に行くとチュク・チュク・チュクと餌くれコールを発しているのが聞こえる。また,少し成長すると羽は生えていないが,羽軸の発現が始まるころは,色が赤いことから名づけられた。ともに,私の造語であって,学術用語として認められている訳ではない。

一本の羽(feather)は,中央の羽軸(shaft)の左右に羽枝(barb)が等間隔(恐らくミクロンの単位)に配列する。配列の仕方は,対生のようだ。羽枝の両側には,さらに遠列羽小枝(distal barbule),反対側には近列小枝(proximal barbule)が配列される。羽小枝の配列の仕方は互生のようだ。遠列羽小枝と近列羽小枝は,見る角度によって紫色(波長)の反射率が多少(2~3%程度)異なるのだろう。鳥の羽(feather)が構造色と言われるのは,主に小枝の固有の構造が原因かもしれない。羽の構造をよく調べずに「構造色」などと誇張する方々がおられるが,自然科学として羽を考察しようとすれば,構造(形態)に関するいくらかの知識が必要である。知識をひけらかしている訳ではない。誤解なきようお願いしたい。

ということで,羽軸の両側に羽枝,さらに羽枝の両側に羽小枝が展開するようになると,ブッポウソウの羽の色は,薄黒い色からくすんだ青緑色に変わってくる。親の方は,ヒナの羽(feather)の色には敏感に反応するかもしれない。まだ,巣立ちには10日ほど早くても,巣箱の近くで警戒飛しょう(巣箱を遠目に見ながら,激しいアップダウンのパフォーマンス)が見られるようになる。警戒飛しょうに続いて,侵入者に対して威かく攻撃(warning attackでいいのか?)をかけてくる個体もいる。威かく攻撃が激しいのはオスである。

私は,ブッポウソウの威かく攻撃を写真にとりたいと思っていた。だが,今まで使っていたカメラは,早く動く動物は撮れなかった。特にブッポウソウの威かく攻撃は,軍艦を攻撃する雷撃機のように,遠方から高速で真直ぐ目標に接近する。連写が可能であることと,比較的広範囲に自動でfocusを合わせられる機種が有効だろうと予想した。

幸い,近澤峰男さんがお持ちのSONY, RX10Ⅲは,その目的に合致したカメラだった。Zeissのレンズを組み込んでいるところもちょっと魅力的である。SONY, RX10Ⅲは,昆虫に対しても静止写真であれば,4~5m以内ならばいいのが撮れる。中古で買えば,安く手に入ると思う。Resolutionや機能と対値段で考慮すれば,お買い得感は高いのではないか?

図1.ブッポウソウの威かく攻撃。始めは,巣箱の周りを羽ばたきながら飛んでいるが,
急にこちらに頭を向けると滑空しながら降下体制に入る。角度としては,30°から50°ぐらい
だろうか,真直ぐ攻撃対象めがけて直進する。最初にfocusを近くに合わせ,シャッターを
半押しする。ブッポウソウが来ていると思われる方向にカメラを向けたまま,ファインダーを
覗かずにシャッターを押す。偶然によい写真が撮れた。

ブッポウソウが威かく攻撃を披露してくれる巣箱は多くない。ブッポウソウが観察者に慣れていることが必要かもしれない。図1は,上竹荘にあるH-20の巣箱で撮影された威かく攻撃を示している。全部で23枚の写真の中に,ぼやけた姿のブッポウソウとシャープな映像があった。図1はそれらのうち1枚目(上段),5枚目(中段),16枚目(下段)を示している。最初にfocusを近くの物に合わせているので,攻撃してくるブッポウソウが画面に登場するのは攻撃対象(私)にかなり接近してきてからである。

当然最初は,ピンボケの写真になり,接近するにつれピントが合ってくる。写真は一切加工していない。ピントが合ってくるに従い,体も大きくなってくるのがわかる。雷撃機だと,図1の下段の写真は,魚雷を投下する直前と言ったところか・・・。

以下の5枚の写真(図2)は,魚雷を投下してから自身の回避行動に移る(そのままだと攻撃対象に激突する)までを示している。最初(図2,19枚目)が,ちょうど魚雷を投下した瞬間ぐらいである。くちばしは閉じ,攻撃対象をじっとにらみつけているのがわかるだろう。

図2.19枚目から23枚目までの連続写真のひとつ。上の写真は19枚目。
接近角度は30°ぐらい?雷撃機だとちょうど魚雷を放つタイミングだろう。
図2.上が20枚目,下が21枚目の写真(ともに回避行動の開始)。
図2.上が22枚目,下が23枚目(ラスト)の写真(オス)。24枚目には空が写っていた。
図3.H-20の巣箱の内部。外で物音がすると,ヒナはくちばしを閉じて動かなくなる。
目は時々開いて周囲を確認している。体を動かさずじっとしているが,時々ちょこっと目を
開ける姿には愛嬌がある。

H-20で威かく攻撃を撮影したのは7月3日。巣箱の中の様子が図3に示されている。羽軸(うじく)の生えたヒナが4匹。ヒナのお尻がやけに膨れている(正常)のが面白い。

まあ,こんな写真(図1~図3)は,興味を持つ人はいないだろうから,記事にしても見る人はいないと思う。しかし,私が見たいのはきれいなブッポウソウの写真ではなく,動物の行動である。

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