令和3年(2021)7月1日(木)
衝撃事件:巣箱の中で死んでいたのは首のないブッポウソウだった。
足王大権現の近くにA-05とG-04のナンバーがついた巣箱がある。この付近では,ブッポウソウが産卵した後,卵が巣箱の外に落とされたり,ある日全部なくなっていたりと,何年もトラブルが続いていた。A-05も2015年に設置してから何回もトラブルに見舞われた。A-05で起きるトラブル(原因はよくわからない)を回避するために,4年ほど前にG-04を新しく掛けてみた(図1)。
G-04を掛けた次の年に,やはりA-05でトラブルが起き,ペアはG-04に移った。この年は子育てが成功した。気になったのは,A-05でトラブルが起き,ペアがG-04に逃げたのだから,A-05では子育てが継続してもいいはずなのに,A-05は空になってしまうことだった。
電柱登り機(与作)を使って電柱に上り,G-04の巣箱のふたを開けてみた(図1)。中から出てきたのは,首のないブッポウソウのオスとその下に今まで温めていた卵3つ。さらにワラの中には,ブッポウソウにワラを踏みつけられ死んだスズメの卵だった。
<G-04のオスの死亡原因>
6月30日にG-04の巣箱で見つかったオスは,まだ血が完全に固まっておらず,巣箱を調べたその日(6月30日)か,1日前(6月29日)に死亡したと思われた。
G-04では,6月10日あたりまでは,ブッポウソウはいなかった。一方,A-05には5月30日の時点で卵が4つ産まれていた。6月15日に見ると,A-05では巣箱の中で足環のついたメスが死んでいて(図3),4つあったはずの卵も持ち出されていた。A-05で死んでいたメスを埋葬した後に,何度かA-05を見たが,結局その巣箱は使われなかった(図4)。
A-05では,昨年(2020)には,5月9日だったか,オスのブッポウソウが落鳥した。幸い傷はなく,1か月後に放逐されたが,結局ここでは産卵されることはなかった。メスもいたが(今年巣箱の中で死んだメス),オスが落ちてからしばらくしていなくなった。今年(2021)は,去年と同じペアが戻ってきた可能性がある。
一方,6月15日にはG-04にブッポウソウがいるのが確認された。おそらく産卵準備中のメスだったのだろう。産卵数が3というのは,新しくやってきたメスなのだろう。オス(図2)については不明だが,これも新しく来た個体の可能性と,去年落鳥した個体の可能性がある。
オスは卵を温めていて,外の異変(具体的に何が起きたか不明)に気付き,巣箱から顔を出して外を見た瞬間,何者かに頚椎(胸部に近いところ)をものすごい力で噛みつかれたか,つつかれたのだろう。考えにくいことではあるが,首が吹っ飛んだ。ほぼ即死で,そのまま仰向けにひっくり返り,卵にかぶさったのだろう。巣内で争った跡はなかった。
猛禽類がやったとしたら,巣箱から引っ張り出し,ブッポウソウの体を押さえてからつつき始めるだろう。トビは,確かに巣箱の上にとまることはあるが,ブッポウソウの首にかみつくという可能性は低いように思われる。(ヒナが襲われたときに,巣箱の上にシラサギやアオサギのせいにされることがあるが,ビデオカメラの解析をすると,とんでもないところからアオダイショウがカメラの配線を伝って侵入する画像が記録されている。)もちろんヘビでもない。
関係者の中では,何に襲われたのか意見が分かれている。今は断定してしない方がよい。
さらに,吉川で6月8日に落鳥して1週間後に死亡したブッポウソウのオスのことを思い出してみよう。この個体は,右翼の付け根の(太い)上腕骨の胸部に接続する部分が大きく破壊されていて,修復は完全に不可能な状態だった。G-04のオス(図2)がつつかれたか噛まれたかされた部位は,吉川で落鳥したオスと非常に近い部分ではないかと思われる。とすると,ブッポウソウ(あるいは野鳥全般)の急所をよく心得た動物の仕業の可能性が高くなる。
しかし,頚椎を激しくつつかれたか噛まれたとしても,頭部が吹っ飛んでしまうほどの攻撃になるのだろうか?謎は深まるばかりである。
<A-05でメスが死んだ原因>
A-05 では6月15日に巣箱内での死亡が確認された(図3)。死んでからかなり日数が経過していたので,死因については特定できなかった。
このメスは,羽の付け根や首の根元あたりを攻撃された可能性がある。羽の付け根であれば数日は生きていたかもしれないが,頚椎を破壊され,肺に穴が開けばほぼ即死状態になる可能性がある。本当に想像にすぎないが,このメスも巣箱の入り口あたりで攻撃され,大きなダメージを受けて巣箱の中で死亡したのかもしれない。
巣箱の中で一匹だけ死んで残ることがある。巣立ちの最後の幼鳥が自力で巣箱を登れないという人がいる。私は,死んでいるのは巣立ちに失敗した(つまり自力で巣箱から出られなかった)幼鳥ではなく,成鳥の可能性も捨てきれないと思っている。
メスが卵を温めてくれるのか,あるいはもっと別なことが起きるのか,読者の方々はどのようなことが起きると想像するだろうか。結果は,次の速報でお伝えしたい。
巣箱かけが成功し,ブッポウソウの個体数は飛躍的に増加した。これから似たような事件が益々増加するだろう(図6)。こういう事件ひとつひとつを詳しく調べてゆけば,よかったとしても,悪かったとしても,生物社会の真の姿を知ることができる。そいういう意味では,不遇な死を遂げたブッポウソウであっても,自然保護の研究に大いに貢献するに違いない。