樹液に来たヒラタクワガタのオス2匹
6月24日(木)は,上有漢方面の巣箱調査に行った。天気は薄曇りで,気温30°C。暑い。
里山の雑木林の緑はさらに濃さを増し,道端には一面にヒメジョンの花が咲き乱れている。ひときわ目立っていたマタタビの白い葉は緑に変わり,雑木林の緑に溶け込んでいる。代わりによく目立つようになったのはクリであるが,すでに花は散りかけ,狭い道を通ると軽トラの荷台に枯れた花の塊(何と呼ぶかは知らない)がいっぱい落ちてくる。ミズキが咲き始めているが,なぜか里山のミズキの花は昆虫には人気がない。
上有漢の多くの場所には,4車線化するための岡山自動車道の造成が行われていて,残土を運ぶダンプカーが工事現場と残土堆積場の間を頻繁に往復している。かつて残土堆積場の近くにあったL-04の巣箱は,さすがに埋め立てをするブルドーザーが激しい音を立てて動き回る姿に驚いてか,工事が始まった年から来なくなった。ブッポウソウは,土地の造成工事があっても,耐え忍んで子育てを続けることが多いが,さすがにあまりひどいと逃げ出す。
同じような事例が,吉備中央町の「北」という地域で,河川の改良工事をしたときに発生した。B-12の巣箱でブッポウソウは産卵をしたが,人や機械が激しく動き,その際に出る騒音に耐え切れず,とうとう巣箱を放棄してどこかへ行ってしまった。また,もっと前のことになるが,吉備中央町の納地(のうち)という地域で,ソーラーパネルの設置工事が行われたことがあった。その時も,かなりの規模の造成工事で,騒音もひどく,ブッポウソウが巣箱に入れず,どこかに行ってしまったことがあった。道路工事や土地の造成工事でブッポウソウが巣箱を放棄する事件は,毎年1~2例発生している。
話は元に戻って,上有漢で今も続いている残土堆積場に入る道路の脇に,ナラガシワの小木が数本あり,樹皮がところどころめくれていて,樹液が浸み出したらクワガタムシが来そうなところがあった(図1)。6月24日にこの場所を通りかかったときに,ひょっとしてと思い,林床のササをかき分けて樹幹を見ると,やはりクワガタムシが来ていたではないか。
クワガタムシは2匹,かなり大きめのヒラタクワガタであった(図2と図3)。この場所は,ナラガシワの小木までササを踏み分けた後がない。だからまだ採集者には知られていない場所である。上有漢には里山の典型的な景観(私がそう思っているだけ)が広がり,すごい珍品は期待できないかもしれないが,里山を代表する多くの生物が見られる。
余計なことかもしれないが,柏餅を包むにはカシワの葉でなくてもナラガシワの葉も使える。(実はカシワとナラガシワの区別はよくわからない。)私が育った伊豆半島では,カシワもナラガシワもなかったのかもしれない。ホウノキを蒸して餅を包んでいた。サルトリイバラの葉を使うところもあるだろう。夏緑樹林帯では,ホウの代わりにトチの葉も使えるが,夏緑樹林帯にはカシワはいっぱいある。
さらに余計なことかもしれないが,北海道の対岸にあるロシアの沿海州の平地には,カシワ,ナラガシワ,ミズナラの林が広がっている。みんなミズナラと言ってもいいのかもしれない。ミズナラと並んで目立つのが,ヤナギ(種類は不明)とカエデ(やはり種類不明)である。樹木の多様性はずいぶんと低そうだが,昆虫類,特に蝶の多様性には目を見張るものがあった。樹木の葉だけではなく,草の葉を食べる幼虫も多いのだろうか?あるいは,ミズナラを(幼虫が)食べる種類が多いということなのだろうか?
図4の手前側20mのところに私のお気に入りの巣箱がある。道路上には7月になると,ミヤマクワガタやノコギリクワガタの頭部(大あご)が散らばっている。ブッポウソウが食べたかは不明だが,この場所で燈火採集をやったら面白い甲虫がいっぱい獲れそうである。