令和3年(2021)6月23日
ブッポウソウはふ化最盛期に入っています。
初夏の里山の自然は目まぐるしく変化しており,1週間たつと周囲の景観が大きく変化しています。
ブッポウソウの方は,5月終わりごろに産卵のピークを迎えましたが,6月13日ごろからふ化が始まり,6月21日か22日ごろは,ふ化の最盛期に入っています。詳細は,後程述べるとして,ブッポウソウのふ化状況をお知らせします。
図1は,6月22日吉備中央町の納地(のうち)というところにある巣箱(D-04)。ヒナの頭が4つ見える。巣箱の中にカメラを入れると,親がギャーギャー鳴いてうるさいが,この巣箱のように外部からの侵入者(小型カメラ)に全然警戒していないところもある。
図2は,高梁市巨瀬町(こせちょう)にあるL-10の巣箱。ヒナ3匹がふ化。ひとつ未ふ化卵がある。L-10は毎年スズメの攻勢が激しく,卵の下にはたくさんのワラが置かれている。スズメが入れた巣材である。ブッポウソウは,ワラを踏みつけて産卵した。
未ふ化卵は,もうふ化することはないだろう。未ふ化卵について,未受精卵とかいう方々がおられるが,受精卵であって胚発生が開始されなかったため,途中で死んだと考える方がよいだろう。卵を割れば,黄身が出てくるが,だからと言って未受精卵と決めつけることはできない。
では何で受精卵なのに胚発生が進行しないことがあるのか?その原因や理由については別の機会に述べてみたい。
図3は,吉備中央町の和中にある巣箱。6月22日に見たときには,全部ふ化していた。何匹ふ化したかわかるだろうか?ヒナの頭部に注目するとわかりやすい。4匹ふ化して,ひとつが未ふ化卵である。この卵(胚)がふ化する可能性は低いが,もしふ化している4匹のヒナよりかなり遅れて産卵されていたとすれば,まだふ化する可能性はある。
ヒナが誕生した巣箱では,メス親がしばしば巣箱内に入り,自分自身かオスが運んできたエサをかみ砕いてはヒナに与えている。この時期のヒナは親がいないと育てることは難しい。
この巣箱(図3)では,親は両方巣箱の外で待機し,エサをとっては巣箱に運んでくるので,外にいる親を見る機会は大幅に増加する。
図4は,高梁市巨瀬町にあるN-04の巣箱の中を示す。この巣箱は道路の脇にあるが,車は多く通らない。しかしすぐ近くで土手の崩壊を防ぐための砂防工事が行われていた。重機の出す激しい音や振動に躊躇したのであろう。スズメが頻繁に出入りして,ワラを積み上げた。
一時期はスズメに完全に占拠されるかと思ったが,意を決したのか,ブッポウソウが入り込んで大量のワラを踏みつけて産卵した。産卵のタイミングが遅れたので,卵は2つだけ。ひょっとしたらもうひとつ追加されるかもしれない。
こういうケース(図4)では,ワラの中にすでに胚発生が止まったスズメの卵(正確には胚,embryo)があることが多い。来年4月に巣箱の掃除をしたときに,おそらくワラの中からスズメの卵がいくつか出てくるだろう。ブッポウソウの卵も2つ3つ出てくるかもしれない。スズメとブッポウソウの産卵合戦があったことを物語る。
巣箱を新しく設置すると最初の1~2年は,スズメが勝つことが多いが,3年目以降になるとブッポウソウが完全に上回るケースが多くなる。