【ブッポウソウ総合情報センター】速報(No.9)

<ブッポウソウのヒナのふ化始まる>

多くの巣箱では,親が巣箱の中にいて卵(正確には胚)を温めていた(図1)。卵の温めは,最初はメス親がやっている時間が長いが,次第にオスも参加するようになる。(ただし,オスがどの程度卵の温めに参加するかは巣箱によって異なり,全く協力的でないオスもいる。

その場合には,メスがずっと温めている。しばらくしてお腹がすくと外に出て昆虫を捕まえて食べる。その間にオスが入ってくれなければ,また自分が入って温める。逆に,協力的なオスは,メスが巣箱に入っている間も,巣箱のすぐ近くの電線で見張りをしている。

図1. 卵を温めているブッポウソウの親(メスのような気がする)。
入り口からカメラを入れるとびっくりして上を向く。
体をそらしたときに温め中の卵が見える。温め中の卵はたぶん4つであろう。
(ひとつは体の下に隠れている。)

どの巣箱もほとんど親がいるのは,どこもふ化が近いということなのであろう。ふ化が始まるのは,早いところで6月13日と予想したが,ちょうどその通りになった。

上有漢にあるL-12の巣箱では,5つの卵が生まれ,全部ふ化した(図2)。しばらくはメス親が巣箱にとどまり,ヒナにエサを与えるだろう。この時期のヒナは人工保育が困難である。親がヒナを温めているだけでなく,オスが運んできたエサ(オスがやらなければメスが捕りに行く)をくちばしで何度も嚙んでは,茶色い胃液に混ぜてヒナに与えている。

図2.ふ化したばかりのブッポウソウのヒナ。6月13日のふ化と思われる。
まだ目は薄い皮膚で覆われている。ものは見えないが,明暗は感じ取ることができると思われる。

生まれたばかりのヒナは,体温の維持機能が発達しておらず,また消化酵素(ヒトで言えば,胃液)の分泌が少ないのであろう。慎重に扱っても皮膚が黄色になってしまい,死亡する。皮膚が黄色くなるのは,黄疸の症状と思われる。巣箱の中で4~5日たてば,巣箱に入れたまま(高温が続くことが条件)毎日何回かエサ(ゆでた卵の黄身とビタミン剤)をやれば,育つ可能性が高くなる。

ヒナの成長は,餌が十分もらえるかによって大きく異なるが,巣立ちは7月7日か8日と予想される。

カメラを入れたらブッポウソウの親がカメラの横から外に出た巣箱

ブッポウソウの親は丸形の小さなカメラを入れると,驚くけれども巣箱の底にとどまっている。しかし,L-07の巣箱は,カメラの横からごそごそと這い出して逃げて行った。巣箱の中には卵が4つあった(図3)。

図3.スズメの巣の上で卵を温めていたブッポウソウ。この巣箱は
産卵が遅かったので,ふ化するのは6月の終わりごろになりそうである。

卵の下には大量のワラ(スズメの巣)が詰まっていて,20 cmほどの高さになっていたのだろう。つまり,親は巣箱の入り口から外を見渡せる状態になっていたものと思われる。ちょうどそこにカメラが入ってきたものだから,身を置く場所がなくなってカメラを押しのけて外に出て行ったものと思われる。(しばらくすると巣に戻って卵温めを再開する。)

この付近は巣箱占領合戦が激しく行われている。仲間内で争っている間に,スズメが入り込んでワラをぎっしり詰めて産卵まで行ったのだろう。ワラの中には,スズメの産んだ卵が残っていると思われる。(すごい例は,ブッポウソウの卵の下からスズメのヒナの鳴き声が聞こえるときがある。何か,断末魔の声というか・・・,かわいそうな鳴き声が聞こえるときがある。)

4~5年前にヘビ(アオダイショウ)が侵入した巣箱

上有漢(正確な地名はよく知らない)では,岡山自動車道の拡張工事をしているところがあり,毎日たくさんのダンプカーが残土処理のために,残土置き場と工事現場を往復している。その道のどん詰まりは,細い道になっていて,そこもやはり小川の土手の改良工事が行われ,毎日発電機の音が結構大きく響いてくる。

その工事現場の脇にL-15の巣箱がある(図4)。巣箱の上には大きなケヤキがあって,上からは巣箱は見えなさそうに思えるが,さすがにブッポウソウの目は鋭い。設置したその年(2015年)からこの巣箱は使われている。

この巣箱がかかっている電柱は,コンクリート製であり,表面はざらざらしている。しかも,地面からツタが上の方まで延びている。(さらにすごいのは,電話線がちゃんと電柱に取り付けられておらず,電線がぶらぶら状態)どこから登ったのか4~5年前にアオダイショウが巣箱に侵入してヒナを全部飲み込んでしまう事件があった。

その時は,小型カメラを入れたら,図5のように中は真っ暗でよく見えなかったが,何か親以外のものが入っているような感じを受けた。ちょうどその頃は,親に足環付けをしていたので電柱に上って巣箱を開けてみた。

何とそこには大きなアオダイショウが,親鳥といっしょにいて,ものすごく異様な状況だった。親鳥は開けたふたのところからすぐ逃げた。アオダイショウをよく見ると腹部がぽこん,ぽこんと膨れていて,ヒナを飲み込んだことがすぐにわかった。すぐにアオダイショウを手で取り出そうとしたら,かまれてしまった。電柱に上っていると,とっさに避けることが難しいが,マムシやヤマカガシと違って,アオダイショウは毒を持っていないことが立証された。

図4.私のお気に入りの巣箱(L-15)。巣箱の横を通る電線は,実際には電柱に取り付けられていない。左側に見える棒は,小型カメラを取り付けた継竿(つぎざお)の一部。巣箱自体もこのカメラで写すために(ナンバーの確認),竿の根元部分が写ってしまう。

巷には,ヘビが入ったから次の年にはブッポウソウは来ないと言っている方々がいる。確かに一度ヘビが入ると,その後何年かにわたって同じヘビが入ることが多いかもしれない。だからと言ってブッポウソウが来ないという訳ではない。この辺りはブッポウソウの飛来数が多い。同じペアは(学習の結果)この巣箱には来ないかもしれないが,新しいペアはそんなことは知らないから,いい巣箱があればそこに入るだろう。

この電柱では,下草を刈り,ツタも除去した。道路も多少改良されたので,その後ヘビは登らなくなった。

とにかく,巷でまことしやかに言われていることは,正しいこともあるがウソも多い。すぐに信じる前によく考えてみることが大事である。

図5.この巣箱はもともと大きなケヤキの下にあるので,日中でも中は薄暗い。6月14日(2021)撮影。よーく見ると,ブッポウソウの親が卵を温めているのがわかるだろう。この巣箱(L-15)では,あと4~5日もすればヒナがふ化するだろう。画像は明るさの調節は行っていない。

なお,この巣箱(L-15)のすぐ近くにコナラやアベマキの切った薪を置いてあるところがある。薪には,キイロトラカミキリ,エグリトラカミキリが多かった。

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